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弟と間違えて召喚されたので、異世界で小料理屋をはじめます~小料理屋《宵日和》~  作者: HaKo
第4章 異世界でもおいしいものは人を呼びます
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第42話 自分の仕事


「俺がやってることって、本当に俺の仕事なのかなって」


そう言ったあと、ルカは追加の焼きおにぎりを食べ始めた。


日和は片づけをしながら、さっきの言葉を考える。


フェルナー商会の名前も、信用も、父親たちが築いたもの。


確かに、それはルカ自身が一から作ったものではない。


「でも」


日和はふと思った。


「私がフェルナーさんから野菜を買ってるのは、フェルナー商会だからじゃないですよ」


ルカが顔を上げた。


「最初は紹介してもらったからですけど。今もお願いしてるのは、ちゃんといいものを持ってきてくれるからです」


「……それは、商会が仕入れてるものがいいからでしょう」


「そうなんですか?」


日和は首を傾げた。


「この前の葉野菜、フェルナーさんが農家で見つけてきたって言ってませんでした?」


「あれは、まあ」


「卵も。私が料理に使いやすい大きさを選んでくれてますよね」


ルカが黙る。


「私はフェルナー商会のこと、まだよく知りません」


「それ、本人の前で言います?」


「すみません」


でも、と日和は続けた。


「フェルナーさんが持ってきてくれるものは信用してます」


ルカの目が、少しだけ大きくなる。


「だから、それはもうフェルナーさんの仕事なんじゃないですか?」


しばらく返事がなかった。


日和は何か変なことを言っただろうかと不安になる。


やがてルカが、小さく息を吐いた。


「……そっか」


それから、少し笑った。


「俺、商会の名前を使わないことばっかり考えてたかもしれない」


「使ったら駄目なんですか?」


「いや」


ルカは首を振った。


「使えるものは使えばいいですよね。その上で、自分で見つけた農家とか、自分で繋いだ店を増やしていけばいい」


声が少しずつ明るくなる。


「親父に話してみます。俺が担当する取引を、もっと自分で開拓したいって」


「いいと思います」


「断られるかもしれないけど」


「そのときは、そのとき考えましょう」


ルカが笑った。


「日和さんって、結構適当ですよね」


「失礼ですね」


「褒めてます」


「絶対違う」


二人で笑った。


ルカは最後の焼きおにぎりを食べ終え、空になった皿を見る。


「ごちそうさまでした」


「はい。ありがとうございます」


「……あの、日和さん」


「はい?」


「フェルナーさんって、やめません?」


日和は目を瞬いた。


「じゃあ、なんて呼べば?」


「ルカで」


あまりにも普通に言うので、日和も普通に頷いた。


「分かりました。ルカさん」


名前を呼ばれたルカが、少しだけ黙った。


「……はい」


「?」


「いや。なんかいいなと思って」


何がだろう。


日和が首を傾げていると、ルカが笑った。


「じゃあ俺も、日和って呼んでいいですか?」


「別にいいですよ」


「即答ですね」


「名前ですから」


「そうなんですけど」


なぜかルカはまた笑っている。


「じゃあ、日和」


「はい」


今度はルカの方が少し照れたように視線を逸らした。


日和には、やっぱり理由が分からなかった。



話し込んでしまい、店を閉めた頃にはいつもより遅くなっていた。


日和は戸締まりを済ませ、家へ向かう。


今日はルカの話を聞いただけだった。


何か特別なことを言ったつもりはない。


それでも、帰るときのルカの顔は、来たときより少し明るかった。


それならよかったと思う。


「……私も頑張らないとな」


宵日和だって、まだ始まったばかりだ。


そんなことを考えながら家へ着き、二階への階段を上がる。


自分の部屋の前まで来たところで、日和は足を止めた。


隣の扉の前に、人が立っている。


栗色の髪。


淡い緑色の目。


向こうも日和に気づいた。


「……こんばんは」


「こんばんは、エリオさん」


隣人のエリオだった。


彼は日和を見て、それから夜の暗い廊下へ一度視線を向けた。


「ずいぶん遅かったんですね」


日和は目を瞬いた。


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