第74話:浮気女は鳥籠の中
ピコン、ピコン──と絶え間なく続くDMの嵐で気が動転しそうだった。
今までの冴えないままの響だったら、事態はここまで大きくならなかったと思う。
あの男の人気が急上昇したせいだ──。
「なんでッ、なんで私なの──?」
意味がわからない。
少し前まで私に尻尾を降っていた男共も、今では罵倒する側に変わっていた。
頼りにしていた龍生は、刑務所の中で壊れたらしい。
面会に行ったら、人に会える状態じゃないって看守が笑いながら言っていた。
そもそも家族じゃないと会えないらしい。
家族はママが浮気して、一家離散寸前の状態。
今の私にはどこにも居場所がなかった。
──コツン。
窓ガラスに何かが当たった音がした。
閉め切っていたカーテンを全開にすると、眩しくて思わず目を細めた。
「おい、本当に浮気女の家じゃんw」
「ブスは引っ込んでろー!」
「嘘、アイツ泣いてないか?」
10人くらいの集団が、カメラを片手に嗤う。
私のことを『浮気女』と呼ぶのは、同じ高校の人たちしか考えられなかった。
この動画も拡散されて、私はみんなの笑い者になるに違いない。
ズキズキと胸の奥が痛む。
耐えられない──こんなの、鳥籠の中に閉じ込められている気分。
「もうイヤッ」
私は乱暴にカーテンを閉めると、枕に顔を埋めた。
「……アアァァァァァッ! みんな──みんな死んでしまえ!」
外では『誰が一番強く石を窓に当てられるか』を競うゲームが始まる。
──コンッ、ゴンッ!
不快なリズムを刻んで、音はだんだんと大きくなっていく。
響は、私にストーカーをしていると広められた時もこんな感じでしんどかったのかな。
考えるだけで身震いがした。
私はなんて恐ろしいことをしてしまったのだろうと、悔やんでも悔やみきれない。
謝りに行こうと家の前にはクソ野郎たち。
それに、響の家に行ったとしても今では別の女がいる。
私のいた場所には、今更帰れない。
窓ガラスがパキッと音を立てて、続けて「ヤバっw」と笑う声が聞こえた。
「もう死のう」
私は必要とされていない。
だったら、最後に私の事を貶した奴らを人殺しにしてやる。
そう決めた途端、少しだけ気が楽になった。
未使用のノートを開いて、今の気持ちを警察に残すために鉛筆を走らせた。




