アリシアへの謝罪2(クリス視点)
アリシアに、誤解してひどい言葉を投げつけたことを謝罪すると、彼女はあっさり謝罪を受け入れてくれた。噂を鵜呑みにして一方的に傷つけたのだ。あまりに簡単に謝罪を受け入れた彼女に、なぜかと問うと、柔らかく微笑みながら、彼女は告げた。
「だって、殿下は本当に申し訳ないと思ってくださっておいででしょう?わたくしにだって、それはわかります。噂を聞き、それが本当なのか確認してくださったことが嬉しいのです。事実を確認した上で、わたくしに悪意がないこと信じてくださるのでしょう?誤解だったこととそれによる自らの言葉を悔やみ、心から謝罪してくださっていることを受け入れたいと思ったのです」
彼女は何もなかったかのように、穏やかに接してくれた。以前のように、わたしに笑いかけてくれる。
彼女は見た目に反して穏やかな人だった。つり目できつい印象を与える彼女だが、共に過ごせば柔らかい雰囲気を放つことに気づく。特に我儘も言わない彼女と過ごすのは、案外居心地のよいものになっていった。
話をすれば、素直で可愛らしい反応が返ってくる。表情は読み取れないことが多いが、それでも、長く共に過ごせば雰囲気や態度の変化から、しだいに少しずつ反応がわかるようになってきた。
しばらく、アリシアを観察するわたしに監視するような視線を寄越していたライラだったが、しだいにその厳しい視線を感じなくなった。
ライラとも仲直りをしてしばらくした頃、あまりに躓くアリシアが心配になり、ライラにある提案をした。
「アリシアを医者に見せてはどうか。あれほど頻繁に躓くなど、どこか悪いのかもしれない…」
心配だから医者に診せたいとライラに告げた。病気扱いをした、勝手にアリシアを医者に診せたと、ライラの琴線に触れて不況を買い、また何か仕掛けられるのも恐ろしいので、まずライラに確認してみたのだ。
「もう診ていただきましたわ」
ライラからはそう返された。
「我が家の主治医に診ていただきました。他にも伝をたどって数名の名のあるお医者様に診ていただきましたが、どこにも異常はないと言われました」
ライラはあっさりそう言った。神殿でのお祈りや、巷で聞く祈祷やお祓いというものにも連れて行こうかと思っている…と、ライラは続けた。
二人で相談し、アリシアを乗馬に誘うことにした。わたしやライラと一緒に乗馬や散歩をして、アリシアの足腰を鍛えることでお互い同意した。
わたしが誘えばアリシアは断らないとライラは言う。また、ライラはわたしをだしにしてアリシアを誘うという。
予想外にも、アリシアは運動神経がよくあっという間に馬を乗りこなすようになった。ライラいわく「お姉様は完全無欠なのです」とのことで、ライラよりも運動神経がいいらしい…。
はじめて、わたしとライラが手を組んだこの作戦は今でも続いている。
今でもアリシアはよく躓くのだが、あれでも子供の頃に比べればだいぶマシなのだ…。




