第46噺 楽しき夜にオヤスミ
包帯でできた魔法使いが思い出す、不伝の記憶。
誰も伝えてはいけない。誰も語ってはいけない。
暗黒の時代が、今扉を開けて開いていく。
〜アタゴリアンは12の村と1つの都市から出来た小さな国だ。
小さな上に鎖国状態のこの国は、他国から誰も気にはされなかった。
だがこの小さな国の中では、魔術の代わりに科学が発達していた。
ダンス・ベルガードとリンベル・コッコはその国の東端の小さな家で暮らしていた。
相変わらずダンスの腹の傷は治らず、リンベルの機械音痴も治らない。
そして、時間は真夜中。
リンベルとダンスはじっと見つめあっていた。
ダンスの手には魔法の杖が握られ、リンベルの手には壊れた機械が握られていた。
「…………ごめんなさい」
リンベルは諦めたように謝り、ダンスは勝ち誇った顔で「宜しい」と返した。
リンベルは机の上に壊れた機械を起き、ダンスは魔術をかけ機械を直す。
そして壊れた機械は元のエアコンのリモコンに戻った。
それを見たリンベルが歓声を上げる。
「やったー!
これでエアコンが使えるわ!」
「全く、どうやったらリモコンが爆発するんだよ」
「しょうがないじゃない。
私が電源ボタンを押すと、いきなり爆発したんだから。
そんなの私ん家じゃ普通よ普通」
「お前の家の機械には火薬が入ってるのか?」
「あはは、さ。
エアコンエアコン!早く涼もうよ!」
リンベルがピッとボタンを押すとエアコンが動きだし、涼しい風が部屋に送られてくる。
ダンスは魔法の杖をチラッと見た。
この杖と魔術で何回この家の機械を直したのか、ダンスは数えたくなかった。
あのエアコンも三回以上は直しているが、ちゃんと動いている。
そして原因はリンベルだったりする。
「あーすずしー!
いーきかーえるー!」
「俺の魔術、最近機械修理以外で使われてないんだが」
「その魔法でお腹の傷も治せればいいのに」
「何度もやったが、無理なんだよなぁ。
どうも魔術のかかりが悪くて効果が無いんだ」
「うーん、残念ね」
「まーな。(何が残念なんだ?)
さて、エアコンも着いたし寝るか」
ダンスはリンベルの言葉を少し気にかけつつも、眠気が勝りふらふらと自室に戻ろうとする。しかしリンベルがそれを引き留める。
「えーもうちょっと涼もうよー。
私の部屋エアコンが無いから暑いんだよー」
「時間を見ろよ、もう良い子は寝る時間をとっくに過ぎてるんだぞ?」
「私は良い子じゃないから別に良い」
「俺は良い子だからオヤスミするぜ」
あくびをかきながらダンスは自室に戻っていった。もう眠くて仕方なかったからだ。
それを見たリンベルはぽつり、と一言呟く。
「残念だなー……もう少しで凄い事言えたのに、本当に残念」
ダンスとリンベルの毎日は、いつもこんな感じだった。
リンベルが騒ぎを起こし、ダンスがそれを静め、風に巻かれるかのように早々に去っていく。
これが二人にとっての日常だった。
守らなきゃいけない、大切な日常だった。
その頃、アタゴリアンの都市に二人の子どもが現れていた。
一人は和服を着た少女。
一人はゴスロリドレスを着た少年。
二人は真夜中だというのに関わらず目を輝かせている。
和服少女が少年に語りかける。
「ね、ショウメン!
ダンスは見つけた!?」
「だめだよウシロノ!
まだ見つけられないよ!」
「早くしないと私達デビルズ・ヘイヴンの人たちに怒られちゃうね!」
「そうそう、急がないとね……その為に、歌うよ!」
♪(ウシロノ以下ウ)「ダンス〜ダンス〜あなたは何処〜♪」
♪(ショウメン以下ショ)「君の手がかり探して〜何処でも行くよ〜♪」
ウ「ピンクの像と遊んで〜♪」
ショ「紅白ポピーの花冠作って〜♪」
ウ「貴方の虫かごを作りました〜♪
貴方だけの狭い王国〜♪」
ショ「明るい明るい闇の中で一生暮らそう〜♪
鼠と埃が友達だ〜♪」
ウ「ラーラララ〜のっぽの古時計♪」
ショ「ルールルル〜壊れて二度と動かない♪」
ウ&ショ「ダンス・ベルガードを捕まえて〜虫かごで一生住まわせよう〜♪
ウシロノショウメン、ダ・ア・レ♪」
ウシロノとショウメンは楽しそうに歌う。
この二人……いや双子悪魔こそ、この物語の最初のページを綴る存在なのだ。




