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エクソシスト:オリジンズ  作者: Syntax


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3/15

黒き扉

この夜、すべては終わった。


家族も、日常も、そして――逃げ場も。


残されたのは、ただ一つの問い。


「復讐するのか、それともこのまま終わるのか」


答えを迫る声は、優しくもなく、残酷でもない。


ただ、真実だった。


そして少年は、その扉の前に立つ。


戻ることのできない境界線の前に。


これは、終わりの先へ踏み出す物語。


――その選択が、何を壊し、何を生むのか。


まだ、誰も知らない。

「これが――お前の復讐か?」


その声は響かなかった。空気を伝わることも、壁に反射することもない。ただ存在していた――部屋の中に、呼吸と呼吸の隙間に、そして彼の内側に。


カイトの身体は凍りついた。


食卓の温もり――皿のかすかな触れ合う音、穏やかに重なる声、両親の気配――それらは何一つ変わらず、そのままの形で止まっていた。まるで世界そのものが、彼の答えを待つために停止したかのように。


母は隣に立ち、微笑んでいる。

父は向かい側で、言葉の途中のまま止まっている。


何も動かない。

何も呼吸しない。


「……これは……何だ……?」


誰も答えない。


答えられるはずがない。


なぜなら――


それは現実ではない。


あるいは――


現実の上に、何か別のものが上書きされている。


黒い扉が、彼らの背後にあった。


壁を壊すことなく刻まれたそれは、まるで最初からそこに存在していたかのようで、ただ世界の方が今になってそれを思い出したかのようだった。


光を反射しない。

吸収もしない。


ただ――存在している。


周囲のすべてよりも深く、底のない穴のように、すべてを呑み込むように。


「答えろ」


圧が強まる。


外側ではない。


内側。


カイトの指が、テーブルの縁を震えながら掴む。呼吸は浅く、不安定だ。視線が扉と両親の間を揺れる。


「……母さん……」


反応はない。


「……父さん……」


動かない。


音もない。


ただ静止だけがある。


「お前は逃げた」


その言葉は力を伴わない。


だが――何よりも重く、彼に突き刺さった。


カイトの身体が強張る。


「……違う……」


「お前は置いていった」


喉が締まる。視界が揺らぐ。壊れかけた静寂の奥から、映像が割り込んでくる。母の手が離れていく。父が崩れ落ちる。レンが手を伸ばす――


「カイト――!」


「……やめろ……」


声が割れる。


「お前は自分を選んだ」


「違う!!」


叫びが空間を引き裂いた。


初めて、沈黙が破られた。


だが世界は応えない。


テーブルは揺れない。

両親も動かない。


ただ扉だけが、わずかに脈打つ。


まるで彼を認識したかのように。


「なら証明しろ」


呼吸が乱れる。爪が掌に食い込む。


「……どうやって……?」


扉が変わる。


開かない。


動かない。


だが――呼んでいる。


「復讐が欲しいか?」


その問いは、先ほどの言葉よりも深く沈んだ。感情でも選択でもない。


境界線。


越えるか――


それとも留まるか。


カイトの視線が落ちる。


記憶が再び押し寄せる。今度はより鮮明に。母の叫び。父の最後の抵抗。レンの伸ばされた手。


そして――


逃げた自分。


「……欲しい」


その声は小さい。


だが――絶対だった。


扉が再び脈打つ。


より強く。


「力が欲しいか?」


胸が大きく上下する。思考は拒絶し、警告を発する。だがその奥――恐怖と罪悪感のさらに下にある何かが、理性より先に応える。


「……欲しい」


沈黙。


重く。


見ている。


裁いている。


そして――


「自分を差し出すか?」


カイトは凍りついた。


初めて――


躊躇した。


「……自分を……?」


その言葉は曖昧ではない。


むしろ明確すぎる。


与えられる力ではない。

得る強さでもない。


奪われる何か。

失われる何か。


再び記憶が浮かぶ。今度はゆっくりと。母が振り返る。父が何かを言おうとする。レンが闇へ引きずられる。


「……もし、受け入れなければ……」


声が硬くなる。


「……このままだ」


弱いまま。


壊れたまま。


逃げ続けるまま。


「……なら――受け入れる」


その言葉が離れた瞬間――


すべてが崩壊した。


温もりが消える。

食卓が溶ける。

両親が光と沈黙の欠片へと砕ける。


そして――


扉が開いた。


外側へでも、内側へでもない。


現実そのものが、それに合わせて歪んだ。


足場が消える。


落ちるのではない。


動くのでもない。


存在していた場所そのものが、剥がされる。


世界が層ごとに剥離していく。


そして――


何も残らない。


次の瞬間――


彼は別の場所にいた。


最初に感じたのは、匂い。


鉄。


腐敗。


腐臭。


味として感じられるほど濃い。


次に――静寂。


空ではない。


平穏でもない。


破滅の後の静寂。


カイトは目を開けた。


世界は赤かった。


染まっているのではない。


沈んでいる。


無限に広がる戦場。


無数の死体。


人ではない。完全でもない。かつて生きていたことだけが分かる歪んだ形。


悪魔。


数え切れないほど。


すべてが――壊されている。


倒されたのではない。


殺されたのでもない。


消し去られている。


