第41話 2皿目 焼きおにぎりと具だくさん汁
朝から農家を何軒も回っていたというルカに、何を作ろう。
日和は炊いておいた穀物を取り出した。見た目も食感も、元の世界の米によく似ている。
そこへほぐした川魚と刻んだ香草、少しの塩を混ぜ、食べやすい大きさに握る。
「何作ってるんですか?」
「握ってます」
「それは見れば分かります」
日和は平たく整えたものを、熱した鉄板に並べた。
じゅっ、と音がして、香ばしい匂いが立ち始める。
両面に焼き色をつけ、仕上げに魚の出汁と塩を煮詰めたものを薄く塗る。再び鉄板に触れた瞬間、じゅわっと音が弾けた。
「……腹減った」
「もうちょっとです」
隣では汁を温める。
豆と白い根菜、葉野菜。それに細かく切った干し肉を少し。肉と野菜の旨みが溶けた汁を味見して、塩で整えた。
「お待たせしました」
焼き上がったものを二つと、湯気の立つ汁をルカの前に置く。
「これは?」
「焼きおにぎり、みたいなものです」
「また、みたいなもの?」
「ここの材料で作ると、だいたいそうなります」
日和が手で食べるように言うと、ルカは少し驚きながら焼きおにぎりを持ち上げた。
一口かじる。
表面は香ばしく、中は柔らかい。川魚の塩気と香草の香りに、焼いた出汁の旨みが重なる。
「……うまい」
続けてもう一口。
「これ、持って食べられるのもいいですね」
「そこですか?」
「農家を回ってると、昼を食べる時間がない日もあるんですよ」
「今日は座って食べてください」
「そうします」
笑いながら、今度は汁を口にする。
ほくほくした豆と、出汁を吸った根菜。干し肉の塩気が、疲れた身体にちょうどいい。
「……これもいいな」
ルカの食べる速さが、少しゆっくりになった。
「疲れてました?」
「まあ、ちょっと」
「朝から働いてましたもんね」
「それもあるんですけど」
ルカは匙を置いた。
「最近、仕事のことで少し考えることがあって」
「仕事?」
「俺、今の仕事は好きなんです。農家を回って、いいものを見つけて、それを店に届けるのも」
そこで一度、言葉を切る。
「でも、何をやっても結局『フェルナー商会の息子だから』って言われるんですよ」
日和は黙ってルカを見る。
「名前も信用も、父たちが作ったものですからね。兄貴は本店を継ぐし、俺は好きにやらせてもらってる次男坊で」
ルカは困ったように笑った。
「たまに分からなくなるんです」
そして、ぽつりと言った。
「俺がやってることって、本当に俺の仕事なのかなって」
日和はすぐには答えなかった。
代わりに、もう一つ焼いたものを皿へ置く。
「追加です」
「……答えじゃなくて?」
「難しい話は、お腹いっぱいになってからでいいかなと」
ルカは一瞬きょとんとして、それから笑った。
「日和さんらしいな」
「そんなに長い付き合いじゃないですけどね」
ルカは笑いながら、新しい焼きおにぎりを手に取った。




