演技じゃないよ?
はぁ、母さんもとりあえず一時は凌いだしこれで2ヶ月くらいは来ないよな? 来ないでくれよ? なんせ恋がいるだけで世話は掛かるけど生活が出来てしまうから。
恋が来てから最近は本当に休まる暇がないな。でも無色だったそれまでの生活に色が出てきたのかな? なんてな……
「春季君? どうしたのボーッとして。私の事でも考えてた?」
「ああ」
「ふぁッ!?」
「自分で聞いといて何驚いてんだよ?」
ふと思う。 恋の事が解決して俺のもとから去れば俺って元の生活に戻るわけだ。平穏だけど退屈で…… でも今は俺の事を好きだと言ってくれる彩奈もいる。でも彩奈だって恋の事がなければどうなっていたかわかんないしな。
「なぁ恋、もし俺と同じく恋に接してくれる人の所でお世話になるんだったら俺じゃなくてもいいか?」
「え? 春季君どうしてそんな事聞くの?」
「例えだよ、例え」
そう言うと恋はそれはないよと即答した。
「それは何故?」
「ううッ…… 春季君どうしてそんなに恥ずかしい事平気で聞いてくるのよ?」
「え? 俺が恥ずかしい事言ってる?」
「答える私が恥ずかしいの!うーん、だ、だって春季君は唯一私が心から信頼できる…… から。だから例えその次の人がそうだったとしても私は1番最初の春季君じゃなきゃ嫌だって言うかなんていうか…… とりあえず春季君がいいの、安心するの! はい、これで満足? 変な事聞かないでよもう……」
恋はそう言って恥ずかしそうに台所の方へ向かって行った。 つまりこれからもよろしくお願いしますって事か。
てことはまだこの厄介だけど面倒見たくなる恋との生活は続くってことか。面倒が嫌いな俺が恋の面倒を見るなんてな……
「春季君朝ご飯出来たよ、春季君が変な事言うからパン少し焦がしちゃった」
「別に恋の料理は美味しいから気にしないよ」
恋の作ったご飯を食べていると視線を感じ恋を見ると恋はご飯を食べずホケ〜ッとした顔で俺を見ていた。
「どうかしたか?恋、顔真っ赤だぞ?」
「んあッ!? 嘘? なんでもない! なんでもないったらなんでもない!」
恋は慌てて朝食を食べ始めた。 なんだコイツのこの反応は? 俺も気を取り直して朝食を食べる。 そして恋が鞄をいつも通りに俺に渡して学校へと行く。
「春季君! フフッ」
今日の恋はいつも以上に俺に寄り添い体を擦り付けてくる。 だからやめろよ…… 朝っぱらからこんな所で。 好きだって演技もやり過ぎると俺が我慢出来なくなるじゃねぇか……
「おい恋、やり過ぎじゃないのか? まだ誰も見てないしやる意味ないだろ?」
「見てない時が肝心だって言ったでしょ? 春季君大好きよ」
「いや、もし俺が我慢出来なくなってお前を押し倒したりでもしたらとか考えないのか?」
「へ? そうなの? 春季君私の事そういう感じて見ているの? そうだなぁ、それいいかも!」
ダメだコイツ、相変わらず警戒心って物が備わってないようだな…… 恋の精神攻撃にひたすら耐え学校へ近付いて行くといつも通りに彩奈も待っていた。
「おはよう春季! って恋ちゃんくっつき過ぎじゃない? 春季が嫌がってるんだから離れなさい!」
「嫌がってないもん! ねえ春季君?」
俺に振るなよそこは…… そうだな、どちらかと言えば今すぐこの2人からダッシュで逃げて心を落ち着かせたいのが本音かな。
「あたしも恋ちゃんに負けないんだからね! 」
彩奈が反対側に来て恋と同じ事をしてくる。 俺高校生なんだぞ? 高校生の健全な男にそんな事したらどうなるかわかんないのか? あ…… 彩奈はわかっててやっているな。
学校へ着くと恋がまた迎えに来るねと言って帰っていった。 その様子を俺以外の数人の男子が恋の事をニヤニヤしながら見ている。 なんだ?
