第14話 黄金の海賊船が空を飛ぶ。
〜深夜・湖の街アルデガン・路上〜
「何だこいつは!?」「低級魔物だ!」「応戦しろ!」「慌てるな!陣を組み立てるんだ!」「意外に弱いぞこいつら!」「ぎゃー今なんか飛んだー!」
宿屋『ボーンヘッド』近くの路上は悲鳴と光の嵐に包まれていた。
突如地中から現れた魔物達に、6つのチームに別れたチームABESHIは苦戦していたからだ。
魔物達の姿は人型の蜥蜴だったり翼に羽の生えた小悪魔だったり手だけの怪物だったりと、種類もまた様々だ。
不幸中の幸いというべきか魔物達は総じて魔力も知識も低級が弱い。
何とかチームABESHIの被害は少ないがそれでも彼等の命が危険な事に代わりない。
そしてこの低級魔物達、異常に数が多い。
まだ魔物達の襲撃から数分しか経っていないが、もうチームABESHIの何倍の数の魔物がチームABESHIにより退治され、
それと同数の魔物達が現れては襲いかかってくる。
「どういう事だ!?
何故こんなに魔物が涌き出てくるんだ…く!離れろ魔物共!」
「これはダンク処の騒ぎじゃないぞ!早く本部に増援を要請するんだ!」
「ダメだ、数が多すぎる!
少しでも手を緩めれば食われるぞ!」
「くそ、こんな所で…死にたくねぇ!」
「ヨーホーホーホー!!」
魔物達もABESHIも全員、ある人物の一声により動きを止めてしまう。
そして声の方に振り返ると、魔物達もABESHIも全員目を丸くして驚いた。
何故なら黄金の海賊船が空に浮かんでいるからだ。
「な、なんだあの船!?
黄金の海賊船!?」
「よく見ろ、キャデラック船じゃなくガレオン船だ!マストが5本もある!」
「何で60メール以上のガレオン船が空に浮いてるんだよ!」
「それはだな!」
空に浮かぶ船から顔を出したのは、全身が包帯で出来た海賊衣装に身を包んだ男、ダンクだ。
レイピアを片手に楽しそうに封印部隊を見下ろしている。
「この俺の魔法『ピーター・オーゴン・ヴァイキング』で巨大な海賊船を作り上げたからだ!」
「はぁ!?
ま、魔法で船を作ったァ!?
馬鹿も休み休み言え、そんなの出来るわけ」
「話は良いからこっちに乗れ、今網を投げてやる!」
言うが早いか、海賊船から大きな網が投げられる。
30人は簡単に入れそうな程大きな網だ。
チームABESHIのメンバーは一瞬迷う。
この網に入って良いのか、奴等の罠では無いのか?
だが地上には無限に涌き出る魔物達。このままここにいればいつ死傷者が出てもおかしくない。
危険なのはこちらの方が上だ。
チームABESHIのリーダー、ヤ・ムーチャが全員に命令する。
「全員乗り込め!」
「「「「「「おう!」」」」」」
全員が急いで網に乗り込むと同時に網は上がり、全員は船の上に上がる。
そしてダンクの姿を探すが、何故かダンクは何処にもいない。
一人が首を傾げたのと船がゆっくりと上昇を始めたのは同時だった。
「うわ、船が移動し始めた!」「何処に行く気だ!」「おかーちゃーん!」
混乱するチームABESHIの耳に、何処からかダンクの声が聞こえてくる。
「いやあ、ミイラ捕りがミイラになるっていい名言だよなぁ。
俺を封印しに来たお前達に、ぴったりの言葉だもの」
「この、怪物ミイラー!」
「安心しな、適当な山の中で降ろすよう自動入力されてるからよ、空飛ぶ船旅を楽しみにするんだな」
「バカー!包帯ー!ミイラー!」
黄金の海賊船は悪口ばかり言うチームABESHIを乗せながら、空の雲の中に消えていった。
アルデガンの路上に残ったのは、ダンクと無数の魔物達だ。
魔物達は突然の事態にしばらくぽかんとしていたが、ダンクが「おい!」と叫ぶと魔物達は一斉にダンクに振り返る。
ダンクは魔物達の言葉で話を始めた。
『お前等、湖の底にある洞窟の中の魔力に惹かれて集まってきた魔物達だろ』
『なんだ貴様?何故魔物の言葉を話せる?』
『それはお前達と同じ怪物だからさ。
それより良い話があるんだが、リーダー格の奴は居ないか?』
『良い話、だと?』
『ああ』
ミイラは包帯で出来た顔を歪ませ、ニヤリと笑った。
『とびきり美味い話、さ』




