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投稿が遅れてすません。
いつになるかわからないパメラの治療にメウルニは一人ではないと励ますようにパメラの傍らに座って手を取った。アウルムもだが、パメラも外見ではどんな状態なのか窺い知ることができない。手の中にある繊手を気遣って撫でた。
濃い金髪に縁取られたパメラの顔はすぐに目を覚ましそうだった。だが、メウルニの治療中ですら眼を覚ますどころか、呻き声一つ上げていなかった。
学生の頃よりも丸みがとれ、すっきりした顔立ちは日頃の苦労で頬がやつれたような気がする。
苦労の原因の一つに目を遣れば、目を凝らしてアウルムの様子を見ながら治療している様子にメウルニの気持ちは揺れた。こんなに真剣な表情で治療している人物が手を抜いて人を殺そうと思うだろうか、と。
しかし、ミアナの自分に向ける視線が何を意味しているかわかっているメウルニには、アウルムを治療するミアナの姿をありのままに受け入れることができなかった。
忠誠を誓ってくれている麾下の貴族たちですらパメラとの結婚をよく思っておらず、長男であるアウルムがいるから渋々認めている状態だ。ミアナが皇帝から愛人として与えられてからは、娘を愛人にと紹介してくる者もいる。いくら跡取りを産んだとはいえパメラよりも、麾下の貴族の娘のほうが妻にはふさわしい。パメラはメウルニが他の選帝侯の意見に同調する原因だと麾下の貴族たちに疎まれており、未だに孤立していた。
更にメウルニが学園で治癒術師を従者にすることすらできなかったことが余計に拍車をかけている。愛人は無理でも、従者くらいはという思いが、恋に浮かれて義務を果たせなかったメウルニへの不満をパメラへと向けられているので、パメラに対する風当たりはパメラとメウルニが貴族たちに誠実に接していても、一族が求めているようにミアナと子どもを作ろうとも和らぐことはなかった。
そもそも選帝侯の従者や愛人になっても、治癒術師は簡単にその座を降りることができる。選帝侯がクビにすることもできる。学園を卒業する前に従者や愛人になってもらうのは、学園以外で治癒術師と接する機会がほとんどなくなるからだ。社交でいくら交流しようとも、学園を卒業してから従者や愛人になる治癒術師は訳ありが大半であり、数年で帝都に戻るつもりの者ばかりだ。
つまり、学園で治癒術師に従者や愛人になってもらっていないことは、メウルニが選帝侯として仕える価値のない人物だと証明されたと言ってもいいことだった。勿論、メウルニの在学期間と被らない治癒術師もいるが、愛人なら宮廷内の学校を含めて上下六歳の治癒術師に拒否されたことになり、従者も上下四歳の治癒術師から信頼を得られなかったと見なされる。
メウルニが選帝侯になった時にミアナを皇帝から与えられたのも、メウルニ同様、学園生活や選帝侯になるまでに治癒術師の信頼を勝ち得なかった者に対する救済措置として選帝侯たちの間でまとめられた取り決めだった。
それが適応されたメウルニは、麾下の貴族から見れば頼りない選帝侯なのだろう。
その妻が他の選帝侯の麾下から来たとなれば、メウルニをたぶらかせて腑抜けにして言いなりにさせている悪女と忌み嫌われても仕方がない。
自分だけはどんな時でも味方でいる。それを伝えようと、メウルニはパメラの力無い手を握り締めた。
メウルニはたった一人でも妻の味方であろうと誓っていた。
「終わりました」
ミアナがアウルムの額から手を離し、永遠にも近い時間がようやく終わりを告げる。
「そうか。では、早く、パメラを」
(やっと、パメラの治療がしてもらえる。)
心が浮き立つメウルニだったが、メウルニに向けるミアナの表情は暗い。
「パメラ様に治療は必要ございません。パメラ様は既にお亡くなりになっております」




