第73話:獄中のクズ男
俺の姑息な手段は全て水の泡だ。
見破るだけにはとどまらず、俺に恥をかかせるプレイをしてきた。
終いには警察に捕まった。
どうやら、暴力団を学校から撤収させる時に電話をかけたのを辿って、黒幕が俺だということが発覚したらしい。
暴力団の奴に電話をかけたのは響のせい。
全て奴の計算通りだと言うのか?
「まさか、な…………」
こうして俺は刑務所に行くことが決まった。
どんな所でも、俺の父親の名前を知ったら頭を下げるに決まっている。
やはり俺は人生勝ち組だ。
◇
「俺の父親は日向議員だ。新入りだけどよろしく」
この挨拶が間違っていたらしい。
刑務所にいるアホ共は、『日向議員』という名前を聞いて目の色を変えた。
「あのゴミ議員の息子ォ?」
「裏がありそうで嫌いなんだよな」
「そうだ、コイツを痛めつけようぜ。どうせあの議員も刑務所の中だ。助けなんて来やしない」
そう言って、元からいた囚人達は容赦なく殴ってきた。
看守は見て見ぬふりをする。
「や、やめろ……」
口の中から血の味がする。
何本か骨が折れたと思う。
そんな時、一人の声で拳が止まった。
「──やめてやれよ」
囚人達の顔は引き攣り、俺の背筋は凍りついた。
その声に聞き覚えがある。
「久しぶりだなァ……日向龍生……」
数日前、一緒に学校を襲撃した暴力団の声だった。
「お前のせいで何年も牢獄暮しなんだよ。これから一緒に楽しもうな?」
「お前がぬくぬくとシャバで響ってガキと遊んでいる間、俺たちがどんな目に遭ったか、じっくり教えてやる」
「や、やめろ……ッ」
「……まずは、その高いプライドからへし折ってやろうか」
男の拳が俺の腹部に深くめり込んだ。
「──ッ!」
胃液が口から飛び出し、床に崩れ落ちる。
父親の権力も金もここには存在しない。
あるのは純粋な暴力と、俺が蒔いた因果応報の結末だけだった。
「響……あいつ、最初からここまで計算して……っ!」
薄れゆく意識の中で、俺はあの不敵に笑う響の顔を思い出していた。
奴は俺をただ破滅させるだけでなく、自らの手をも汚さずに叩き落としたのだ。
まるで俺の得意とする手口だった。
看守の冷ややかな足音が遠ざかっていく。
こうして、俺の刑務所生活は初日から地獄のスタートだった。