「今日帰りどこか寄って行かない?」
「うーん、恋も迎えに来るからなぁ」
「恋ちゃんと一緒でも別にいいよ? 慣れたしもう」
「そっか、なら行くか。 あいつも喜ぶかもしんないし」
そう言った俺を彩奈はジトッとした目で見ていた。 あ、恋が喜ぶかもは余計だったかもしれないな……
そして放課後彩奈とどこ行く? と話しながら校門を出ると恋の声がした。
「嫌です! 私行かない!」
「いいじゃん? いつも待たせて酷い男だよな、あいつも。 危ないとか考えないのかねぇ? 」
「私が自分から待ってるんです! 春季君は何も悪くない! 私の前で春季君をバカにしないで下さい!」
「いいから行こうぜ? どうせそんな奴居なくたって俺達が家に送ってあげるからさ」
恋は朝見た生徒数人に絡まれていた。 恋みたいな子がずっと1人で待っていたらいつかはそんな事になると思ったけど…… 仕方ない!
「彩奈、ちょっと行ってくる」
「あ、あたしも行くよッ!」
「いいから待ってろ!」
生徒が無理矢理恋と遊ぼうと恋の腕を掴もうとしたので俺はその腕を止め掴み上げた。
「恋ごめんな、待ったか?」
「は、春季君」
恋は俺の姿を見ると急いで俺の横に来た。怖かったのか少し恋は震えていた。
「恋が待ってたのは俺なんだ。 お前ら恋に何してんの?」
「てめぇ1年だろ! 先輩にそんな口の聞き方していいのか?」
「すいません先輩、ただ恋の嫌がる事はやめてもらえます? 今のだって恋は怖がってました、あんまりやり過ぎると俺も怒りますよ?」
グイッと先輩に詰め寄り最大限威嚇してみた。 もともと俺は少し背は高い方だしこの先輩達は俺より若干チビだ。 痛いのは嫌だからなんとかなれよ……
「俺もそいつに手を出すなら許しませんよ先輩」
後ろから声が聞こえると涼だった。 涼が加わった瞬間先輩達は文句を言いながら退散して行った、涼はめちゃくちゃモテるから先輩の女子達にも人気あるから涼と何かあったら面倒なんだろう、よかった、ぶっちゃけ涼のお陰だ。
「涼助かったよ、ありがとう」
「だろ? 俺って友達思いだからな」
「涼かっこよかったよ! 流石だね!」
いつの間にか莉華が涼に駆け寄っていた。
「でも涼、危ない事しちゃダメなんだからねぇ」
「お前だって春季達なんとかしてあげてって言ってたくせに」
なんだ、結局2人のお陰だったのか。 でも何事もなく済んでよかった。 恋もホッとしてるし。
「大丈夫だった? 恋ちゃん!」
彩奈も心配で恋に駆け寄ってきた。 今日はもうこんな事あったし帰った方がいいかもな。
「彩奈ごめんな、今日は帰るよ。 誘ってくれてありがとな、また今度行こう?」
「え? あ、うん。 そうだね、今日は恋ちゃん任せるわ」
そうして涼や莉華、彩奈と別れ恋と一緒に家に向かう。
「春季君ごめんね、またやらかしちゃって……」
「今更だろ。 それにあんなのに絡まれるんだったら危ないから無理して迎えに来なくていいぞ?」
「無理してないもん! 私が春季君を迎えに行きたいから行ってるだけだもん、それに次からもっと目立たない所にいるようにするから…… 気を付けるから」
んー、コイツの気を付けるはなんか頼りないんだよなぁ…… でもまぁ恋も何事もなく済んで本当に良かった。
「春季君、でもさっきは本当にかっこよかったよ。 春季君って本当に私の救世主だね! だ、大好きです……」
「今日はもう演技する必要ないだろ?」
「う、うん。 そうだったね、えへへ」




