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歩き続ける者達  作者: C・トベルト
歩き続ける者達~不伝~怪力乱神御伽噺
41/66

第41噺 魔王は真実を知っている。


楽園に住む者達から門前の魔王へ。

真実を伝えるな!事実を語るな!ダンス・ベルガードに全てを伝えてはならぬ!

『自分の体と引き換えに魔法の知識を手に入れる契約を交わしました』

これ以上に愚かな事実があると伝えてはならぬ!




〜アタゴリアン・エゴの風穴、入口〜


ダンスはデビルズ・ヘイブンで修行を終え、アタゴリアンに戻っていた。

デビルズ・ヘイブンでは時間がゆっくり流れ、ヘイブンで2日過ごせばアタゴリアンでは1日流れるのだ。

ヘイブンで半日修行してきたダンスは僅か三時間でアタゴリアンに戻る計算になる。


ダンスは門番をしている魔王に一礼した後、家に帰り始める。

魔王もまた風穴に入り少し経った後に渇いた破裂音を聞いて、外に出た。

外ではダンスが腹部から血を流しながら倒れ、そのすぐ横には見たこともない黒い筒の付いた何かをにぎりしめていた。

魔王は直ぐに駆け寄ろうとしたが、兵の背後から走り寄る人影を見たために茂みに隠れてしまう。

そして魔王が隠れたのと同時に人影兵の前に現れた。


「どうした、何が起きたんだ!?」

「ふ、フロッグ発掘隊長…じ、自分は、この銃を処分しようとした時にあ、あの男が現れて…そしたら銃が暴発して!」

「今はそんな事どうでも良い!早くこいつを医者の元に運べ!」

「りょ、了解しました!」


兵は敬礼した後、倒れたダンスを担ぎ上げて医者の元へ運んでいく。

魔王は茂みの中からその様子を眺めていたが、やがて風穴の方へ走り去っていった。

そして森は静けさを取り戻す。大地にダンスの流した血を残して。





ダンスが目を覚ました時、始めに気付いたのは自分の腹部を大量の包帯が巻き付いている事と、その奥から流れる痛みだ。


「目を覚ましたようだね?

死ななくて良かった」


突如優しげな老人の声が聞こえてくる。振り返るとそこには髭の長い老人が立っていた。


「儂の名前はコッコ国王付秘書。

今は病気の国王に代わり政権や経済や人民を守っている者の頂点に立っている者だ。

そしてここは儂の別荘の一室だ。傷付いた君を助ける為に一番近い儂の家に運んだのだよ。

今回、儂の部下の部下が君に迷惑をかけてしまい、誠に申し訳ない」


老人は深々と頭を下げ、ダンスは目を丸くして驚いてしまう。

しばらくしてからコッコ老人は顔を上げ、語り始める。


「君の怪我は他の者には『熊に襲われた』と伝えている。

君を傷付けた武器はまもなく処分されるからだ。

傷付けた君には語らなければいけないが、この国はたまに危険な物が流れてくる時がある。

それが今回は武器だったのだ」


老人は一瞬、包帯を巻き付けた腹部に目を向ける。


「あれは人を傷付けるだけの道具だ。

儂はあれを処分するよう部下に伝えたが、その時に君が現れて…傷付けられたのだ。

だから今回の事は周囲にも黙っていて欲しい」


ダンスはこくり、と頷く。それを見たコッコは笑みを浮かべた。


「良かった。

良ければ君が回復するまでの間、儂の孫を君に見てもらう事にしよう。

入りたまえ」


コッコが扉に向けて声をかけると、ドレスを着た十代後半の女性部屋に入る。


「儂の孫、リンベル・コッコだ。

こう見えて看護の道を目指していてね。これから彼女が君を介抱する事になる。

しばらくここで安静にしているといい」


ダンスはぺこり、と頭を下げる。

コッコ老人は優しげに笑う。


こうしてダンスの新たな生活が幕を開けた。


ここからの魔法使いの物語は若き雌鳥が知っている。

だがこれからは少し魔法使いから離れ、楽園に住む者達の物語を語らなければならない。


それを語るか語らないかは、魔王だけが知っている。

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