第59話:復讐仲間
「日向議員捕まったらしいな」
「そう……。どうしてだろうね」
俺が聞くと、恋春はワザとらしく首を傾げた。
隠さなくても妃菜から聞いているので、彼女がしたことは知っている。
「なんで、龍生じゃなくて日向議員を? てか、よく裏金のこととか知ってたな」
「龍生くんはよく調子に乗るの。10年くらい前のことだけど、初めて出会った頃に、自慢げに話していたのを思い出したの」
「めっちゃ昔のことじゃん」
「でも、あの頃から大して出世もしてないのに、お金があるってことは──」
「黒だな」
具体的な方法についてはあまり聞かなかったが、日向議員の部屋から大事そうな資料の写真を撮って、マスコミに流したらしい。
恋春のしていること自体がグレーだが、マスコミの人に手柄をあげる代わりに、このことは隠して貰うようだ。
彼女への第一印象はフワフワとした明るい女の子だったが、今の彼女を見ていると、全てが覆されるような気分だ。
「日向家に入るお金がなくなれば、龍生くんは悪いことをしようにも、誰かを頼ることができなくなるでしょ?」
「頭いいな」
「えへへ、ありがと。褒められるのも、案外悪くないね」
そう言って恋春は微笑んだ。
◇
「龍生のこと、嫌ってるだろ」
「お前……平野か? 驚いた。サッカー部にいないから、別の高校にいると思っていたぜ」
「話を逸らさないでください」
「……そうだよ。俺は龍生を死ぬほど恨んでいる。法律がなければ、俺が殺しに行っていたくらいに」
先輩のこめかみがピクピクと痙攣した。
それは、龍生への恨みが具現化したように見える。
「一緒に……復讐しませんか」
「復讐? おいおい、正気か? アイツは日向議員の息子だぞ。目をつけられるとマズいって」
「ニュース見てないんですか? 日向議員は、先週逮捕されました」
「嘘だろ……」
先輩はすぐにスマホを弄る。
疑うような瞳は、徐々に光を取り戻す。
そして、口の端が僅かに吊り上がった。
「……いいぜ。俺も手伝うぜ」
「ありがとう。でも、足引っ張らないでくださいね」
「舐めるな。平野よりはちゃんとやるよ」
「それは心強い」
最後に、先輩と握手をして別れた。
彼は裏切らない。──なんとなく、そんな気がした。
「俺は準備をするか」
そう呟くと、公園に向かう。
背負っているナップサックの中には、中学生の頃履いていた、サッカーシューズが入っている。
一年間してこなかった。
体は思うように動かなかったが、想定済みだ。
残り二ヶ月──それまでに実力を取り戻す。
俺は、ここにはいない龍生を睨んだ。




