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エクソシスト:オリジンズ  作者: Syntax


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4/15

生存の代償

避けられない死がある。

起こる前から決まっている死もある。

そして――

選ばれる死もある。

生と死の狭間で、カイトにはもう差し出せるものは何も残っていない。

ただ一つを除いて。

問題は――

それで足りるのか。

世界が、息を止めた。


カイトの身体は師の手の中で力なく吊られていた。首は前に垂れ、呼吸はほとんど存在しないほどかすかだった。腕からは血が流れ、ゆっくりと、不規則な間隔で、ひび割れた地面へと滴り落ちる。


もはや抵抗はない。

意識もない。

抗う力もない。


限界に達した、ただの身体。


「……これが正しい判断だ」


師の声は静かだった。


そして――絶対的だった。


カイトの喉にかけられた指が締まる。潰すほどではない。だが、終わらせるには十分だった。


もう片方の手が持ち上がる。迷いはない。正確に、命が途切れる瞬間を測っている。


その背後で、イツキが前へと身を引きずる。


全身が痛みに震えている。


「……先生……!」


声が崩れる。


「お願い……!」


返答はない。


手が動く。



---


内側――


そこには地面がなかった。


空もなかった。


ただ、広がるのは――


圧し潰すような静寂。


カイトはその闇の中で膝をついた。呼吸が乱れ、身体は遠く感じるのに、同時に異様に重い。


「……お願いだ……」


声が割れる。


「……力をくれ……」


沈黙。


そして――


何かが動いた。


存在。


古い。


動かない。


玉座が現れる。


無から。


肉のようでありながら、それよりも遥かに古い何かで形作られたそれ。


その上に――


“覇者”。


見ている。


動かない。


「……また来たか」


その言葉は大きくも小さくもない。


ただ、存在する。


カイトは拳を握る。爪が掌に食い込む。


「俺は……死ぬ」


応答はない。


「殺される」


間。


「……それがどうした」


その一言は、刃よりも深く突き刺さる。


カイトは顔を上げる。


「……死にたくない」


覇者がわずかに首を傾ける。


「……お前の身体はすでに壊れている」


一歩。


「……あと数撃で――」


「……命乞いか」


カイトは歯を食いしばる。


「……なら直せ!」


沈黙。


そして――


低く、静かな笑い。


「……もう一度力を流せば死ぬ」


「……お前の身体では俺を保てない」


カイトはよろめきながら前へ出る。


「……どのみち死ぬ!」


声が割れる。


だが止まらない。


「このままでも死ぬ……!」


「お前の力を取れば……!」


「……生きられるかもしれない!」


間。


「……だから寄越せ」


沈黙。


今度は重い。


測っている。


裁いている。


そして――


覇者が立ち上がる。


「……哀れだな」


一歩。


「……だが、面白い」


手を上げる。


そして――


カイトの胸に触れる。



---


現実が砕けた。



---


「……何だと――」


師が止まる。


ほんの一瞬。


理解不能な何かが、彼の知覚をかすめる。


見えない。


だが――分かる。


玉座。


血に沈んだ戦場。


無数の亡骸の上に座る存在。


見ている。


古い。


絶対。


握りが揺らぐ。


わずかに。


「……あれは……何だ……」


イツキの声が震える。


だが師は答えない。


初めて――


躊躇した。


それだけで十分だった。



---


カイトの身体が激しく痙攣する。


黒い紋様が皮膚を走る。


ガラスに走る亀裂のように広がり、燃え、形を定めない。


背中が異様に反る。呼吸が乱れる。


音が漏れる。


叫びではない。


まだ。


もっと低い。


何かが壊れる音。


「……反応したか」


師が呟く。


再び冷静さを取り戻す。


「……関係ない」


手の力が強まる。


もう一方の手がコートへ。


細い札を取り出す。


異様な重み。


鋭すぎる縁。


「……ここで終わりだ」


一枚を掲げる。


そして――


カイトが消えた。



---


静寂。



---


手は空を掴む。


イツキの目が見開かれる。


「……何が……」


師はすぐには動かない。


視線はそこに固定されたまま。


やがて――


「……逃げたのではない」


間。


「……何かに奪われた」



---


五日後。



---


白い光。


機械音。


イツキが目を覚ます。


痛みが走る。


鋭く。


現実的に。


「……病院か……」


記憶が戻る。


戦い。


圧。


崩壊。


カイト。


身体を起こす。


「……どこだ」


沈黙。


「……知っていれば」


隅から声。


「……すでに殺している」


イツキの顎が強張る。


「……あいつは助けた」


返答はない。


扉が開く。


整った男。


「……当主からの伝言だ」


「……保護下に入れ」


イツキは視線を向けない。


「……今さらか……」


シーツを握る。


男は去る。


静寂。



---


別の場所。



---


闇。


押し潰すような。


生きている。


カイトが崩れる。


震える身体。


地面を掴む。


痛み。


過剰。


「……やめろ……」


叫び。


「やめろォ!!」


身体が歪む。


筋肉が軋む。


骨が引き裂かれ、組み直される。


「……何なんだよ……俺は……!」


声は消える。


戦場。


再び。


玉座。


覇者。


見ている。


カイトは這う。


「……助けてくれ……」


沈黙。


「……頼む……」


震える手。


「何でもいい……止めてくれ……!」


何もない。


呼吸だけ。


崩壊する身体だけ。


そして――


痛み。


さらに深く。


決定的に。


カイトは叫ぶ。


その叫びは――


止まらなかった。

お読みいただき、ありがとうございます。


ここまで読んでくださったなら、あなたはすでにカイトの世界に足を踏み入れています――そして、ここからさらに深く、暗くなっていきます。


この章は、新たな始まりを示すものです。ただの生存ではなく――その「代償」の始まりです。


カイトが選んだもの、彼に応えた存在、そしてその代価――それらの答えは、これからゆっくりと明かされていきます。


もし少しでも興味や不安、あるいは惹かれるものを感じていただけたなら、ぜひコメントやブックマークをしていただけると嬉しいです。それが思っている以上に大きな力になります。


そして、もし楽しんでいただけたなら、ダークな物語が好きな方にぜひ共有してください。


それでは、次の章でお会いしましょう。

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― 新着の感想 ―
前の章に比べると落ち着いた回でしたが、いい感じの繋ぎになってると思います。 一度リセットして、ここから新しい流れに入る感じがして、この先どうなるのか気になります。
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