1-騎士トハ-1
1-騎士トハ-1
「いいか、お前達。
過去の授業の復習となるが
この世界には何十、何百もの人種がいる。
だが、それを大きく分けてしまえばたったの二つだ。
"騎士"と、お前達・・・
俗に言う"民"だ」
"Knight"
"Privater"
教壇に立つ初老の男性教師
ガルシアは乱暴な字でそう書くと
肘から下が鉄の義手と化した左腕でゴン、と黒板を叩く。
「違いが分かるか?
ヘレン、言ってみろ」
シンと静まり返った教室の中、
指名された女生徒が立ち上がり、中指で眼鏡を押し上げる。
数人の生徒がくすくすと秘めた笑いを漏らすが
ヘレンは横目に流し、落ち着いた声色で話す。
「騎士は己の命を賭し、我々"民"を護ります。
凶獣、凶竜、その他のものから。
それは義務であり、彼らの使命です。
しかし、私達にはその義務も使命もありません。
騎士を目指すもの以外は、の話ですが。
・・・この中にはまずいないでしょう」
教室をぐるりと見回し、スカートを整えて椅子に腰を下ろす。
くすくすという笑いがいつしか野次に変わった。
が、ガルシアの一睨みで再び静けさを取り戻す。
「ありがとう、ヘレン。
確かこの中にも騎士を志望する者が数名いた。
新学期当初の話だが、今はどうだろうな」
彼は教本を手に教室の中を歩き回る。
誰に何を問うか。
生徒一人一人を品定めするかのようだ。
「ヘレンが言っていたな、
己の命を賭して民を護る。
お前達にその覚悟はあるか?
どうだ、アルベール」
と、一人の生徒の横で足を止める。
肩に置かれた義手は重く、
体温の通わないそれの冷たさはきっと服の上
からでも感じ取れるだろう。




