エイの干物 S.ケテル
私は配信を見守る視聴者へ向けて、説明ゼリフを口にする。
「プレイヤーが作り出したという超大型機の原理を応用し、私もセフィラ用の超大型機を完成させた。私ことケテルは海王星の管理者ということになっている。LDOの海王星はほとんどが海の惑星だ、ゆえに主な戦場は海の中。ならば私の超大型機は、水中戦向けに調整するべきだろう」
《確かにテルっちが陸で戦ってるとこあんまり見たことないなぁ》
《前に1回だけあった気がする。陸地は機体が重くてやってられないって嘆いていたよ》
《水中戦に慣れちゃうとね、どうしてもね》
《陸に打ち上げられた魚》
《干物》
「誰が干物だ劣等種諸君。……ともかくそうして完成したのがこの機体だ。見た目はご覧の通り」
『なんだあの深海のデカブツは!? ……エイ!? マンタか!?』
「……いま敵の劣等種が言葉にした通りだろう。デザインモチーフは翼のようなヒレを羽ばたかせるようにして泳ぐ怪魚、マンタだ。白いカラーリングだから……ホワイトマンタとでも名付けておこうか」
《ホワイトマンタか……オニイトマキエイの真逆だな》
《オニイトマキエイ?》
《たぶん日本でいちばん有名なエイだよ。その中でも全身が真っ黒い個体はブラックマンタと呼ばれている》
《なるほど、全身白ならホワイトマンタがちょうどいいな》
「そういうことだ。さて、このホワイトマンタは何度も言うように水中戦向け。機体には多数の魚雷発射管が備わっており……」
説明しながら、操縦桿を動かす。
ホワイトマンタの各部から放たれる魚雷、その数は一度の斉射で64発。水中を素早く動くスターフィッシュ系EDAを狙うため、追尾性能に優れたモデルを採用している。
スクリューを回し海の中を泳ぐ魚雷の群れ、追いかけるは敵の群れ。
『魚雷だ魚雷! 回避回避!』
『間に合わねぇ――――!?』
ぼん、ぼん、と。水中で発生した爆発が、大きな泡となって水底を彩る。
レーダーマップを見れば、いまのでかなりの数を落とせたらしい。
一方で生き残った敵機は、ホワイトマンタの下側へと回り込む。
『さっきの見たな!? アイツの魚雷は上と水平方向への発射数は多いが、下側は手薄!』
『下が弱点!』
『下から攻めればいいってことだな!』
確かに、魚雷による攻撃は上と横方向を狙ってのもの。
なぜなら下方向には別の武装があるから。
「爆雷投下」
ホワイトマンタの腹が開く。そこから投下され水底へと沈んでいくのは、ドラム缶型の爆発物。
『うわぁなんか降ってきた!?』
『……爆雷だ! 避けろ避けろぐええええええええええ!』
下方の敵は次々と降り注ぐ爆発物によって、水底の残骸となっていく。
『上も横も下もダメか!』
『どうする!?』
『どうしよう!?』
混乱する敵軍が、ちょうどホワイトマンタの正面、縦一列に並んでいる。
ならば第三の武装。
「トライデント・バスターレーザー砲。目標は正面の敵軍。放て」
ホワイトマンタの前面装甲が開き、その内側に隠されていたレーザー砲が光線を発射。
基本的に水中ではビーム・レーザーなどの光学兵器は威力が減衰するのだが、このトライデント・バスターレーザー砲はその威力減衰が抑えられた『水中でも使える光学兵器』だ。
暗い水底を明るく照らし、光の槍は一直線に敵軍を貫く。
『水中レーザー!?』
『バカなあああああ!?』
また複数の敵が海の藻屑と。
良い性能だ。これならプレイヤーを圧倒できる。ボスキャラらしく戦える。
不安があるとすればプレイヤー側の超大型機だが、あれは地上戦用の蜘蛛型。
水中から攻撃し続ければ問題なく倒せる。うん、完璧だな。
と、頷いていたら、
『……見つけた! 敵の、たぶんケテルさんの機体……ってでっかい!?』
何かが海に潜ってきた。
カメラアイをそちらに向けて確認。
大きな傘型の胴体から、複数の触手を伸ばす、機械のクラゲ。
それはプレイヤー側の超大型機であり、パイロットは私が参考にしたチームASPの女の子らしく……あれ?
「蜘蛛型じゃなくなってる!?」
想定外の機体がでてきたら、びっくりするしかないじゃないか……。




