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言いにくいけど……


せかせかと動いて俺の身の回りの事をして俺に貢献しようとしてくれている。 まぁもともと動きたくない俺にとっては楽と言えば楽なんだけど……



俺の迎えに来て恋が晩ご飯を早めに作りさぁ、出来たと言って食べよう? と急かしてくる。 何だこの異常な早さは!?



「恋? なんかお前早回しで動いてるみたいだけどどうした?」



俺の質問に恋はビクッとして急に止まる。そしてふぅと息を吐いて俺に向かいあった。 何? なんなの?



「じ、実は言いにくかったんだけど…… 」


「あ、ああ?」



つ、遂に来たか? 実は記憶喪失なんてのは冗談で本当は俺をダシにしてあれこれ金を巻き上げる気だったんだ、ごめんね? とか……



それとも外を出歩いていた時、探偵か何かに俺に匿われているとかで親御さんが俺の事を恨んでいてどうしようもなくなったとか!?



いや、ていうかなんでそっち方向にしか考えられないんだ!? コイツの事だ、どうせ取るに足らない事に決まってる!



「じ、実は私ね、 莉華ちゃんにお洋服借りたのは良いんだけど…… 下着がないの! 同じの履きっぱ付けっぱなのは流石に気持ち悪くて」


「…… へ? やっぱりそんな事? 」


「え? やっぱりって?」


「いや、なんでもない…… そ、そうだな、莉華も流石に下着までは貸さないだろうし」



ふぅ、やっぱり大した事じゃなかった。いや、恋的には大した事か、同じ立場なら俺だって嫌だし。



「それでね、私お金持ってなくて昨日私に買いにくいものがあったらこれで買えってお金くれたでしょ? でもそれでも下着買うにはお金足りなくて……」



そうか、確かにそういうの買うには渡した金だと少ないよな、通販とかだと安く買えるだろうけど届くまでに最短でも2日は掛かりそうだし……



「もっと早くに気が付いてやれば良かったな、来た時に俺も気付いてたら通販で買えたし」


「だ、だよね、私何にも持ってなかったから私が悪いし、やっぱりいい! 履かなくなってなんとかなるし!」



なんとかなるか? 男の俺でも履いていないとちょっとキツいぞ? まぁ俺に金を使わせたくないんだろうけど。



「言いにくいけどあの日の時は?」


「……うぅ」


「いいよ、それくらい金は出すよ。そうでもしないと俺もし捕まったらとんでもない事になりそうだしな。ちょっと教科書ダメにしちゃったから買い直したいから親に言えば仕送りしてもらえるだろうし」


「ほ、本当にごめんなさい、お金ばかり使わせて…… 食事代とか全部2人分、春季君だけじゃなくて春季君の親にも迷惑かけちゃって」



余程悪いと思ったのか恋は泣き出した。

俺は気にすんなと言ったら余計に泣く勢いが増した…… なんでだよ!?



「ひぐっ…… グスッ、ご、ごめんなさい…… な、泣かれても困るよね、顔洗って頭冷やしてくる……」



そう言って恋は風呂場の洗面台に行った。そして俺は時計を見ると恋が急いだお陰でまだ17時半、近くにある某ファッションセンターならやってるな。歩いて20分くらいだし十分間に合うわ。



俺は外着に着替えると恋がグズりながら来た。 そんなに恋にとっては頼み辛い事だったんだな、まぁ恋の身になれば言いにくいのは確かだしこのままだと出掛けられないし時間もなくなるので仕方ないから恋の頭にポンと手を置いた。



「ふえッ?」



撫でてやるくらいなら何も問題ないよな? 変な事するわけじゃないし…… 恋の頭を優しく撫でてやるとだんだん恋が泣き止んできて今度は赤くなってきた。



「あの……えと……」


「いや、泣いてる子供にはこれが1番安心させられるって母さんが言ってたからさ、変な意味はねぇよ」


「は、はい…… ていうか子供って……」


「実際泣き止んだだろ?」



恋の頭から手を離すと恋は真っ赤になって両手で頭を押さえていた。



「は、恥ずかしい…… 春季君の前で泣いたのも恥ずかしいけど……」


「嫌だったか?」



そう言うと恋はブンブンと首を勢いよく振った。 そして下を向いて沈黙が訪れる。 あれ? こんな状態だと店が閉まる。 そのまま硬直している恋を呼ぶと急にビクッとした。 どうやら我に帰ったようだ。



「ほら、行かないと店閉まるぞ?」


「店? 」


「下着買いに行くんだろ? あ、俺とだと行きにくいか……」


「ううん! 春季君と…… 春季君と一緒がいい! てかいいの? だって私…… ひゃあッ!」



また振り出しに戻りそうでラチがあかないので恋の手を掴んで玄関まで行く。



「ほら、靴履けよ、さっさと行くぞ!」


「う、うん!」



家を出て店に向かうが恋の足取りが遅すぎるので恋の手をまた掴んで歩く。



「わわっ!」



恋の手は冷たかったが掴んでる内に段々と恋の手に熱がこもってきた。 速過ぎたか? と思い恋を見ると斜め下を向いていたが髪から覗く耳が真っ赤になっていた。



「速過ぎるか?」


「う、ううん。 大丈夫…… だから」



そして店に着いた、これくらい早く着けば選んでも十分なので一息つく。恋に十分と思われる額を渡し好きなくらい買ってもなんでもないからと言って俺はその間適当な服を見ていた。



てかあいつって俺の服も洗濯してるんだから俺の下着も当然見てるよな…… まぁ俺のなんてなんとも思わないかと思いしばらくすると恋が会計を済ませ俺のもとへ戻ってきた。



「春季君、ありがとう」


「まぁ今回はどうしようもない事だから気にすんなよ」



それでも申し訳なさそうな顔をしている恋だが切迫した問題がなくなったから俺はいいやと思った。 いや、問題だらけなんだけどな……



「私、こんなに優しくしてもらったのいつ以来だろ……」



俺が考え事をしていると恋が何か言ったけどあまりに小さい声だったので聞こえなかった。



「なんか言った?」


「ううん、春季君の手って大きくて暖かかったなって」


「そうか? 暖かかったのは恋の手も暖かかったぞ?」


「えっ? そ、そうだった?」



何赤くなってんだコイツは? 恋は俺から顔を逸らしまた斜め下を向いていた。




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