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弟と間違えて召喚されたので、異世界で小料理屋をはじめます~小料理屋《宵日和》~  作者: HaKo
第4章 異世界でもおいしいものは人を呼ぶようです
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第40話 お客さんが増えました


翌日。


宵日和の扉が開いた。


「いらっしゃいませ」


日和が顔を上げると、見知らぬ男性が立っていた。


年齢は50歳くらいだろうか。少し店内を見回してから、空いている席に座る。


「ここ、ダリオのところの娘が飯を食った店か?」


「……はい?」


思わぬ名前が出てきた。


「アーレンの店主だよ。あいつが、変わった料理を出す店があるって言ってたからな」


「ダリオさんが?」


「ああ。うまかったとも言ってたぞ」


それは知らなかった。


昨日、あれだけ多めにお金を置いていったうえに、宣伝までしてくれたらしい。


「ありがとうございます。何にしますか?」


「ダリオが食ったやつ」


「水炊きですか?」


「それ」


日和は少し困った。


「あれ、二人以上で食べる料理なんです」


「一人じゃ食えないのか?」


「食べられますけど、寂しいですよ」


「料理屋でそんなこと言われたのは初めてだな」


男性が笑った。


結局、その日は別の料理を出した。


そして、その翌日。


「ダリオに聞いたんだけど」


また一人。


その日の夕方には、


「アーレンの店主が、ここは面白いって」


もう一人。


さらに次の日には、二人組がやってきた。


「いらっしゃいませ」


日和は注文を聞き、厨房へ戻る。


火をつける。


食材を切る。


鍋から湯気が上がり、店の中に料理の匂いが広がっていく。


できあがったものを運ぶと、今度は別の客が扉を開けた。


「……いらっしゃいませ!」


慌てて声をかける。


忙しい。


と言っても、満席には程遠い。


それでも、少し前まで誰もいなかった店だ。


一人で料理を作り、運び、空いた器を下げる。


店と厨房を何度も行き来しているうちに、日和はふと思った。


「……お店っぽい」


「何が?」


客に聞かれた。


「なんでもないです」


危ない。


独り言は厨房で言おう。



数日後。


昼の客が帰り、日和は空いた器を片づけていた。


ダリオの名前を聞かなくても入ってくる客が、少しずつ増えている。


通りから店の中を覗き、そのまま入ってくる人。


一度来た客に連れられてくる人。


まだ「繁盛している」とは到底言えない。


それでも。


「ゼロじゃない」


これは大きい。


日和は満足して頷いた。


そのとき、扉が開いた。


「いらっしゃいませ」


振り返る。


見覚えのある青年が立っていた。


「こんにちは、日和さん」


「フェルナーさん」


ルカ・フェルナー。


店の仕入れを始めるときに知り合った、フェルナー商会の青年だ。


「近くまで来たので、寄ってみました」


ルカは店内を見回す。


「ちゃんと店になってますね」


「どういう意味ですか」


「いや、前に来たときは準備中だったから」


「そういうことにしておきます」


ルカが笑う。


「お客さんも来てるみたいですね」


「最近、やっと」


「よかったじゃないですか」


「ダリオさんっていう近所の料理屋の方が、いろんな人に話してくれたみたいで」


「へえ。口コミか」


ルカは感心したように頷いた。


「商売じゃ、一番強いやつですね」


「そうなんですか?」


「知ってる人がうまいって言ったものは、自分も試したくなるでしょう?」


言われてみれば、確かにそうかもしれない。


「フェルナーさん、今日はお仕事ですか?」


「ええ。朝から農家を何軒か回ってました」


よく見ると、いつもより少し疲れているように見えた。


「大変ですね」


「慣れてますよ」


そう言って笑ったあと、ルカは空いている席を見る。


「……ところで」


「はい」


「ここって、仕入れ先でも客になれます?」


日和は目を瞬いた。


「もちろん」


「よかった」


ルカは迷わず椅子を引いた。


「じゃあ、何か食べていこうかな」


「お腹空いてるんですか?」


「かなり」


「それなら任せてください」


日和は腕まくりをして、厨房へ向かった。


「お腹が空いてる人に食べさせるのは得意なので」


背後で、ルカが笑う。


「頼もしいな」


さて。


朝から働いて、お腹を空かせた人に何を作ろう。


日和は厨房に並んだ食材を見渡した。


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