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BANG BANG!!  作者: ホタル
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ご褒美の裏は?

 大変お待たせして申し訳ありません……!!そして今回急いで書きあげたので、文章荒いです、すみません……←いつものことですが。

 激昂して、ラルディアさんに怒鳴りかかった宰相。興奮したが叫んだことは一部始終を伝えると面倒くさい上にあたしへの叱責が四割だったこともあるので、略。

 まぁ簡単に言っちゃうと、このセルディアへ召喚される異世界人には、みんな何かしらすごい特技が備わっているそうだ。だけど今回召喚されたあたしは、このセルディアに必要なモノを持っていない、ラルディアさんが召喚を失敗したんだろう、とそういうことらしい。

 こちらの事情も考えず勝手に呼び出したのはそっちでしょう。なのに、自分達に必要ないからって即ポイ捨てだぁ?そんな我儘許されると思ってるあたりが、

「最高に最低ー」

「……何だと!?」

 あら、聞こえないつもりで言ったはずなのに聞こえちゃった?悪かったですねー、礼儀がなっていない小娘なもんで。

 激昂する宰相に対し、あたしはどんどん冷めてく。そもそも、余りにも身勝手なのはそちらだ。手違いをしたら誠心誠意謝って、相手の要望に沿うようやり直すのが基本だろう。何度か短期バイトしたことあるからこそ、こういう時の対応には人間性が出るとあたしは思う。ていうか納得しなくても何とかこなしなさいよ、宰相なんでしょ、社会人でしょ、仕事でやってるんでしょ!?

 こういう馬鹿なこと言うのが、国の政治のトップツーはってて良い訳?ちらりと横のラルディアさんを非難の意を込めて睨むと、苦笑された。

「宰相閣下。彼女には、確かに特別な知識を持っている様子は見当たりません。しかしそれはまだ我々の判断の及ばぬことだと考えます」

「ですがっ」

「過去の記録を見ても、訪れてしばらくは能力が分からなかった異世界人が多くいます。彼女もこちらに来てまだ慣れないことも多いでしょうし、しばらくは様子を見ても良いのではないでしょうか?」

 にこにこと、裏の見えない笑顔でラルディアさんは宰相を丸め込む。ラルディアさんの言葉に勢いをなくした宰相は、顔をものすごく歪めて不本意そうに椅子に深く座った。

 ……ていうか、最初から説得出来るんならやっておいてよ!!

 まじまじとあたしを見る宰相にも一睨みあげると、眉間の皺を深くして、今度はラルディアさんを睨みつけた。

「……まさか、ラルディア殿下」

「何でしょうか?」

「この娘に懸想したので、庇っている訳ではないでしょうね」

 ……なんつったこのおっさん。

 一瞬、耳が遠くなったのかと思った。

「殿下がこの娘の部屋で、夜を明かしたことは一部で噂になっております。昨日の対面式でもこの娘をしきりに気に掛けていたようですし。

 ……確かにセルディアは自由恋愛が認められておりますが、一国の王子殿下である貴方様がそのような娘を懐に入れるのは如何なものと思います」

 苦虫を噛み潰したような渋い顔で、宰相は言葉を並べたてる。冷静に言うつもりだったのかもしれないけど、徐々に語気が荒くなっている。あたしを見る目は、『なんでこんな女を!!』という憎々しげな目つき。

 全く以って不本意な噂が経っていることに、あたしも不機嫌顔。確かに一晩って大きいけどさ、それだってあたしのせいじゃないし、いやある意味あたしのせいなんだろうけど!!でもこんな顔だけ腹黒男あたしはごめんだぞ、他のお姉さま方に熨し付けてくれてあげましょう。元々あたしのものでもないけどね。

 いつまでもニヤニヤして宰相の言葉に応えようとしないラルディアさんの足を爪先で突っつく。すると笑みを一層深くして、ラルディアさんは頭を振った。

「いいえ、宰相閣下。もちろん異世界から一人やって来た彼女を支えたい気持ちはありますが、それ以上の想いはありません。私は未成年に触れるつもりはありませんし、その心配は無用です。昨晩のこと、対面式のことも同じ意見です」

 ラルディアさんのさっぱりした(しかし腹黒く優しく装った意見に)否定に、宰相は変な顔をした。その後、あたしをちらりと見て首を捻りつつ、小さく頷く。そして大きく咳払いし、ラルディアさんにもう一度向き直った。

