表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大好きだった彼女に浮気され、地獄に落とすまで。  作者: くまたに


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/59

第55話:龍生家に突撃

「ひー、くん…………」


 扉が開く。刹那、妃菜の震える声がこぼれる。

 しばらく間近で見ていないこともあり、雰囲気がガラリと変わっていることに気がついた。


「ごめん、俺──」

「いいの。私が言っていれば、こうならなかったから……」

「いや──違っ」

「だから、いいの。仲直り──それよりも大事なこと、あるでしょ?」


 どす黒い瞳のまま、妃菜は俺を真っ直ぐ見た。

 何故か手の震えが止まらない。

 ──怖い。今まで彼女に思った事のない感情が芽生える。


「仲直りやりも大事なこと……?」


 仲直りが最優先じゃないのか?

 クソッ……龍生のせいで、愛情も友情も、何もかもがわからなくなった。

 口の中に鉄のような味が広がる。


「決まってるでしょ。復讐よ。ひーくんを虐めたこと、私は絶対に許せない」

「待てよ。妃菜が復讐する理由は──」

「あの男のせいで、私たちの仲が壊れかけたのよ。私の手で、必ずに地獄に落とす」

「…………わかった」


 俺も腹を括る必要があるようだな。

 妃菜が俺のために怒ってくれたんだ。俺も、彼女に応えてあげないと。


「一緒に復讐しよう」

「うん。約束」


 妃菜は小さく笑う。

 同時に、彼女のスマホが震えた。


「予定よりも早かったじゃん……」

「誰だ?」

「恋春から。ひーくんも見てよ」


『今から龍生を裏切るよ』


 あの恋春がこうも簡単に龍生を裏切るだなんて。あまりにも意外で思わず口が開いた。

 俺たちの復讐が、目に見えてゴールに近づいている気がした。


     ◇


 通話──っと。

 私は妃菜にメッセージを送り、同時に通話を繋げた。

 龍生の父親は社会的な地位を持っている人だ。

 その息子の龍生も必然的に高い地位を持っている。彼が命令するだけで、多くの人が動くし、その人たちの人生だって簡単に変えてしまう。

 もしもを想定した時に、頼れる誰かに会話を聞いてもらうことが最善だと考えた。


「じゃ、今から龍生の家に行くから、妃菜はマイクオフにしていてね」

『ん。わかった』


 返事を聞いて、私は一応スマホの音量を最小にしてからポケットに突っ込んだ。

 妃菜は生まれて初めてできた友達だ。

 一度ぶつかってからは疎遠になっていたが、仲直りして、再び友達に成り上がれたことがとても嬉しかった。

 危ない橋は渡りたくないが、彼女と──彼女の大切な人を傷つけた分は働く。

 それが流儀ってやつだろう。


 怖くて手が震える。

 龍生のことを好きだったときは、何もかもが輝いて見えていた。

 でも、いざ彼に対立してみると、彼の権力が、笑顔の裏に隠された本性が怖くて仕方ない。


 ──ピンポーン。


 押してしまった。

 間を空けずに、家の中からバタバタと足音が聞こえる。

 これは、いつも龍生の家に勝手に押しかけた時に聞こえる音だ。


「こんな時間にどうかしたか?」

「ご、ごめんね。少しだけ用事があって……」


 そう言いながらも、心の中はめちゃくちゃだ。

 肝心の『用事』について、何も考えずにインターフォンを鳴らしてしまった。

 龍生は一瞬何かを企む表情を浮かべ、すぐにいつもの甘い笑みに戻る。


「用事か。だったら俺の部屋で話そう。温かいコーヒーを淹れてあげる」

「あ、ありがと」


 いけない。

 少しだけ嬉しいって思ってしまった。

 ついさっきまでは好きだった人だ。ちょっとした優しさに、ついつい()()()()()になる。


「今日はとびきりのコーヒーだ。いつもと違った苦味があるけれど、きっと恋春も気に入ると思うよ」


 彼の手が腰に回される。

 そして、この時の私は気がつかなかった。

 もうすでに、彼の手のひらの上で踊らされることに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