絵本を読んでくださいませ
ある昼下がり、屋敷の図書室で本を探しておりましたら、懐かしい絵本を見つけました。
手に取り、ページをめくります。それは、夜に兄弟がベッドを抜け出して家の中で探し物をするお話でした。魔女やお化けが出てくるストーリーで、お話自体はおもしろいのですが、描かれている絵が恐いものでした。どれくらい恐いのか…と問われれば、夜にお花積みに行けなくなる程には恐ろしく、改めて今見てみても不気味なページがございます。
姉妹のお話だった気がいたしますが、わたくしの記憶違いのようです。
幼いわたくしは、この絵本を見た後で本当に恐ろしくてお花積みに行けなくなったことがございました…。
お勉強の終わったお姉様が、わたしの部屋にいらっしゃいました。
「ライラ、何をして遊びますか?」
「お姉さま、おべんきょうはおわったのですか?」
「ええ。先生はお帰りになりましたわ」
わたしが立ち上がってお姉様に近づくと、お姉様がしゃがんで視線を合わせてくださいます。日によって違う内容の家庭教師が来ますから、お姉様のお勉強が終わる時間も日によって違います。その日は、昼下がりに来てくださいました。
「では、ご本をよんでくださいませ」
わたしは、お姉様から本を読んでいただくのが大好きでした。お姉様とくっついて、一つの本をながめることも好きでしたし、お姉様の優しい声も大好きです。ちゃんと抑揚をつけて上手に読んでくださるので、お話はどれもおもしろかったのです。
「どの本がいいの?」
お姉様がいろいろ候補をあげてくださいましたが、わたしは読んだことのない本がいいとねだりました。
「では、わたくしの部屋に本を探しにいきましょうか」
わたしは、お姉様と手をつないでお姉様のお部屋に向かいます。お姉様の部屋の本棚にはたくさんの本がありました。厚い本もたくさんありましたが、本棚の下の方には絵本もいろいろありました。目にとまった本を抜き出し、お姉様に渡します。
「これがいいです」
表紙には、ピンク色の背景を背に、男の子が二人手をつないだ絵が載っていました。
「…これ……?」
お姉様の眉間にわずかに皺が寄ります。
「だめですか?」
珍しくお姉様が少し嫌そうな顔をされていました。
「だめではないけれど…」
ためらうようにお姉様は続けます。
「絵が恐いと思うの…だから、ライラにはまだ早いと思うのだけど…。絵は見ないで、わたくしのお話だけでもよいかしら…?」
「はい。わたし、お姉さまがお話を読んでくださる声も大好きです」
「絵は見ないでね。夜、恐くて眠れなくなると困るから…」
絵は見ないと約束して、お姉様にお話を読み聞かせていただきます。約束はしましたが、やはりお姉様がすぐ近くにいるのに離れているのが寂しくなってきました。お話がおもしろいので、絵を見てみたくなったのと、お姉様にくっつきたくなったので、わたくは絵本を持つお姉様に近づいてしまいました。
そこでわたしが見たのは、お話からは想像できない不気味な絵でした。ピンクの表紙からは想像できない不気味さです。
隣に来たわたしがビクッとしてお姉様のお洋服を握りしめるのを感じて、お姉様もわたしが絵を見てしまったことに気づきました。
「大丈夫?やめる?」
と気遣ってくださいましたが、お話の続きが知りたかったわたしは、最後まで聞かせていただきました。
夕食だと呼ばれてダイニングへ向かう途中も、わたしはお姉様の手を握りしめていました。
夕食を終えて部屋に戻る時も、お姉様の手を握りしめて離しません。部屋につきましたが、お姉様の手を離せません。涙目でお姉様を見上げます。
「ライラと一緒に寝るから準備をお願い」
見かねたお姉様はセバスにそう頼んでくださいました。わたしは、お姉様に抱きつきます。
「お姉さま…」
「恐いのでしょう。一緒に寝てあげるわ」
優しく頭をなでてくださいました。お姉様、優しいです。大好きです。




