第40噺 悪魔と堕天使の国 デビルズ・ヘイヴン
イドに堕ちた蛙から、地獄から楽園を造りし者達にこの謌を送ろう。
お前達が何処に居なければいけないのか、耳を塞いでもすり抜けて真実の謌を聴かせてやろう。
貴様達から見れば、この物語はここから始まるのだ。
『悪魔達を呼び出し……』
エゴの風穴
「こんばんは。
スーパーハイパーマスターウルトラアームストロングネオパーフェクト暗黒大魔王様」
「フハハハハハハ、暗黒と猛獣が支配する黒き森の中からよくぞこの風穴を見つけたな、
我が弟子ならばこれくらいの試練、天地を覆すより簡単という事か!その実力、その根性、大いに評価してやろう!
(訳・こんな暗い森の中良く来てくれましたね。
流石我が弟子です。嬉しい) 」
「はい、ありがとうございます。
魔王様」
「ではいつも通り案内するとしよう、我が魔窟へな」
魔王様とダンスは洞窟の中を歩く。
洞窟の中は迷宮のように要り組んでいて細い道が沢山あるが、魔王はその中から迷いなく一つの道を歩いていく。
ダンスもそれに続き、ゴツゴツとした岩の上を革靴で歩いていく。
半刻程暗い迷宮を歩き続けると、やがて一つの部屋に入る。
魔王様はそこで呪文を唱えると、岩肌がだんだん消えていき別の世界が現れる。
上には薄緑色の空と二つの太陽が見下ろし、下には見たこともない草花が見上げている。
そして正面には商店が並んでいる通りが見えるが、その主は皆姿が違っている。
魔王様はフッと笑みを浮かべるとダンスにこう言い放つ。
「ようこそ、我が魔窟……デビルズ・ヘイブンへ」
デビルズ・ヘイブン(悪魔達の避難所)。
これはアタゴリアン国でもダンスしか知らない秘密であった。 この国の地下には悪魔達の国が存在しているのだ。
だがここの悪魔達は人を襲わない。
何故なら彼等は地獄から逃げてきた悪魔達または堕天使達だからだ。この悪魔達の国の地下には強力な魔核が存在し、悪魔達はその魔核から僅かに零れる魔力を啜って生きている。
その為彼等は人を襲う理由が無いのだ。たまに悪戯目的で地上に行きたがる悪魔がいるが、それは途中で諦めてしまう。
何故なら、地上と地下を繋ぐ唯一の道は『エゴの風穴』だけだが、そこは門番以外誰も道を知らない為誰も出入り出来ないからだ。
「ありがとうございます、魔王様」
「フハハハハハハ!
悪魔達のおぞましき姿に恐怖し絶望し震え上がる時はここに来るがいい!寛大な俺様が魔の手を差しのべてやろう!
(訳・恐くなったら戻ってくるんですよ。僕が送りますから)」
魔王様は笑いながら呪文を唱えると、姿が消えていく。
ダンスは魔王様に一礼した後、くるりと踵を返し悪魔達の国へ足を踏み入れていった。
近くで床屋を営む四本腕の悪魔がダンスに声をかける。
「よおダンス!
今日もここに来たのか、精が出るなぁ!」
「おはようございます、床屋さん」
「今日も少ない髪だなぁ。
なあダンス、触手とか無駄な腕とか生えてないか?最近ろくなモノが来ないから退屈なんだよな〜」
床屋さんは四本腕をブンブンと振り回す。あの腕で悪魔の髪をカットしたり無用な触手を切断しているのだが、生憎ダンスは人間なのでそれらは付いてない。
「腕が生えた時は頼みますね」
「おう!頼まれたぜ!」
四本腕の悪魔はニコニコ笑いながら去り行くダンスに手を振った。
ダンスは商店街を歩き続ける。
人間ダンスがこの国を歩けるのには理由がある。
初めは只の偶然で踏み入れた地
だったが、駆けつけて来た悪魔達にダンスはこう言ったのだ。
『僕をこの国全ての悪魔・堕天使達の奴隷にさせてください』
地獄から逃げてきた彼等は困惑し、この国では奴隷は許されないと伝えると、
『それなら僕をこの国全ての悪魔・堕天使達の弟子にさせてください』
と訂正した。
それ以来、ダンスは悪魔や堕天使達の事を『お師匠様』と呼んでいる。
だがダンスにとっては奴隷より弟子になる方が好都合だった。
これによりダンスはあらゆる悪魔・堕天使の仕事場に入り様々な仕事を覚えられる為と、図書館に出入りしやすくする為であった。
図書館には悪魔専用、堕天使用に仕切られているが、ダンスは誰かと弟子として付き添う事でそのどちらにも入る事が出来たのだ。
こうしてダンスは、弟子でありながら国中のあらゆる知識を身に付けていった。
続くか?続かないか?
それは楽園に住む者達だけが知っている。




