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春季君と彩奈ちゃんと


「え? ゲーセン? 別にいいけど。あ、でもなぁ」


「大丈夫、私も行ってみたい! 行った事ないんだぁ、楽しみ」


「嘘!? マジで? 」


「デパートにあるゲームセンターの専門店みたいなんでしょ?」



マジか、学校帰りに彩奈がゲーセンに俺と恋を誘ったのだが恋は行った事ないのか。 本当にあんまりどこにも連れて行かれなかったんだな。



「まぁそうとも言うけどさ、じゃあ初めて行くって事で記念になるじゃん? あ、あたしが邪魔とかそういう酷い事は思わないように!」


「そんな事思うかよ。 じゃあ行くか」


「うん、楽しそう!」



学校を出て電車に乗っていちいち街に行くのって毎回面倒だなって思ってたけど3人だと楽しいかな。…… なぁんて都合よく思えるはずもなく彩奈と恋は2人で喋りに夢中だ。 女子の話題って入り辛いんだよな、こんな事なら涼も道連れにしていればよかったななんて思っていると恋にグイッと袖を引っ張られた。



「春季君そっぽ向いてばかり。一緒にお話しよう?」


「ふ、そう言われちゃ仕方ないか……」


「何が仕方ないよ? あたしらが春季についていけない会話でもしてると思って勝手に距離空けてたくせに」



あ、俺の浅はかな思いなんて見え見えだったか。 そしてそんな事をしているうちに街に着きちょっとしたゲーセンに入った。



「ふぅん、久々に来たけど別に特段変わった感じもしないなここ」


「そういえば春季君ってインドアの割にはゲームしてるとこ見た事ない」


「ああ、物置に閉まったら出すのが面倒になったからやらなくなった」



まぁ恋の事で忙しかったし捜索願いとか出されてたらヤベェとか思ってたしコイツが何かしでかさないかとソワソワしていたからゲームなんてやる余裕がなかっただけだけどな。



「ねえねえ、私あれやってみたい! 春季君いい?」


「金渡してるだろ? それいくらでも使っていいからやりなよ?」


「ご、ごめんなさい…… 全部ないの」



な、何!? 全部ない? 恋ってそんな浪費家なタイプでもなさそうなのに俺が学校とか行ってる間に使ったって事か? それとも俺の渡した額が安すぎたか? 女は確かに男より金がかかりそうだけど……



「あははは…… ごめん。やっぱりやめとくね」


「あ、いや。 足りなかったんだったらやるよ、ないなら不便だろ?ほら」


「…… ごめん」



少し驚いたけどまぁいいか。 ないと不便はあるし。 逆に今言ってもらって良かったかもな。恋ならこんな時じゃないと遠慮して言えないかもしれないし。



「別に気にすんなよ? ほら、あのクレーンゲームやりたいんだろ?」


「春季優しいねぇ。 逃がした魚は大きかったかなぁやっぱ」


「俺なんて大した事ないだろ、まだ高校生だし」


「謙虚だねぇ、あ! 恋ちゃんあたしもやったげるよそれ!」



ふぅ、恋も彩奈もあれから大分仲良いし俺も安心だよ。 少しここはこのゲーセンぐるっと回ってみるか。



あー、ここはコインゲームか。小学生の頃はよくやったけど今はなぁ…… シューティングか。ランボー…… そのうちやってみたいな。 ここは格ゲー、俺も持ってるなこのソフト。 誰かやってるな、ちょうど良いや、腕が鈍ってないか確かめてみるかと思い金を入れ乱入した。



勝っちゃったらごめんよ、向かいの席の誰か。 なんて思ってプレイすると……



あれ? 負けた。 今のハメ技だろ? 次は大丈夫。 あれ? また負け? くそ! もう一度! いや、ダメだ…… これ以上は無駄金だな。



席を立とうとしたら肩をトントンと叩かれた。 クルッと振り返ると人差し指が頬に当たる。 恋だった。



「春季君どこ行ったかと思ったらこんな所に居た、何やってるの?」


「なんだ恋か、ビックリした。ああ、これ格ゲー」


「格ゲー? 楽しいのそれ? 」


「へ? お前こんなのに興味あるの?」


「え? ううん、春季君がやってるから気になっただけ。 でもやってみようかなぁ!」



そう言う恋に席を譲りやらせると…… 案の定何も出来ないであっという間に負けてしまった。



「な、何これぇ〜!? 私何もしてないのに!」


「はは…… やっぱりな、ここはいいから他のとこでも行くか? 」


「うん、そうする。 貴重なお金がぁ……」



そして恋にどこ行きたいか聞いたら先程のクレーンゲームのぬいぐるみが取りたいと言った。 これまた金が掛かりそうだけど恋も女の子だ、そういうのが欲しいんだろ。 俺の家には恋が好きそうな女の子っぽいものないもんな。



「このウサギさんが取れなくて……」



デカッ…… こりゃ難しそうなのにトライしてるなぁ。 彩奈も巻き込んで。



「あ、春季、恋ちゃんがこれ欲しいって言ってるけどアーム弱過ぎて難しいよ?ちょっとずつズラしてたんだけどあたしもう金欠だわ」


「しゃあない! 俺が代わってやろう」



母さん済まん、恋の為に使わせてもらう。 俺は気合を入れ彩奈がズラしたのをそのまま引き継いだ。 ズラし続ける事1000円近く挫けそうだ…… この消えた金で何食える? とか考え出した頃。



「あ、落ちた。 春季やったじゃん!」


「春季君凄い!」


「あ、ああ。ほら恋」


「嬉しい…… 大事にするね春季君!」



恋にデカいウサギを渡すとギュッと抱きしめて嬉しそうにしていた。 まぁ取った甲斐はあったかな…… 店員に袋を貰いウサギを入れその後彩奈と別れ電車に揺られていると恋が俺の足元を見ていた。



「どうした?」


「ううん! なんでもないの。 春季君、今日いっぱいお金使わせてごめんなさい……」


「いいよ、恋が欲しいって言うもんだったら俺の出来る範囲で買ってやるから遠慮すんな」


「わ、私も春季君にそういう事してあげたいな……」



無理しなくていいよと言って俺は袋越しにウサギを抱きしめている恋を見て俺に甘えてていいけどなと思った。 恋がその気になったら恋の父さんやら何やらでまた悲しい思いをするだろう、だからそれまでは……



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