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546:二十八番目のアレに似たやつ


 リネスと二人、第六層のマップをさらに精査してみる。

 俺たちの現在地は、一見、次の階層へ続く階段にほど近いが、その行手には厄介なガーディアン――オリハルコン製ゴーレムが鎮座している。そこを抜けないと階段には辿り着けない。


 ……が、よくよくマップを見ると、ゴーレムが守っている通路を大きくやりすごし、反対方向から階段へ辿り着く迂回ルートが存在している。


「ただ……相当大回りだよ。ボクらの今の位置からだと、めちゃくちゃ遠いね。これ、何日かかるかわかんないよ」


 リネスが呟く。

 もとより、この地下遺跡の広さ深さは半端なものではない。ビワー湖の地下付近から、エルフの森西部一帯、さらに旧王国地下にまで及ぶ、およそ二千里四方の広大な範囲を繋ぐ超巨大通路。それが三十七階層。この第六層だけでも、端から端までまともに踏破しようとすれば徒歩で数週間はかかるだろう。


 さらに、リネスのいう迂回ルートも、トラップ地獄という点では、ここまでと変わらない。いちいち自動で発動する各種トラップをかわしながら、数日かけて迂回ルートを進行する……考えるだけでウンザリしてくる。かつてボッサーン自身は、わざわざその迂回ルートを通り、ゴーレムをやりすごして下層へ降りたそうだが。だからゴーレムの対処法なんぞ知らんってわけだ。おのれボッサーン。

 だが一方、ゴーレムが待ち構えている直線路は、もうすぐそこだ。現在地から、そこを抜けて階段まで到達するのに、おそらく一時間とかかるまい。


「さーて、どうする? ボクはアークの判断に従うよ」

「どうもこうもない」


 俺はのっそり立ち上がった。もう決断は下している。


「そのゴーレムと対決してやる。まだ実物も見ていないうちから、勝ち目がないと決め付けるのは早計だろ。ともあれぶつかってみよう」





 ――半時間後。


「……こりゃ想像以上に厄介そうだ」


 俺は溜息まじりに呟いた。

 いま俺たちの眼前にそびえ立つ、巨大な人型の影。


 体高ざっと六、七メートル以上。その胴まわりも、たっぷり大型馬車一両分はありそうな幅と厚みを備えている。魔力球の光を受けて真紅に輝くそのボディー。材質は、おそらく噂のオリハルコン。その色合いといい輝きといい、いつか見たヒヒイロカネとまったく同じだ。

 体型はちょっとユーモラスな雰囲気。樽のごとき胴体に、丸太を組み合わせたような太くて長い手足がにょっきり突き出ている。頭部にはなぜか鼻のような突起がついてて、さらに黄色い両眼をギラリと光らせ、こちらを睥睨している。


 この体型は……あれだ。旧日本軍がひそかに製造していたという鋼鉄の人型兵器の二十八番目。あれにそっくり。あるときは正義の味方だったりあるときは悪魔の手先だったりするあれだ。リモコンはないんだろうか。

 この真紅のゴーレム、通路のど真ん中に当然のように仁王立ちしていて、俺たちが近付くや、両腕を振り上げて襲いかかってきた。ガギャオォーン! とか唸り声をあげながら。


 俺はリネスを後方へさがらせ、ゴーレムとの一騎打ちを試みた。両腕から繰り出される真紅の拳は、どんなカラクリか炎のオーラ的な燐光を帯びている。その動きも、外見からは想像もつかないほど軽捷で素早い。だが見えないというほどでもない――俺はゴーレムの初撃を難なくかわし、ガラ空きの胴体に右拳を叩き込んだ。

 ……びくともしない。鋼鉄すら砕く勇者の拳で、傷ひとつ付けられんとは。見た目だけでなく硬度のほうもヒヒイロカネと同等らしい。つうか俺の手が痛い。ひどい。


 それと、いま直接ぶっ叩いてみてわかったんだが。

 重い。


 このゴーレム、めちゃくちゃ重い。ヒヒイロカネは硬度の割にきわめて軽かった。なんせ卓球のラケットに使えるくらいだからな。だがオリハルコンはそうではないようだ。俺の一撃を喰らって小揺るぎもしないなんて、よほどの重量でなければありえない。それでいてゴーレムの動作自体は、かのヒヒイロアーム並みに軽快だ。おそらく単純な機械やカラクリの類でなく、何らかの強力な魔法で動きが制御されてるんだろう。そうでもなきゃ、こんな重い金属の塊が軽々と格闘なんてできるわけない。

 ふとゴーレムの足元を見ると、付近の石畳にヒビが走ってる。どんだけ重いねん!


 ゴーレムは風を切って両腕をぶんぶん打ちおろしてくる。これがまた速い!

 俺はいったん後退し、すかさず飛び蹴りを放った。樽型の胴のど真ん中に俺の右足を叩き込む。やはり、微動だにしない。


「こりゃ厳しい……」


 俺が呟くと、後ろで観戦してるリネスから声がかかった。


「ねーアーク。それ、すごく重そうだし、いっそ床をぶち抜いて落とし穴でもつくったら?」


 俺は首を振った。


「いいアイデアだが、残念ながら無理だ」

「え、どうして……」


 いまゴーレムが踏みしめてる足元を、俺はそっと指さした。ゴーレムの重みに耐えかね、通路の石畳の一部が割れ砕けている。

 その下から――真紅の金属の輝きがのぞいていた。


 どうやらこの近辺の床も、オリハルコン製らしい……。



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