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春季君、どこ行くつもり?


休日になり俺は恋の実家を訪ねる為にさらなる作戦を考えていた。



「春季君! 何してるの?」



「うわッ!」



携帯を弄っていた所に恋に後ろから肩を掴まれ顔を覗き込まれる。 わかっていたのでワザとオーバーにリアクションを取る。 そしてすかさずワザと携帯の画面が見えちゃったみたいなリアクションも取る。



「うん?」




恋が俺の携帯を見た。 そして俺はマズい! という感じで画面を隠す。



そう、考えた末に恋に何かプレゼントをこっそりあげようと考えていたのに作戦で行く事にした。 これなら俺がコソコソ動いても何ら不思議はない。 問題は恋がそこまで察してくれるかどうかだ…… 恋にプレゼントしようとしてるんですよ? そこまで推理して下さい。



そしてワザとらしくないように見えてないよね? 的なアピールをする。 上手くいっただろうか?



「な、なんだよ…… 脅かすなよ恋」


「フフッ、春季君!」



恋が俺に近付いてきて腕に抱きつく。 この反応はもしや成功したか!? 恋には後で本当に画面で見てたプレゼントを渡せば全くの矛盾もなく俺の作戦は成功だ。 そして次に切り出すのは……



「どうしたんだよ? いきなり」


「ううん! なんでもない!」



恋は俺の予想通り解釈したのか物凄く嬉しそうだ。騙しているので少し複雑だけどプレゼントは本当にするから全てが嘘なわけじゃない。 金はかかるけど恋を傷付けないでバレずに済むには最早これしかない。



「なあ恋、俺ちょっと出掛けるからさ留守番しててくれないか?」


「私も一緒に行く!」


「うーん、なんとなく1人で出掛けたいんだ」



頼むぞ恋、空気を読んでくれ。 俺は今から恋にプレゼントを買いに行くんだ。 だから一緒に来られるとサプライズにならないんだ、半分本当だから俺の演技もわかりにくいはずだ……



「…… そこまで言うなら。 うん、わかった!」



この恋の反応は察してくれた! 普段なら絶対俺を1人で行かせてくれないくらい俺から離れようとしない恋だけど今回は俺の作戦が通じた! よし!



てか考えるとそこまで俺って恋と一緒に行動してるんだよなぁと思った。 彩奈からも恋ちゃん間違ったら春季のストーカーになってたよねとおふざけで言っていたけどここまで一時的でも離れるのが大変だとそうかもしれないがまぁ別に俺はそんな恋でも可愛いと思える時点で俺も俺だな……



そして隣町まで電車に揺られ恋の家らしき場所へ着いた。 まぁ思っていたよりは普通の家だな…… ていうか在宅しているのか? 出掛けてたら来た意味ないよなぁと思いながらインターホンを押してみる。



2、3回押す、なかなか出てこない…… もう一回押してみる。 居ないのかなと思ったら怒声が響いた。



「うるせぇぞッ! 何度も何度も鳴らしやがって!」



玄関が勢いよく開き酒臭い中年の男が出てきた。 うわッ、マジで酒臭い…… これが恋の父親?



「あのすみません、渚さんのお父さんでしょうか?」


「ああん!? あのクソガキがどうかしたか? どこにいやがる! 戻ってきたらただじゃおかねぇ! てめぇ渚の男か? あの野郎、てめぇの家にいんのか!?」


「いえ、居ません。 ただ渚さんと同じ中学で仲が良かったので久しぶりに顔でも見たいなって思って……」


「ハハハハッ、あのガキ母親に似て油断出来ねぇな、しっかり男騙くらかして手玉に取ってるんじゃねぇか! 生憎だが渚はこの家にはいねぇ! 出て行きやがった」


「出て行った? あの探したりとかはしないんでしょうか?」


「ああ!? 探す? バカ言ってんじゃねぇ! あんなクソガキにそんな無駄金出せるかよ! 体売って稼ぐしか脳がなさそうなクソガキによ!」



なんて奴だ…… これじゃ恋が怖くて逃げ出すのも当然だ。 こんな奴が恋の父親だなんて。 だけど今ここで何か出来るわけじゃない。 許せないけど今日は下見に来ただけだ。



「渚さんは……」


「あ?」


「渚さんは言ってましたよ? お父さんに褒めてもらいたくて認めてもらいたくて勉強や家事を必死で頑張ったって。全部貴方の為に渚さんは頑張っていたんですよ?」


「あんなクソガキが頑張っても金も持ってこねぇ、逆に金が掛かるんだよ! あのバカが考えそうなバカなやり方だな!てめぇの所にも渚がフラッと現れたら見た目で騙されねぇように気をつけるんだな」



恋の父さんはそう言いてめぇもとっとと消えろと俺に言い放ち玄関を粗く閉めた。



こんな父親をなんとか出来るのか? いや、無理だ。 少なくともこの家に恋を帰すわけにはいかないぞ? 帰ったら恋がどうなるかわかったもんじゃない……



俺は恋の父親が救いようのないほど最低な人間に見え意気消沈しながら帰りに恋にプレゼントしようとしていたネックレスを買った。 恋は俺が思ってたよりずっと辛い思いをしていたんだな、だからあんなに最初は絶望しきって優しさに飢えたような目をして俺に頼って縋って……



そしてそんな恋が俺の事を今では信頼して好きと言ってくれている。 俺の事を離し離れたくないのもそういう環境で育った反動なんだ。 どうするのが恋にとって1番いいんだ? 恋は頭がいいから学校だって行った方が絶対にいい。普通の高校が無理でも定時制や通信教育だってある。



だけどあの親は絶対に恋の事に金を使うなんて真っ平御免といった感じだ。 考えがまとまらないまま俺は家に着いた、とりあえず恋の父親の事はわかった。今は恋にバレないようしないとな。



「ただいま」


「おかえり! 春季君」



恋がトタトタと駆け寄り俺を確認して安心したように微笑む。 寂しかったのかな? まぁプレゼントも買ったし…… それにしてもこんな恋をクソガキ呼ばわりなんてな。 思い出すだけでも怒りが湧いてくる。



「春季君?」


「ううん、なんでもないよ。 それよりお腹すいたな」


「ご飯作るから待っててね! 今日は休みなのに春季君出掛けるから寂しかったよ」



やっぱり恋にはその時がくるまで思い切り甘えてもらおう。 そうさせてやりたい。


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