第13話 啓示という名のわがまま
セシリアが、王宮でさらなる「啓示」を披露していた。
「陛下、昨夜また神のお告げがありました」
玉座の間で、彼女はいたって真剣な面持ちで王に告げた。
周囲の貴族たちは息を呑んで彼女の言葉に耳を傾ける。
「神はおっしゃいました。『王国の芸術文化は、もっと華やかであるべきだ』と。ですから、新しい劇場の建設と、芸術家たちへの支援が必要です」
王は不安げにうなずいた。
「そ、そうか……では予算は?」
エリザベス、今はセシリアとして振る舞う彼女の目が、一瞬だけ悪戯っぽく輝いた。
「もちろん、私が管理する新設の『芸術振興局』が担当いたします。予算は……現在の3倍ほどあれば十分かと」
「3倍!?」財務大臣が絶叫した。
「神のご意思ですよ」
彼女は涼しい顔で言い放った。
「反対されるなら、来年の収穫祭で雹が降るかもしれませんね」
その脅し。いや、預言に、王宮は静寂に包まれた。
誰も聖女の言葉に逆らえなかった。
会議が終わり、自分の部屋に戻ったセシリアは、ふと鏡の前に立った。
「ああ、神様……私、また悪いことをしてしまいました」
彼女はそう呟きながらも、口元には抑えきれない笑みが浮かんでいた。
人を翻弄し、思い通りに事を運ばせること、それは彼女が聖女だった頃には決して味わえなかった、刺激的で悪魔的な楽しみだった。
「でも……これも神のご意思かもしれませんね」
そう言って彼女は窓辺に歩み寄り、広がる王国を見下ろした。この視点、権力の頂点から世界を見渡す感覚は、聖女として民衆の中にいた頃には決して得られなかったものだ。
彼女の「悪事」は王国に意外な恩恵をもたらしていた。
彼女が強引に推進した劇場建設は、実際に多くの職人に仕事をもたらした。
芸術家への支援は、王国の文化水準を上げた。
彼女の「神の啓示」と称するわがままの数々が、結果的に王国を豊かにしていたのだ。




