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演技?


「ヤバい、母さんが掃除を……」



母あさんの後ろ姿を見てコソッと恋に告げると隣で恋は両手で頭をポカスカ叩いていた。 何やってんだ?コイツ……



「恋!!」


「え? うん、ああ!」


「おばさん、とりあえずお掃除する前にお飲物でもどうでしょうか?」


「あら恋ちゃん気を使わなくていいのよ? 堅苦しいから普通にしてていいのよ」



ダメだ…… 母さん止まりそうにない。 俺の物は問題ないけど恋の服や下着やら化粧品とかは見られたらマズい。急いで母さんの跡を追う。



「母さん、恋もいるのにいきなり掃除とかってありえないって!」


「あら? 春季が普段からもっとちゃんとしておけばこんな事しないのよ? 見なさい! 台所だって乱雑に物を置きっぱなし、さっきの居間だって汚かったし! 女の子を呼ぶような部屋じゃありません。お母さん恥ずかしくてたまらないわ」



な、なんてこった…… 確かに、確かに俺らしい部屋にはなったはずだ。そこは母さんも疑っていない。なのに結果的にそれが裏目に出てしまって掃除をしていく事になってしまうとは……



そ、そうだ! 恋の私物をぶち込んだタンスの中を見られなきゃ問題ない……

そういや恋の奴は? 母さんから一旦離れ恋の所へ行くと台所に居た。



「あ〜、もう私のバカバカバカ!」


「何独り言言ってんだ? それに何飯を作ろうとしてんだ?」


「春季君!? な、なんでもない! えっと…… これは私なりに春季君のお母さんの気を引こうと思って。もうお昼になるし。 私が出しゃばっても怪しまれるだけだと思うし……」



ううむ。 確かにそうかもしれない、むしろ変にあたふたしても母さんに勘づかれるかもしれないから自然体で接した方が怪しまれないかもしれん。



母さんの様子をチラッと見ると普通に掃除をしている。 ここは俺が手伝ってマズいものを見られないようにって…… 恋の私物タンスを開けようとしている! なんとかしないと!



「母さん! そこいら辺はもうその辺でいいって! 」


「何言ってんの? まだまだこれからじゃない?」



そして無情にも母さんはタンスを開けた。 なんで開けるんだよ!?



「あら? 女物の服に…… 下着? タンスに化粧品も!? 春季…… これはどういうことかしら?」


「そ、それは恋の私物で…… ほら、恋って可愛いだろ? あいつすごくモテるから常に側に置いておきたくて…… ああ、ほら! 独占欲の表れというかなんというか」


「…… あんたよく嫌われないわねそれで。 恋ちゃんもこんな所に下着やらなんやら置いたら春季が変な考え起こしちゃうでしょうに」


「ほ、ほら! これ以上見るのは恋にも失礼だからここはいいから! 母さんは恋と一緒にお昼でも作ってろよ! 掃除は俺がちゃんとやるから!」


「あら? 恋ちゃんお料理得意なの?」



おお! 料理に食いついたか! 恋の料理は美味しいから普通に気を引けるはずだ。 ここは母さんに恋の料理を手伝ってもらえれば……



「恋の手料理普通に美味しんだぜ? あいつの料理毎日食べてる俺が言うんだから間違いない」


「毎日? それどういう事?」


「ああ、違った! 毎日のようにだった、 あいつに毎回弁当作ってもらってるからさ。 届けに来るんだよ。 俺がいつも不健康な食事ばかりしているからってさ」


「まったくあんたは…… 恋ちゃんに一体どこまでさせてるのよ? お母さんますます恥ずかしいわ」



危ねぇ…… 焦るとどんどん嘘が雑になってくる。 早く帰ってくれよ母さん。



「今時彼女が弁当作ってくるなんて普通だって! 俺と恋はそれくらい仲が良いんだぜ? ほら、あっち行った行った!」



母さんは渋々と恋が料理をしている台所へ向かった。 ふぅ。これでここはなんとかなった。 俺は母さんがもう来ないように念入りに掃除をした。 こんなんならわざと散らかさない方が良かったかもしれない……



大体散らかした物も綺麗にして居間に向かうと母さんと恋は楽しそうに料理を作っていた。 よかった…… あの様子だと余計な事は聞いてなさそうだ。



「恋ちゃんってお料理手慣れてるのねぇ。 良いお嫁さんになりそうだわ。 でも春季のお部屋に下着とか置いてると危ないわよ? あの子何するかわからないから」


「そ、そんな…… 良いお嫁さんだなんて。 え、えっと下着はそうですね。 気をつけます。 でも春季君はとても信用できるので変な事とかはしてきませんし……」



仮にも彼女としての恋に俺の事を下げる評価をするのはやめてくれないか? それに変な事は実際してないしな。 恋の誘惑にだって打ち勝ってんだぞこの野郎……



昼食が出来上がり3人で食べた。 母さんは恋の料理上手さに感心してえらくご機嫌だった。 恋の事については悪い印象はないようでよかった。



「お母さん今日はこれで帰るけどまた来るからね? 恋ちゃんも今日はありがとうね」


「来る時は前もって連絡寄越せよ? いきなり過ぎるんだよ」


「それじゃ抜き打ちにならないじゃない? 春季、くれぐれも恋ちゃんが可愛いからってまだあんたは高校1年生なんだから間違いだけは起こさないように! 恋ちゃんを泣かしちゃダメよ? じゃあね、恋ちゃん。 今度来たらいろいろ詳しい事聞かせてね?」


「は、はい!」



いろいろと聞かれるのはマズイな…… 今日はなんとか誤魔化せたけど次来た時に恋の詳しい事なんて聞かれたら質問によっては答えようがない事もあるかもしれない。



そして母さんは帰っていった。 俺は気疲れしてしまってベッドに寝転んだ。 恋も同じようで俺の隣でふぅとため息をついた。



「冷や冷やしたけど春季君のお母さんってとても良い人だね? 羨ましい」


「羨ましい? 」


「うん…… 羨ましい」



恋は少し悲しそうに下を向いてそう言った。 俺がどうした? と言おうと思ったら恋は寝転んでいる俺を抱きしめてきた。



「は!? 恋?」



恋は御構い無しでそして恋の顔が俺のすぐ目の前に来た。 やっぱりどこか悲しそうで何か言いたいような顔をしているが……



「ドキッとした? お母さんが来た時にボロが出ないようにって思って…… 」



恋は尚も顔を近付け俺の頬に柔らかい感触が伝わる。 恋が俺の頬にキスをしたのだ。



「お、お前……」


「彼女でしょ?」


「フリだよ、フリ」



恋は俺から離れにへへと笑い照れないのと俺をからかった。




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