宝物ができました
お姉様と一緒にお泊まり会をした翌日、お姉様と一緒に身仕度を整え、朝食をとりました。お姉様はお勉強をお休みしてくれ、午前中から遊んでくださいました。
「お姉さま、あのご本をよんでくださいませ」
「昨日恐くなってしまったのに?…今日は別の本にしましょう?」
「だいしょうぶです。絵はみません。」
お姉様が心配そうに、わたしを見つめます。
「お兄さまといっしょに、ぼうけんをするところがすきなのです。」
お姉様は、渋々ではありましたが、絵本を持ってきてくださいました。お姉様が読み聞かせてくださいます。
他にも絵本を読んでもらったり、お人形で遊んだり、まる一日お姉様と一緒に過ごしました。
また夜がやってきました。
部屋に一人でいると、自分の部屋がとても広くて静かに感じます。今日もお姉様に一緒に寝てほしいとは言えず、一人で布団を被ってうずくまっておりました。
コンコンコンと部屋をノックする音で布団から顔を出すと、お姉様が部屋に入っていらっしゃいます。
「ライラ、わたくし自分のベッドに水をこぼして濡らしてしまったの。今日も一緒に寝てもいいかしら?」
お姉様は優しいのです。
本当にうっかり濡らしてしまったのか、わたしのもとに来てくださるための口実かはわかりません。
優しいお姉様が大好きです。
わたしはベッドから這い出てお姉様に抱きつきました。お姉様の手を引いて、一緒にベッドに横になります。お姉様のおかげで、その日もぐっすり眠れました。
次の日から、お姉様はお勉強の合間をみてずっと何かを描いていらっしゃいました。
「ライラ、手伝ってちょうだい」
描き終わったらしいお姉様から、紙に描いた絵とクレヨンを渡されました。そこには、女の子とウサギやクマのぬいぐるみ、妖精のような羽の生えた小さい子などが描いてあります。お姉様と一緒に、数日かけて丁寧に色を塗っていきました。そして、出来上がった絵はセバスの手に渡り、さらに数日後に紐で綴じられてわたしたちのもとに戻ってきました。
「これで、恐がらずに一緒にライラの好きなお話が読めるでしょう?」
お姉様がはにかみながらわたしに渡してくださったのは、新しい絵本でした。お姉様とセバスとわたしで作った絵本です。お姉様が絵を描いてくださり、わたしと一緒に色を塗り、セバスが字を書いて綴じてくれました。
わたしが、あの絵本のお話が好きなのに絵が不気味で恐がるので、恐くない本を作ってくださいました。魔女は妖精に、お化けはぬいぐるみに登場人物が変わっています。そして、主人公の兄弟は姉妹になっていました。
嬉しかったわたしは、お姉様に繰り返し繰り返し読んでもらい、夜は枕元に置いて寝ました。
時々抱きしめて寝るほど大切な宝物になりましたが、ある日、本の端っこが折れていることに気づいたわたしは、セバスに預けることにしました。セバスに預ければ安心です。
お姉様はいつも優しいのです。わたしのために絵本まで作ってしまうお姉様が大好きです。
図書室で見つけた絵本を持って、お姉様のお部屋を訪ねました。
「お姉様…恐いので、今日はわたくしと一緒に寝てくださいませ」
絵本を差し出しながら、上目遣いでお姉様にお願いいたします。お姉様は少し驚いた顔をなさってから、絵本を受け取ってくださいました。懐かしそうにページをめくっていきます。
「仕方のない子ね」
そうおっしゃって、久しぶりに頭をなでてくださいました。二人で微笑み合います。
今日はお姉様とお部屋でお泊まり会ですわ。セバスへ準備をお願いすると、あの絵本を見て何か言いたそうにしております。首を傾げながらしばらくセバスを見つめていると、セバスの言いたいことがわかった気がいたします。きっと、あの手作り絵本のことでしょう。じっと見つめると、頷いて仕事に戻っていきました。
わたくしの宝物になったあの絵本の出番は、今ではありません。今日は不気味な絵本を口実に、お姉様と一緒に寝るのです。
ちゃんと空気を読んだのであろうセバスを、あとで誉めてあげることにいたします。




