影を落とした色づき
道端にポツンと、一輪の花が咲いていた。
「物珍しい花だな……」
青々とした茂みに加わるその一輪の花は、花だけでなく、茎や葉までが灰色で、一目で異質さを理解できるが、同時に、目を惹く存在でもあった。
花は風が吹いても靡かず、陽の光に照り付けられても、影を落としたままでいる。
ルクノウは図らずも、その花にそっと触れる。
花は、そこにあるのに、ここにはないようで、触れることはできても、まるですり抜けてしまいそうな感触だった。
ちょうどそこに通りかかった男性に、ルクノウは一つ尋ねる。
「あの、すいません。この花のこと何かご存知ありませんか?」
「ん? 花? あー、それは“終末花”だな。ここも終わりが近いんだろう」
(終末花……初めて聞く名前だけど、あの日のカノン村の森の木々と少し似ているような)
「この辺りでは稀に見かけるんだが……兄ちゃんはひょっとすると旅人かい?」
ルクノウの身なりを一瞥した男性は、理解したように問う。
「はい。この辺りに来たのは初めてでして」
「そうかいそうかい。終末花は名前こそアレだが、歴とした縁起物だからな。きっといいことがあるさ。ま、俺と出会ったことで使い果たしちまったかもしれないが」
「それは勿体無いことをしましたね」
「お、言うねえ」
二人はしばし談笑にふける。
「でも、寂しいものですね。終末花」
「なに、始まりがあれば終わりがあるものさ。代わりに俺たちに恵んでくれるありがたい存在なんだよ」
「そういうものですかね」
「そういうものさ。じゃ、気をつけてな」
「はい、ありがとうございました」
二人は背を向けて歩き出した。
世界の色づきもまた、綻び、紡いでいくのである。




