なかよくけんかしな! S.ヒノワ
海王星でいきなりはじまった襲撃クエストは、プレイヤー側の勝利に終わる。敵を退けたあと、プレイヤーたちは浜辺に集まり祝勝会。
「やっぱ海だとつええなスターフィッシュ!」
「陸のEDAとは水中適正が違うばい!」
「水中でのスターフィッシュ系EDAはその性能が99パーセントの確率でツーランク上のEDAを越えると私のデータにもあるからね」
「にしても海王星のマステマってカニっぽいよな」
「カニ、喰いてえなぁ……」
そんなワイワイ楽しそうな喧騒の渦……からはちょっと離れた海岸の隅。沈む夕日を眺めながら、ふたりの女の子がなにかを話している。
片方は私のパートナー、アルミラちゃん。もう片方はそのお姉ちゃん、ミカさん。
波の音にかき消され、ふたりの会話は離れて見守るこちらにまでは聞こえてこない。けれどその雰囲気は険悪なものには見えなかった。
たぶん、上手くいってるはず……、と、ふたりが会話を切り上げてこっちへ戻ってくる。
「あ、アルミラちゃん、ミカさん、その……大丈夫だった?」
「大丈夫って、なにがです?」
「いや、その、色々と……」
「姉妹が会話していただけです。大丈夫もなにもありませんよ。ね、お姉ちゃん?」
「そうですね、アルミラ」
顔を合わせて笑いあう仲良し姉妹。いまのふたりに互いへの敵意は微塵もない。仲直りできたみたい。
「……よかった。よかったね、アルミラちゃん」
「……そうですね。迷惑をかけました。色々とありがとう、ヒノワ」
「私からもお礼を。ありがとうございました、ヒノワさん」
「あはは、私はなにも……」
「いいえ、あなたがいなければ私とアルミラはいつまでも仲違いを続けていたことでしょう。本当に感謝しています。なにかお礼をしなければ」
「お礼だなんて……」
「御礼の品、御礼の品……リアルのこの子のかわいい写真詰め合わせとかどうでしょうか?」
「えっ」
「なに渡そうとしてやがるんですか姉!?」
「やはりこういう時は心から良いと思える品を渡すべきかと……」
「他にあるでしょ他に!」
「妹以上のものがどこにあると!?」
「知らないけどありますよ色々と! ああもうそういうところが鬱陶しくて嫌いなんですよ!」
「嫌っ!?」
あ、ミカさんが心に致命傷を。
さらにアルミラちゃんがぎゃーぎゃーと言葉をぶつけ、ミカさんがどんどん落ち込んでいく姉妹喧嘩が繰り広げられる。
けれどその光景に、今までのような刺々しさはない。仲良く姉妹喧嘩できるくらいに、ふたりの仲はもう大丈夫。
悪くない結末に、私はほっと安堵して――、
(にちりんちゃんといっしょに遊んでも、つまんない)
――その時、嫌な記憶が私の思考をかき乱した。ずっと昔から、ずっと私の脳に住み着く、嫌な記憶が。