足元の血は動かない。


流れず、揺れず、ただそこに留まっている。


まるで血ですら諦めたかのように。


「……ここは……何だ……」


答えはない。


歩く。


意思ではない。


引かれている。


一歩。


また一歩。


死体の中を。


静寂の中を。


空間ではなく、記憶のような何かの中を。


中心に――


玉座。


作られたものではない。


置かれたものでもない。


形成されたもの。


肉で。


積み重ねられ。


押し潰され。


形作られたもの。


その上に――


何かが座っていた。


動かない。


見ている。


顔は見えない。


隠れているのではない。


認識できない。


だが分かる。


見られている。


「弱すぎる」


声。


重い。


古い。


届くのではない。


押し込まれる。


「脆すぎる」


膝が崩れそうになる。


だが――


「だが」


間。


「選んだな」


沈黙。


終わりのような沈黙。


それは立ち上がる。


その瞬間――


すべてが歪む。


同時に――


現実が弾けた。


ゼパルの動きが止まる。


カイトを掴んでいた手が、無意識に緩む。


「……何だ……」


痛み。


肉体ではない。


より深い。


視界が砕ける。


そして――


見える。


戦場。


死体。


玉座。


あの存在。


「……あれは……何だ……」


囁き。


背後から。


「これで……分かっただろう」


振り向く。


何もない。


だが――


カイトが立ち上がる。


ゆっくりと。


自然ではない動き。


傷口から黒い血管が広がる。生き物のように脈動する。


目が開く。


そこにあるのは――


古い何か。


腕が上がる。


そして――


何もないところから武器が形成される。


三叉槍。


重い。


絶対的。


現れたのではない。


宣言された。


イツキがかすかに目を開く。


「……何だ……それは……」


カイトが動く。


否――消える。


次の瞬間――


衝撃。


三叉槍がゼパルを地面へ叩きつける。地面が砕ける。さらに一撃。速い。視認不能。


ゼパルが血を吐く。


「……あり得ない……」


さらに打撃。


連続。


完全な圧倒。


「遅い」


声はカイトのものではない。


彼を通して響く。


再生が阻害される。


動きが成立する前に潰される。


攻撃。


無意味。


届かない。


何も変わらない。


そして――


掴む。


持ち上げる。


容易く。


「……お前は……何だ……」


答え。


静かに。


「お前は彼の肉を喰った」


一歩。


「だから理解できる」


震え。


恐怖。


本物の恐怖。


捕食者ではない。


獲物。


そして――


解放。


「……逃げろ」


沈黙。


「……何?」


「……逃げろ」


間。


「……伝えろ」


「……戻ったとな」


その瞬間――


歪んだ空間の端から何かが飛び出す。


異形。


ゼパルを掴み――消える。


「殺してやる――!」


静寂。


カイトの身体が崩れる。


三叉槍が消える。


血管が引く。


意識喪失。


空間が割れる。


現実が砕ける。


戻る。


街。


家。


何も変わらない。


何もなかったかのように。


カイトは倒れている。


壊れたまま。


かすかな呼吸。


イツキが呻く。


「……今のは……何だ……」


その時――


気配。


制御された重さ。


男が立っている。


見ている。


カイトを。


「……これが」


間。


「お前の見つけたものか」


「……先生……」


「彼が――」


「黙れ」


遮断。


男が近づく。


ゆっくりと。


カイトの前に立つ。


「……これは人間ではない」


間。


「器だ」


イツキの声が震える。


「……彼は選んでいない……」


応答なし。


男がしゃがむ。


首を掴む。


持ち上げる。


容易く。


「……再び目覚めれば」


「……人が死ぬ」


イツキが動こうとする。


できない。


「……やめろ……」


男は手を上げる。


迷いはない。


「……これが正しい」


世界が息を止める。


そして――


カイトの深部で


何かが――


動いた。

お読みいただき、ありがとうございます。


ここまで読んでくださったなら、この物語のどこかがあなたに届いたということ――それが何よりも大切です。


これはまだ始まりにすぎません。カイトが足を踏み入れた世界は、見えているものよりも遥かに深く、遥かに暗く、そして遥かに危険なものです。


もし少しでも、好奇心や不安、あるいは高揚を感じていただけたなら、ぜひレビューを残していただけると嬉しいです。短くても長くても、あなたの言葉は、この物語の進む方向に大きな影響を与えます。


そして、もし楽しんでいただけたなら、ぜひご友人にも共有してください。物語は人を通して広がっていきます。あなたが届けてくれる一人ひとりが、この世界をさらに大きくしてくれます。


この先も、まだ続きます。


どうか――これからも一緒に

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― 新着の感想 ―
今のところ一番インパクトのある章でした。変化の描写とか雰囲気の切り替えがすごく上手かったです。 この力もただの「パワーアップ」って感じじゃなくて、ちゃんと危険さがあるのがいいですね。 ここから物語…
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