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海獣大決戦 S.ヒノワ

 でっかいエイみたいなのが海の中をゆっくりと前進していく。私たちと同じ超大型機。たぶんボスキャラ、ケテルさんの機体だ。


 予想外の巨体にこちらは驚くしかない。驚いていたらあちらからの音声チャットが届く。


『……え、ASPの機体かな?』


「は、はい、そうです。そっちは……」


『ケテルだ。セフィラをやっている。この機体はホワイトマンタ。マステマ側の超大型機だよ』


「……まさか、そちらも超大型機を使ってくるなんて」


『私たちも進化するのさ。君たちのような最先端をいくプレイヤーに対抗するためにね。……そう、この機体は君たちを倒すためのもの! 少し予定は狂ったが落とさせていただく!』


 ケテルさんが吠えた直後、ホワイトマンタのあちこちからたくさんの魚雷が発射された! それらすべてが進路をこちらに変え、獲物を狙うピラニアの群れみたいに水中を突き進んでくる!


 レヴァイアサンは例によって機動性が低い。敵の攻撃を回避するほど素早くは動けない。


 なので、


「バリアフィールド!」


 いつもの輝く防護壁。魚雷の群れはレヴァイアサンを捉えることなく爆散。


 反撃。マニュアルによると、メドゥーザユニットの武器は『触手』である。


「えーと、テンタクルブレード、アタック!」


 触手が獲物に飛びかかるヘビのように敵へと伸びた。その先端にはハサミのように開閉する刃が備わっている。刃が敵の巨体に噛み付く。そのまま両断するべく挟む力を強めていく。


『格闘武装だと……!? 振り払え、ホワイトマンタ!』


 ぐるりと、ホワイトマンタがバレルロール。その回転についていけず、テンタクルブレードは振りほどかれてしまう。


 ……あちらにはバリアはないみたい。その代わり、こちらよりも動きが素早い。クラゲよりエイの方が高機動。


 その素早さを生かしてこちらの側面に回り込みつつ、ホワイトマンタは再び魚雷を撃ってくる。バリアフィールドで防御。


 こちらは再びあちらの巨体に噛みつかせるべく触手を伸ばす。けれど機動力でひらりと回避。超大型機だけで戦っていては埒が明かない、けれど。


『聞こえるかASP! こちらは生き残りのスターフィッシュ! 援護する!』


「他のプレイヤーさん! ……お願いします! 危なくなったらこちらの影に隠れてください!」


『了解! 頼りにしてるぜ!』


『魚雷が来たらASPのバリアの内側へ逃げ込むぞ!』


 この戦いは集団戦。味方がレヴァイアサンを中心に陣を整える。対し、あちらも、


『味方がいるのはそちらだけではない! こちらも配下のマステマを使えるのだから!』


 水底から出現したのはマステマのEDAモドキ。ザコキャラたちがボスキャラの周囲を守るべく集っていく。海の中、超大型機を中心とする集団同士の乱戦が幕開けた。


『モドキ風情がEDAに勝てると思うんじゃねえぞ!』


『ゼロ距離からの水中銃だ!』


『いってぇ挟まれた! 腕取れた!?』


 味方のプレイヤーがEDAモドキに阻まれている。私は彼らを援護するべくテンタクルブレードを操作。巨大な触手の先端は、小さな敵を一撃で噛み砕く!


『一撃で真っ二つとはおっかねえ!』


『敵じゃなくてよかった!』


『その調子で数を減らしてくれ! モドキを突破したら敵のデカブツに攻撃できる!』


「わかりました! レヴァイアサン!」


 テンタクルブレードに食われて数を減らすカニ風味な敵キャラたち。護衛陣形に穴が空き、そこを通って味方のEDAが進軍! ホワイトマンタの巨大なヒレに、味方が次々と取り付いていった!


『この距離なら魚雷も撃てねえだろ! 近接武装《ブレード》!』


『ぶっ刺せぶっ刺せ!』


『マンタの解体ショーじゃーい!』


『くっ!? 味方のマステマは何をしている……!』


 苦しそうなケテルさんの声。コバンザメみたいに機体にくっつくプレイヤー機を振りほどこうと、ホワイトマンタは再びのバレルロール。


『うおぉ引き剥がされる!?』


『アンカー撃ち込めアンカー! これでふっ飛ばされん!』


『アンカーショットなんて積んできてねぇうわぁぁぁぁ!?』


 その動きで半分ほどのプレイヤー機がふっ飛ばされてしまう。引き剥がされたところに魚雷の連射を受け、複数の味方が撃沈。


 けれどまだ半分のプレイヤー機がくっついたまま。彼らの攻撃は着実にホワイトマンタを破壊していく。レヴァイアサンも触手を噛みつかせ攻撃!


