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弟と間違えて召喚されたので、異世界で小料理屋をはじめます~小料理屋《宵日和》~  作者: HaKo
第7章 異世界でも穏やかには暮らせないようです
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第99話 急報【エリアスSide】


屋敷へ戻る途中、ふと先ほどの日和を思い出した。


『じゃあ、両想い?』


『リリィ!』


分かりやすく慌てて、最後には顔まで赤くしていた。


『付き合ってないですよ。まだ、ですけどね』


そう答えたときの日和の顔まで思い出し、エリアスは小さく笑う。


その先は待ってほしいと言われている。それを破るつもりはないが、好意まで隠すつもりもない。会いたければ会いに行く、送りたければ送る、好きだと思えばそう言う。そのたびに日和が慌てるのも、最近では少し楽しくなっていた。


「……俺も大概だな」


だが、先ほど届いた通信を思い出した途端、その笑みは消えた。


王立魔術院からの急報。それもノア・エルディンからだという。


屋敷へ戻ると、オスカーが待っていた。


「旦那様」


「エルディンからの連絡は」


「こちらへ」


案内された部屋の机には、淡く明滅する魔石が置かれていた。


「ノア様から旦那様へ、どうしてもお伝えしたいことがあると。通常の通信術とは異なるようで、長くは保たないかと」


エリアスは魔石を手に取り、魔力を流した。


しばらくして、雑音混じりの声が聞こえてくる。


『……侯爵、様』


「ノア・エルディンか?」


『はい』


「エルディン、何があった」


『時間がありません。先に伝えます』


声は遠く、今にも途切れそうだった。


『召喚術が実行されました』


エリアスの眉が動く。


「……いつだ」


『数日前です。私も始まるまで知らされていませんでした。止めようとしたんですが、間に合わなくて』


「それで?」


一度、大きく雑音が走った。


『召喚された人物が分かりました』


「誰だ」


『穂積湊です』


エリアスの手が止まる。


忘れるはずがない。日和ではなく、本来この世界へ呼ばれるはずだった人間の名前だ。


「……日和の弟か」


『はい』


先ほどまで笑っていた日和の顔が浮かんだ。


あのときすでに、日和の弟はこの世界にいた。


「今どこにいる」


『分かりません。私は今、自由に動けないんです』


「どういう意味だ」


『召喚を止めようとしたことで、セドリック様から自室待機を命じられました。部屋の外には見張りがいます』


「……軟禁か」


『そういうことになります』


エリアスの表情が険しくなる。


「日和の弟とは話したのか」


『いいえ。一度も』


「セドリックは?」


『おそらく、すでに接触しています』


エルディンは日和が北部でどう暮らしているのかを知っている。その人間を日和の弟から遠ざけたとなれば、嫌な予感しかしない。


『侯爵様。できるだけ早く、湊さんに会ってください』


「ああ」


『それと、日和さんには――』


大きな雑音が走り、声が消えた。


「エルディン?」


返事はない。魔石から光が失われた。


「旦那様」


オスカーが声をかける。


「何がございましたか」


「召喚術が実行された。呼ばれたのは、日和の弟だ」


「……日和様の弟君が」


「ああ」


オスカーもすぐに意味を理解したらしい。


「日和様には、お知らせになりますか」


エリアスは少し考え、首を振った。


「まだだ。隠すつもりはないが、何も分からないまま伝えるわけにはいかない。まず俺が日和の弟に会う」


「かしこまりました」


「王都へ行く。出立の準備を」


「承知いたしました。ノア様のことは?」


「それも確認する。エルディンをあのままにはしておけない」


オスカーが一礼して部屋を出ていく。


1人になったエリアスは、光を失った魔石を見つめた。


ほんの少し前まで、日和はいつもの店で笑っていた。


次に会うとき、その日常を変える話をしなければならない。それでも、伝える前に確かめるべきことがある。


エリアスの眉間の皺が濃くなる一方だった


今日は21:00にも更新します~!

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