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弟と間違えて召喚されたので、異世界で小料理屋をはじめます~小料理屋《宵日和》~  作者: HaKo
第4章 異世界でもおいしいものは人を呼びます
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第45話 任せるのも難しいそうです


「今日は何を作っていただけるのでしょう」


カウンター越しに、オスカーが厨房を覗く。


「親子丼にします」


「おやこ……?」


「親と子です」


オスカーが不思議そうな顔をした。


「ずいぶん意味深な名前ですね」


「材料を見れば分かりますよ」


日和は鶏肉を一口大に切り、火玉を薄く切った。


小鍋には森茸で取った出汁を入れる。そこへ塩と少量の酢、すりおろした火玉を加え、少し煮詰めて味を整えた。


醤油もみりんもない。


元の世界の親子丼とは違うけれど、出汁の旨みと火玉の甘みがあれば、それらしい味にはできる。


「鶏肉ですね」


「はい」


日和は鍋に火玉を広げ、その上に鶏肉を並べた。


出汁を注ぐ。


ふつふつと煮立ち始めると、火玉の甘い香りと鶏の脂が出汁に混ざっていく。


「それで、子は?」


「もう少し待ってください」


日和は卵を二つ取り出した。


「ああ」


オスカーが納得したように頷く。


「鶏と卵で、親子なのですね」


「正解です」


「なるほど。面白い名前です」


卵を器に割り入れ、箸で軽くほぐす。


混ぜすぎない。


白身が少し残るくらいで止める。


「日和様は、料理を作るときによく考えていらっしゃいますね」


「そうですか?」


「ええ。切り方も、火の入れ方も。何となくしているようには見えません」


「失敗したくないので」


「なるほど」


オスカーが小さく笑った。


「私とは逆かもしれません」


「逆?」


日和は鍋を見ながら聞き返す。


しばらくして、オスカーが口を開いた。


「最近、若い使用人に言われたのです。もう少し自分に任せてほしい、と」


「オスカーさんが?」


「ええ」


意外だった。


オスカーは部下の扱いも上手そうに見える。


「私はどうも、人に任せるのが苦手なようでして」


「全部自分でやっちゃうんですか?」


「そこまでではありません。ただ、失敗しそうだと気づくと、先に手を出してしまうのです」


「ああ……」


それなら、少し分かる気がする。


「失敗すれば、屋敷の仕事に影響が出ます。お客様にご迷惑をおかけすることもある。ですから、気づいたなら直すべきだと思っていたのですが」


オスカーは困ったように笑った。


「それでは、いつまで経っても自分でできるようにならない、と言われてしまいました」


「なるほど」


「任せるべきなのか。それとも、失敗すると分かっているなら止めるべきなのか」


日和はすぐには答えなかった。


鍋の中では、鶏肉にゆっくりと火が通っている。


「難しいですね」


「ええ。思っていた以上に」


日和は溶いた卵を半分だけ鍋へ回し入れた。


透明だった白身が、出汁の中でゆっくり白く変わっていく。


少し待ってから、残りの卵を加える。


「日和様?」


「はい?」


「なぜ二度に分けるのですか?」


「全部一緒に入れると、同じ固さになっちゃうので」


火が入ったところと、まだ柔らかいところ。


両方あった方がおいしい。


日和は火を弱め、蓋をした。


「……同じにしない方がいいこともあるんですよ」


口にしてから、日和は鍋を見る。


オスカーも何も言わなかった。


数秒待って、蓋を開ける。


ふわりと湯気が立ち上った。


「できました」


日和は炊きたての穀物を器によそった。


その上へ、まだ柔らかさの残る卵と鶏肉を、崩さないように滑らせていく。


オスカーが興味深そうにそれを見つめていた。


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