『うおぉぉぉここが正念場じゃああああ!』


『壊せ壊せ! 装甲剥がしまくれば水圧で圧潰するはず!』


『防御力が足りないとぶっ潰れる! 水中戦の仕様は恐ろしいのぉ~ッ!』


 損傷箇所から浸水しているのだろう、ホワイトマンタの全体からぼこぼこと泡が溢れ出す。あと一歩!?


 と、その時、なにかを悟ったようなケテルさんの声が。


『……少し設計が甘かったか。やはり付け焼き刃では上手くいかないな』


「ケテルさん……?」


 負けを覚悟したかのような声。……なのに、私は嫌な予感に背筋を震わせる。


『ASP、それと劣等種諸君。今回は私の負けらしい。だが、せっかく作ったホワイトマンタ、ただ壊されるだけというのも不甲斐ない。…………そちらの超大型機、道連れにさせてもらう!』


 次の瞬間、ホワイトマンタの動きが変わった。レヴァイアサンの周囲をぐるぐると回っていたのが一転、レヴァイアサンに向かってまっすぐ直進。


 ……突撃!? 特攻!? あの巨体で!? ホワイトマンタが一気に近づいてくる!


『うわぁ早ッ!?』


『アンカーが抜けた!? ふっ飛ばされる!?』


 全速力が生み出す水流で、プレイヤー機が次々と流されていく! テンタクルブレードで解体しきらないと……間に合わない!


『食らいつけ、ホワイトマンタ!』


 猛スピードで突っ込んできた巨体が、バリアフィールドに衝突! たくさんのENで支えられているバリアなのに、


「……もたない!?」


 巨体の重量にスピードをのせた体当たりは、こちらの限界を超える威力をしていた。


 バリアフィールドを突き抜けて、エイの形の超大型機が、ギロチンみたいにレヴァイアサンに突き刺さる。


「きゃあ!?」


 衝撃。鳴り響く警告音。機体各部のダメージ表示。


 無論、突撃してきたホワイトマンタもただでは済まない。体当たりの瞬間の衝撃で装甲がベコベコ、あちこち小爆発を起こしていた。


 致命的なダメージを受けた2機は、そのまま海底へと沈み始める。このままではまずい、大鴉を分離させて脱出しないと。


 メドゥーザユニットの『傘』から離れ、大鴉は水の中へ。


 ふと見れば、ホワイトマンタの中から、恐らくケテルさんのものであろうEDAが脱出していた。


 その機体のカメラアイと目が合う。


『……それが超大型機の本体か。見たところ、水中戦向けの調整は受けていないようだ』


「うぐっ」


 正解。大鴉には水の中で戦えるほどの水中適正はない。


 対して、


『……私のメタトロンは水の中で戦うための機体! ならばこの場でどちらが有利かは言うまでもない!』


 ケテルさんのEDA『メタトロン』が、水中戦用のナイフを抜刀しこちらへと向かってくる!


 大鴉の標準装備であるビームソードは水中で使えない! 武装転送システムで実体剣を呼び出さないと……間に合わない!?


『海王星で戦うならばその機体も水中用にしておくべきだったな、ASP! とらせてもらう!』


(ごめん、アルミラちゃん……!? また負けちゃうかも……!)


 私が心のなかでパートナーに謝った、次の瞬間。


『す、すきありぃ……っ!』


 突如、海底から昇ってきた黄色いEDAが、長い両腕でメタトロンをガシッと抑え込んだ!


『なんだと!?』


「いまの声……トモエちゃん!?」


『す、水中戦はトモエの担当……ですぅ! トライギガスG・ワタツミ! ギガスブリーカー!』


 ぐぐっと、トモエちゃんの操る機体『トライギガスG・ワタツミ』が、両腕に力を込めていく。


 合体した3機分のパワーが、メタトロンをだんだんとひしゃげさせていき、


『……超大型機のみを警戒しすぎたか』


 ぐしゃっと、圧殺! 絵面がえぐい!?


 ボスキャラにトドメを刺したるは、アリスガワ三姉妹の水中担当。


『……う、海に来てようやく活躍できましたぁ』


 普段の臆病そうな雰囲気に似合わぬおっかない攻撃で敵を破壊したトモエちゃんは、ホッとした様子でそんなことを呟くのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 水中戦闘用のロボットって癖が強いイメージ... ゾゴック、ジュアッグ、アッグガイ、御神体(ゾック)。 そしてクラゲ。···その発想は無かった。 アンカーはロマン! [一言] 流石、ゲッタ…
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