↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
弟と間違えて召喚されたので、異世界で小料理屋をはじめます~小料理屋《宵日和》~  作者: HaKo
第7章 異世界でも穏やかには暮らせないようです
PR
98/118

第98話 どうやら否定する気はないようです


それから数日後。


「日和ー!」


昼を少し過ぎた頃、勢いよく店の扉を開けて入ってきたのはリリィだった。


「いらっしゃい。今日はどうしたの?」


「近くまで来たから遊びに来た!」


ちょうど客足が途切れたところだったので、日和はリリィをカウンターへ座らせて水を出す。


「お父さんは?」


「店。ちゃんと手伝ってから来たよ」


「ならいいけど」


リリィが水を飲んでいると、再び扉が開いた。


「こんにちは」


「エリオ兄ちゃん!」


入ってきたエリオを見つけるなり、リリィが嬉しそうに手を上げる。


「こんにちは、お嬢様さん」


「だからその呼び方はやめてって言ったのに!」


「そうでしたか?」


「絶対分かってて言ってる!」


この2人も、いつの間にかすっかり顔見知りになっていた。


エリオはリリィの隣へ腰を下ろす。


「日和さん、何か食べられますか?」


「ありますよ。今日はちゃんと自分で決めてくださいね」


「まだ続いているんですか、その決まり」


「エリオ兄ちゃん、日和に怒られてるの?」


「最近はよく怒られます」


「誰のせいですか」


「さあ」


涼しい顔で言うので腹が立つ。


リリィはそんな2人を交互に眺め、ふいに首を傾げた。


「……ねえ」


「何?」


「2人、付き合ってるの?」


日和の手が止まった。


「えっ」


「だから、日和とエリオ兄ちゃん。付き合ってる?」


「な、なんで急にそんな話になるの?」


「なんとなく。前とちょっと違うから」


「何も違わないよ」


「そう?」


「そう!」


即答したものの、リリィは納得していないらしい。その視線がエリオへ移る。


「エリオ兄ちゃん本当に付き合ってないの?」


「付き合ってないですよ」


ほっとしたのも束の間、エリオは穏やかに微笑んだ。


「まだ、ですけどね」


「ちょっと待ってください」


「やっぱり!」


「リリィもやっぱりじゃない!」


エリオは涼しい顔で微笑んでいるだけだ。


「……エリオさん」


「はい」


「今の『まだ』は何ですか」


「そのままの意味ですが」


「そのままの意味にしないでください」


「でも、日和さんも付き合わないとは言っていませんよね?」


「それは……!」


言っていない。


好きだと言ったし、好きだとも言われた。ただ、その先はまだ待ってほしいと頼んだだけだ。


「日和、顔赤い」


「リリィのせいだからね」


「エリオ兄ちゃんのせいじゃなくて?」


「……両方」


リリィが楽しそうに笑う。


「じゃあ、両想い?」


「リリィ!」


「だって気になるもん」


「僕は好きですよ」


あまりにもあっさり答えた声に、日和は勢いよく振り返った。


「エリオさん!」


「何ですか?」


「何ですかじゃないです!」


「聞かれたので答えただけですが」


「普通そういうこと本人の前で言います?」


「言ってはいけませんか?」


「恥ずかしいです!」


「そうですか」


絶対に楽しんでいる。


リリィは目を輝かせ、エリオは涼しい顔で微笑んでいる。味方が1人もいない。


そんなやり取りをしていると、エリオがふいに口を閉じた。


懐から取り出した小さな魔石が、淡く光っている。


「……?」


日和が見ている前で、エリオが魔石へ指を触れる。


何も聞こえない。


けれど先ほどまで笑っていたエリオの表情が、少しずつ変わっていった。


「どうした?」


低く呟く。


しばらく黙ったまま何かを聞き、それから眉を寄せた。

エリオはさらに何かを聞いたあと、短く答える。


「分かった。すぐ戻る」


魔石から光が消えた。


「何かあったんですか?」


「まだ分からない」


エリオは立ち上がる。


「屋敷へ戻る。すまない」


「今からですか?」


「ああ」


さっきまでの空気が嘘のように、その表情はエリアスのものへ戻っていた。


日和も詳しく聞くことはしなかった。


「……気をつけてくださいね」


「ああ」


エリオは日和を見て、それから少しだけ表情を緩めた。


「お嬢様さん、今日はこれで失礼します」


「え、もう帰るの?」


「急な仕事が入りまして」


「大変だね、エリオ兄ちゃん」


「ええ。また今度」


店を出ていく背中を、日和は扉が閉まるまで見送った。


すると隣から声がする。


「日和」


「何?」


「やっぱり付き合ってるんじゃない?」


「……付き合ってないって」


「まだ、でしょ?」


言い返そうとして、やめた。


さっきエリオが言った言葉を思い出して、また顔が熱くなる。


「……もう、その話やめよう」


「日和、嬉しそう」


「リリィ」


「なに?」


「お父さんに、そろそろ帰ってこいって言われてない?」


「あっ」


慌てて立ち上がるリリィを見て、日和はようやく少し笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。