628話 気分だけ最強ヒヒなのです。
基本二日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
しかし氷の槍は最強ヒヒにぶち当たった後にすべて地面に落下した。
そして見ると最強ヒヒの毛皮には穴ひとつ開いてないのがわかったのだ。
「う~む。……これでも駄目ね」
そうなのだ。
体長を元の10メートルから五分の一の2メートルに小さくしても最強ヒヒはまだ強すぎたのである。
「なあ、秀子ちゃん。どうすんだ、これ?」
「いっそ別のモンスターと交換しちゃったらどうですっ?」
「それは駄目。シナリオから大きく逸脱する」
メグミの提案はすぐさまに秀子ちゃんに却下された。ボスキャラが強すぎるからといって別の魔物と入れ替えるのは秀子ちゃんには絶対に譲れない条件のようだ。
確かにボスキャラの最強ヒヒを取り替えてしまうと、今までのイベントでゴバーンメの里で里長のマリーさんから説明された内容と食い違ってしまう。
ゲームシナリオ的には大いなる矛盾が生じてしまうだろう。
「それならば、最強ヒヒをもっと弱体化させるしか方法はないんじゃない?」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう。それしか方法はないのう」
「……同意。……でないと矛盾する……」
ロキとアツメルコとフセルコがそう提案した。
すると、うむむと唸りながら再び秀子ちゃんは腕組みをして悩み顔になる。そしてしばらくの時間が経過した。
そしてようやくして秀子ちゃんはなにかを決意した表情になり、腕組みを解く。
「わかった。もうこうなったら最強ヒヒの大きさは妥協する」
そう言った秀子ちゃんはまたしても魔法陣の中に工具を持って手を突っ込んでなにやら調整を始めた。
すると最強ヒヒのサイズがまたもや変化した。今度は1メートルほどになった。もう俺たちの誰よりも小柄で、こうなったら実際のヒヒと大して変わらない大きさだ。
やがて作業を終えた秀子ちゃんは振り返った。なにか手応えを感じたのか充実した表情になっていた。
「じゃあ、メグミ。お願い」
「わかりましたっ。では行きますよっ。――ほいっ!」
――バリバリバリ!
メグミが掲げた長杖の先端に発生した稲妻がほとばしった。そして瞬時に小柄になった最強ヒヒに命中する。
――ドッカーン!
落雷の大音響が発生して最強ヒヒが雷に包まれる。そして次の瞬間には命中箇所に焼け焦げが残った毛皮が見受けられた。どうやらダメージが通ったようだ。
「うん。これで良し。……だけど最強ヒヒの名前の一部を変更する。これでは最強ヒヒは名乗れない」
そして秀子ちゃんは顔面前方に半透明の青色画面を浮かび上がらせるとそれに指を伸ばしなにやら操作を始めたのだ。
どうやら最強ヒヒのステータスを変更しているようだ。
「……じゃあ、私は元の場所に戻る。ゲームを楽しんで」
そう言い残した秀子ちゃんは魔法陣の中にポンと身を投じた。すると秀子ちゃんの姿は一瞬で見えなくなり、魔法陣もなにごともなかったかのように消え去るのであった。
「お。空が明るくなったぞ」
俺は周囲を見回した。すると秀子ちゃん登場直前に薄暗くなった景色が元の明るさに戻っていたのだ。
そしてそれは時の静止状態が解除され、時間の流れが元に戻ったことを現す。そしてその証拠に最強ヒヒが俺たちに向かった言葉を発したからだ。
「ワハハハ。愚かな挑戦者たちよ。我がゴバーンメの里を苦しめている”気分だけ最強ヒヒ”だ。どうだ恐れ入ったか」
そう言った自称”気分だけ最強ヒヒ”は俺たち見上げて威張り散らすのであった。なんとも迫力に欠けた自己紹介である。
「……ホントね。確かに名前が変更されているわね」
ウィンドウを開いたロキがそう呟いた。
俺も念のためウィンドウを開く。すると攻撃耐性も魔法耐性もほどんどない状態になっているのが確認できるのであった。
ずいぶんと小柄になったのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。