「それで、これから三月どうなさるおつもりですか。野放しにして、宮廷内を勝手にウロウロされるのも困ります」

 ……何でこのおっさん、こうも喧嘩を売った感じの話し方しか出来ないの!!苛々と歯噛みしたくなるあたしを少し鼻で笑い、宰相はラルディアさんの答えを待つ。

 ラルディアさんはそれに対し、それはそれは美しく爽やかな笑顔で、答えた。

「ええ。しばらく、私の魔術研究の手伝いをしてもらおうと思っています」

 ……魔術研究、の手伝い?耳慣れない言葉に、一瞬ぽかんとする。

「過去ニホンから来た異世界人は二人だけでしたが、そのどちらもが一流の魔術師として名を馳せているということは、宰相閣下も御存じだと思います」

 間抜け面のままラルディアさんの言葉を聞いていると、聞き捨てならない言葉が飛び出した。

 日本から、二人やって来た?しかもどちらもが、一流の魔術師となった?

「――何それ!!」

 思わず、叫んでしまう。宰相は冷ややかな目であたしを見ているけれど、そんなのどうでも良い。ラルディアさんの服の裾を引っ張り、こちらを向かせる。ある程度あたしの反応を予測していたのか、変わらぬ笑みのままで彼は口を開いた。

「もう何百年も前の話だけどね。ミワコ達が住むチキュウには、魔法が存在しないんだろう?」

 その言葉に、大きく頷く。そう、地球には魔法なんて存在しない。その代わりに、化学が発達した訳なんだけど。なのに、何で魔術師になったり出来るの?

「これは推測だけど、生まれた時から変な癖を持たず、まっさらな状態で魔術を習ったからこそ、魔術師として高められたということもあるんじゃないかな。――それに一番の特徴は、多分、この髪だろう」

 そう言って、ラルディアさんはあたしの肩下の髪を掬い取る。そのまま、毛先に口付けを落とされて、反射的にその手を振り払い、無言で大きく距離を取った。四人は座れそうな広いソファだ、これ位は問題ない。

 そっと腕に視線を落とすと、鳥肌がぷつぷつ立っていた。背筋も寒いし、頭皮も痒い。そんなあたしを見て、ラルディアさんは艶っぽく笑った。寒いんじゃ!!

「昔から、黒は魔の持つ色だと言われている。それは多くの魔物が黒を纏っているからだけど、研究によって黒は魔力を溜め込む性質があることが分かったんだ」

 顰めっ面のあたしを置いて、ラルディアさんは勝手に説明を続ける。……え、ちょ、あんたがやらかした癖にフォローなしかい!!

「今では、見習いの魔術師達は、黒いローブを着用するのが暗黙の了解となっている。たかが色だと言われるかもしれないが、白いローブを着用した時と黒いローブを着用した時だと、人によっては魔力に三倍近い差が出る。

 けれど君達ニホンの人々は、わざわざローブなどなくても、その黒髪を持つ。日常的にあるものだから、子供の頃からたくさんの魔力が溜め込まれる。こちらでも、別の異世界でも、黒髪を持つ種族と言うのは実はとても少ない。そして黒髪の人々は、魔術分野で大きな成果を上げることが多い」

「へぇ」

 だけど聞いたことのない内容に、自然と興味が沸いた。色と魔力の関係、黒髪の人の少なさ。世界では黒髪と言うのはそう珍しいものじゃないけど、一歩異世界に飛び出せば珍しいのかもしれない。……いや、異世界に飛び出るってそうそうあることじゃないけどね。

 さっきの話でちょっと疑問に思ったことがあったので、関係はないけれど一応聞いてみる。

「ちなみに、魔力ってどうやって補充するの?何か特別なことするの?」

「いいや。前に、誰もが魔力を持っている、という話はしただろう?だから日々の生活――食事や睡眠――によって、魔力は補充される。手軽に回復出来る分、エネルギーと同じく、使わなかった分は体外へ排出されてしまう。

 けれどそれでは、非常事態に魔力が足りない時、困ってしまうだろう?だから使わなかった魔力を溜め込むため、大体の魔術師は呪い具を身につけている。僕の場合は、この指輪に使わなかった分の魔力が流し込まれているんだ」

 そう言って、二連の指輪を指差す。確かに、考えてみるとラルディアさんは魔法を使う時、常にその指輪をキーにしていた。ラルディアさんの魔法の源というか、それがこの指輪な訳か。

