633話 逃げる苗木を追跡なのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
俺たちは霊木の苗木を追って森に飛び込んだ。だがそこには道があり、逃げる霊木の後ろ姿があったのだ。
「お。運がいい。森の中じゃなくて道を逃げてくれているぞ」
「そうですねっ。……きっと森の中だと逆に逃げづらいんじゃないですかっ」
「そうね。森の中だと障害物が多いものね」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう。森の中だと立木の枝や根が邪魔になるのう」
「……あちこち……引っかかりそう……」
なるほど。
深い森の中に逃げ込んだ方が見つかりにくいのは事実だが、森の中だと茂った枝や低木、木々の根っこがあるので自分自身がそれらに引っかかって逃げる速度が遅くなるのを警戒して、走りやすい道を選んだのかもしれないな。
とにかくだ。
霊木の苗木はかなり高速で逃げている。根っこがニュルニュルと動かしての逃亡だが、それなりの速度なので油断すると振り切られそうだ。
「先に行きますっ。フセルコも着いてきてくださいっ」
そう発言するとメグミが加速した。そう言えばメグミは駆け足が速いのだ。そして声をかけられたフセルコも加速する。
フセルコは”天女の和服”という着物姿なのだが、神武高校の体育祭で見せた高速小走り走法でメグミを追う。
足の速い2人はみるみるうちに霊木の苗木に追いつきそうになった。するとそれに気づいたようで苗木ももっと加速するのであった。
そしてそれ以上に差は縮まらず、しばらく苗木の逃走劇が続くのであった。
ちなみに妖精のフローラだが俺たちの頭の高さで飛翔して着いてきていた。
「……まずいな。苗木の速さは予想以上だ」
「そうね。メグミとフセルコでも追いつけないものね」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう。厳しい展開じゃのう。どんどん村から遠くなるのう」
そうなのだ。
俺たちが走っている方角は霊木を必要としているヨンバーンメの村とは逆方向なのだ。なので今どんどん距離が離れてしまっている形だ。
苗木を捕獲できるまで、あとどれくらいの時間がかかるのかわからないが全力で走っていることから周りの木々がどんどん後方へと流れているのがわかる。
ちなみに俺たちの速度はかなり速い。
それはここが現実世界ではなくゲームの世界だからで、おそらく自転車以上の速度で走っているのは間違いない。
「あ。あの霊木の苗木、魔法を使おうとしてますよ」
俺の真横を飛ぶフローラが突然そんなことを口にした。
見ると左右の枝がわさわさと揺れているのがわかる。確かになにかをするための動作に思える。
「気をつけろ! 魔法を使うつもりのようだぞ!」
俺は前方を走るメグミとフセルコにそう伝えた。すると了解の合図のつもりなのか、メグミとフセルコが片手を上げるのが見えた。
そして次の瞬間だった。
苗木のすぐ後方、つまりメグミとフセルコの前方の土がぼこりと盛り上がり、塊となって後方へ飛んで来たのだ。
「「きゃあ~」」
突然の悲鳴が響き渡り、メグミとフセルコが宙に飛ばされるのが見えた。どうやら土塊をまともに食らってしまったようだ。
あまりにも突然の魔法だったので警戒していても避けられなかったのだろう。
「大丈夫か?」
俺とロキとフローラが追いついて、道に倒れたメグミとフセルコを介抱する。2人とも意識はあるがやや苦しげな表情だ。
「大丈夫ですっ。ただまともにお腹に食らってしまったので、ちょっと動けなかっただけですっ」
「……私も……大丈夫。……もう、動ける……」
どうやら2人は大したダメージは食らわなかったようだ。
俺は立ち上がり道の前方を見る。するとかなり距離が離れてしまったようで小さくなった霊木の苗木の走る姿が見えるのであった。
逃げ足が速いのです。(`・ω・´)∩
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