春季君のお母さんへ
はぁ〜、また学校休む羽目になるなんて。 学校あんまり好きじゃない俺でも最近休み過ぎだ…… 顔は痛いし体も痛いし腫れて風呂にも入れないし気持ち悪いなぁ、それになんか腫れ以外にも暑さを感じるし息苦しい、それになんかドクドクと激しい鼓動音がする……
そう思って瞼を開けると真っ暗。 え? 真っ暗ってなんだ? それに息が…… ガバッと起き上がる。
「あっ……」
恋の声がしたと思ったら恋が俺の隣で寝ていたのか。 そして俺を胸の中に入れてたんだと気付いた。 息苦しかったのはそのせいか。
「ごめん、苦しかった?」
「暑いし息苦しかったけど恋だったから嬉しいよ」
「来て、春季君」
恋に言われ恋の体に身を委ねる。 恋の柔らかい体が俺を包み俺の顔を触った。
「痛かったよね? こんなに殴られちゃって」
「でもそれより恋が今まで聞いた事ない言葉遣いしてたからビックリしたよ」
「あ、あれは頭に血が上って…… お父さんとやっぱり親子なんだなって思ったよ、毎日あんな文句言われてたから、はは……」
「なあ恋、そろそろ俺の母さんに本当の事言っちゃわないか? そうすればもう隠し事なしだ、勿論恋がここに留まれるようにするからさ」
「…… うん、そうだよね、春季君のお母さんにも言わなきゃね。 そうしよう、春季君!」
そして明日母さんをアパートに呼ぶ事にした。 恋ももうこれ以上隠し事するのは嫌だろうし俺の母さん相手なら尚更だろう。
そして次の日母さんがアパートに来ると俺の顔を見て大層驚いていた。 まぁ当然だな、だけどこれは俺が恋とこれからも暮らしたいという決意の表れみたいなものだ、恋と一緒にいる為ならこれくらいの覚悟があるって。
そして母さんに恋が今まであった事や俺の傷の経緯を説明した。
「そう、恋ちゃんは本当の家でそんな扱いを受けてたの…… そして私に黙って仕送りで春季は恋ちゃんを養っていたってわけね?」
「はい、全て私の嘘のせいで春季君や他の人を巻き込んでしまいました。 特に春季君を…… 私は危ない目に遭わせてしまいました。 私今まで貰ってしまったお金これから頑張って返します! 本当にごめんなさい!」
恋は母さんに深々と頭を下げて謝った。
「母さん、俺も母さんに黙ってこんな事してごめん、だけど俺恋を助けたいって思ったんだ」
「恋ちゃんが好きだから?」
「…… ああ、好きだ」
「子供ね…… それだけじゃやっていけないのよ? その気持ちは立派だけどね。 あ母さんにまで嘘をついて。 話してくれたのは良かったけど、たまたま周りが味方してくれたりしなかったらどうするつもりだったの?」
「そ、それは……」
「ほら、無計画もいいとこ。 春季はいつもそうやって後からなんとかしようとするのが悪い癖よ? 私が知らないうちに問題はなんとかなったように思ってるようだけど……」
「でも母さん、でも悪いと思ってるよ。だからこうしてもう嘘はつけないなって思ったんだ、俺その上で恋と一緒にいたいんだ!」
俺と母さんのやり取りをしばらく聞いていた恋が口を開いた。
「春季君のお母さん、春季君は何も悪くありません。 押し入った私に全ては責任があります。 ですから私家に戻ります」
「何言ってんだ恋!? あそこに戻ったらまたそのうち酷い目に合うかもしれないんだぞ? ダメだろそんなの」
しかし恋は母さんに続ける。
「通信制の学校に入れば私だって働きながら春季君のお母さんから借りたお金だって返せます。嘘ついて春季君に甘えていたのは事実です。 でも私春季君の事大好きです、中途半端な気持ちなんかじゃありません、だから春季君と交際させて下さい!」
「え!? 恋?」
それを聞いて少しの間俺や母さんに沈黙が訪れる。 恋と交際するのは嬉しいけど恋をあの家にまた逆戻りはさせたくない……
「はぁ…… 春季の性格上一人暮らしは難しかったのよね。 でもここまで成り立ってるのは恋ちゃんのお陰よねぇ」
「え?」
「………… いいわ、恋ちゃんが良かったら春季のお世話してもらっていいかしら?」
「お母さん…… はい! 私精一杯春季君のお世話させていただきます!」
「母さん。 ありがとう……」
母さんは恋の手を握って恋に言った。
「恋ちゃん、無理しなくていいからお金の事だって別に今すぐってわけじゃなくていいのよ? 今まで春季の面倒見てくれたんだからそれでおあいこ。 それでいいわ。 だから恋ちゃんもこれからは学業に専念しなさい?」
「…… ありがとうございます」
恋も母さんの手を両手で握り涙を流してそう言った。 よかった…… 俺はようやく恋の肩の荷が下りたような気がした。
母さんはそれからほどなくして帰り俺と恋が部屋に残る。 恋はしばらく座って無言でいたがパッと立ち上がり俺の首に手を回した。
「春季君! 私学校に行って卒業したら春季君のお嫁さんになりたい!」
「え? お、俺は嬉しいけど気が早くないか? もしかして俺よりもっといい人が現れたりしたらどうするんだ?」
そう言うと恋がムスッとした顔になる。
「私にとって春季君よりいい人なんていないもん! それとも春季君は私の事……」
恋が言う前に俺は恋にキスをして唇を塞いだ。
「んんッ!」
「恋、お前の事大好きだ。 そうだな、俺からも言うよ。 学校卒業したら俺と結婚してくれ」
「はい! …… 喜んで!」
まだまだ問題は残ってるけど今日この日恋は俺の家に来て今までで1番と思えるような笑顔を見せた。