 自分が生きてきたのとは全く違う世界の話に、感慨深く頷いた。

 と、そこで大きな咳払いが目の前から聞こえる。ちらりと見ると、「下らない話してないでください、さっさと話を勧めたいんですが」と目どころか顔全体でそう言っている宰相。……まだいたのか、忘れてたよ。

 「失礼しました」とラルディアさんは笑い、宰相に向き直る。あたしもそれに合わせて、身体を前に向けた。

「彼女――ミワコは、ニホンからやって来ました。魔術の勉強をさせれば才能が出るかもしれません。それに、かの二人の魔術師が生前残した手記や研究を読み解くために、私はミワコにニホンの言語を教わりたいと考えています」

「……えーっと、つまり。あたしが、ラルディアさんに、日本語を教える、ってこと?」

「そうなるね」

 眩しい笑顔のラルディアさんを見て、後ろのメイドさんがまたもふらりとよろめいている。だけどあたしからすると、胡散臭い上に面倒臭い。日本語を教えるって、すんごくすんごく難しい。特に日本語の漢字、これが厄介。中国語の場合、漢字の読みは基本的に一つだけ。なのに日本語だと、『例』と『例えば』で意味は一緒でも、読みが全く異なるのだ。これは暗記してもらうしかないので、どうしてこうなるのか、なんて説明を求められてもあたしは答えられない。ただ、この場合はこう読む、としか言えない。

 平仮名にしたってやたらと曲線や似た形のものが多いし、それにカタカナも加わる。昔ハーフの子が近所に住んでいて、弟妹の面倒見るついでに勉強を教えてあげたけど、日本語に関しての質問にはほとんど答えられなかった。自国の文化ながら情けないとは思うけれど、出来ないものは出来ないのだ、仕方ない!!と開き直っている。

 当時を思い出して、盛大に渋る顔になっているだろうあたしを見て、ラルディアさんは「お礼はちゃんとするよ」とにっこり笑った。

 ……あなたのお礼って、嫌な予感しかしないの、気のせい?

「ミワコ、僕としか会話出来ないのとか、僕が魔法をかけないと他の人と会話出来ないの、面倒だと思わない?」

「それは心から!!」

 ラルディアさんの言葉に、きっぱり頷く。

 朝のメイドさんとか、自分の意思が伝えられないのは困る。そしてラルディアさんとしか会話出来ないと言うのもなかなかにストレス。苛々が募り過ぎると、人間大変だしね!!

 あたしの言葉にラルディアさんは、楽しそうに目を細めた。……あたしの言葉にその反応とか、本当にこの人、読めない。そして怖い。

 思わず寒気がして腕を擦ると、ラルディアさんはティーカップに注がれた冷めたお茶を口に含み、静かに笑った。

「今、言語疎通のための飴を作っているんだ。一日一粒舐めれば、こちらの言葉を話せるし、聞き取れるようになる。もちろん、ミワコが帰るまでの三月分をあげよう。どうだい?」

「……」

 普通に考えれば、まぁ確かに、美味しい条件だな、とは思う。

 でも、おかしくないか?ラルディアさんだぞ?すっかり過去の出来事みたいな気がするけど、今朝あたしから言質取るために脅して来たような腹黒だぞ?


 ――絶対に、裏がある。


 そう確信したものの、現状あたしは国賓と言う名の居候。もちろん勝手に呼び出したのは向こうだけど、しばらくお世話になるのに非協力的な態度でいるのも礼儀がなっていないと思う。

「……分かりました」

 躊躇いながら、頷いたあたし。とりあえず、ラルディアさんに注意すればいいのだ。上手く行けばこちらの人と意思疎通出来るし、もしかしたら異世界お友達も出来るかもしれない。メイドさん美人多いし、個人的にわいわいガールズトークとかしてみたい!!と、そんなヨコシマな願望を持つあたしに気付いたのか知らないけれど、ラルディアさんはとっても嬉しそうな、蕩けるような微笑みを浮かべた。

 そして、何事か小声で、呟く。それが何だかは、聞こえなかったけれど。

 ……あたしの背筋が寒くなったのは、別の原因だと願いたい。





「――こんな楽しそうな玩具、まだ手離せないな」

 今回、説明文がやたら多くてすみません。そして後半、すっかり影の薄い宰相。彼はまたちょこちょこ出て来ると思います。読んでいただいて、ありがとうございます!!

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