第7話:勝利のコレクション
それから街でコハルがショーウインドーで見て、「これほしい!」と言った服を何枚か買った。
うちにある女性用の服は母のものだけだから、コハルのは必要だと思ってたし、コハル本人が気に入ったもののほうがいいと思ったのもある。
正直、女性の服の金額なんて気にしたこともなかったし知らなかった。
俺は家の中だと基本的にジャージオンリーだし。
このワンピース一枚で欲しかったフィギュア2体は買える……!
とは思ったけど、さすがに口には出さなかった。それくらいの分別はある、
しかし……世の中の女性って大変なんだなぁ……。
両手いっぱいにコハルの服とか靴とか買って、帰路に就いた。
家に帰ると、まずコハルの為の部屋を整えた。
以前、客間として使っていた部屋だ。
悲しいかな、田舎の広い家には使っていない部屋も多い。
なので、コハルが使える部屋は十分にある。
「コハル、この部屋を使ってくれ」
コハルを案内したのは一階の南向きの和室だ。
「へえ、良い部屋ね!この床に敷いている草は何?」
「これは畳って言う、日本に昔から伝わる床に敷くものだよ」
「へえ……。これなら広い場所でも同じものを敷くことで同じ床にできるのね。勝利、この、タタミっていうの買えるの?」
「ああ、買えるよ」
確か市内に、畳の専門店があったはずだ。
「なら、このタタミを一つサンプルで買ってもらっていい?」
「サンプル?」
「そう。サンプルを商団に送って、これが売れそうな地域をリサーチしてもらうの。私はこれは売れると思うけどね!」
「へえ……じゃあ、現物サンプルだけじゃなくて、畳を実際にたくさん敷き詰めてる写真とかも添付したらどうだ?」
「あ、それいいわね!そういう場所ある?」
そうだな……。市内の寺にいけば写真撮らせてもらえるかもしれないな。
「あると思う。探しとく」
最初はネットで画像を拾えばいいかとも思ったが、コハルに実際に畳を敷き詰めているのを見せるほうが説得力も増すだろうからな。
俺、引きこもりのはずなのにな……。
昨日からやたら外に出ることばっかり考えてる。
そういやゲームもログインできてねえ。しまった連続ログイン逃した……!!
「ねえ、勝利」
「ん?」
「コーラちょうだい」
「はいはい」
昨日の帰りにスーパーで段ボールで買ってきたコーラを冷やしておいたものをコハルに差し出すと、嬉しそうに飲む。
うん、まあコーラは確かに美味いし、宇宙人も気に入ってるくらい良いものなんだろう。
「勝利、ちょっと大事な話があるんだけど」
コーラから口を離したコハルが真面目な顔になる。
「大事な話?」
「私の商売の仕入れのことよ。今日、あなたが街で私に色々買ってくれたでしょう?」
「まあ必要だし」
「それに仕入れの原資も貸してくれるって言ったし、まだ私、この星の貨幣価値が良く分かってないんだけど、ひょっとしてあなた、結構お金持ちなの?」
さて、どう答えるべきか……。
「……まあ、生活に困らない程度にはな。色々あって、金ならそれなりにある」
「そうなのね。じゃあ、ある程度借りても良いと言うこと?」
「無駄遣いは困るがな。まず畳。それからコーラをある程度纏めての資金くらいなら。それとサブカルは範囲が広すぎていきなりは決められない。だからまず、コハル。俺のコレクションを見てくれないか?」
「コレクション?」
「ああ。俺が持っているもので、コハルがこれは売れる、と思うものを教えてくれ。その仕入れや売り方を考えるところから始めよう」
コハルは頷いた。
それを見て、俺は立ち上がった。
二階の一室が俺のコレクション部屋だった。
壁に並べた棚には大好きな海の向こうのヒーローたちのフィギュア。
特に多いのは社長ヒーローのフィギュア。
他はニチアサのヒーローものが多い。
プラモデルもあるけど、これはまだ組み立てていないものが押し入れにたくさん入ってる。
「これ、昨日見たえいが、のヒーローね!」
「ああ。俺が一番好きなヒーローなんだ。自責の念から自らヒーローになるってところがすごく好きでさ」
「そうね。自ら退路を断って先に立つのは本当にかっこよかったわ」
「その覚悟が決まってるのが本当にかっこいいんだよ!」
ああ、好きなヒーローの話ができるのって嬉しいなぁ。
今度、叶くんともこういう話をしたいな。
「勝利、このふぃぎゃーは売れると思うけど、そのためには物語が必要よ」
「物語?」
「そう。あなたが私に見せてくれたえいが?あれをまずどうにか広めたいわ」
「そうだな、見た目のかっこよさはそこに込められた物語性を理解してもらうほうが惹きつけられる」
「そうよ。それは地球でもほかの星でも同じ。娯楽の中でも、えいがっていうのは素晴らしいわね。物語をこんなに密に見せてくれるなんて」
「じゃあ、仕入れは映画から?」
「ええ。でもそのためには、えいが、を見られる環境を作って売り込むことからだわ」
「ふむ……。なあ、コハル。宇宙に電気ってあるか?」
「でんき?」
「ああ。テレビに映像を映すためのエネルギー。テレビって言うのは、昨日映画を映していた機械だよ」
「……似たようなものがあるわ。ちょっと待って」
コハルが荷物圧縮装置から電気スタンドのような置き型の機械を出す。
「これね。こう使うの」
電気スタンドの上にある青いボタンを押すと壁に何やら書類のようなものが映った。
「会議の時に使うものなんだけど、何かを映す、ってことなら、これが割と宇宙では普及してるわね」
「音声は?」
「音声も載せられる道具もあるわ」
「なら、映像をどうにか宇宙向けにできれば出せそうだな」
「そうね」
「ちなみにコハル。実写とアニメと、どっちが宇宙では需要がある?」
「あにめ?あにめって何?」
「アニメチックで見ただろ?あのカラフルな絵が動く動画だよ。映画もいっぱいある」
「そうねえ、絵が動くのは需要があると思うわ。宇宙にはあまり物語を楽しむって言う娯楽がないのよ」
「じゃあ、宇宙の娯楽ってどんなのがあるんだ?」
そこがリサーチとしては大事なとこだ。
「そうねえ……」
コハルが教えてくれたのは、地球の娯楽とはまるで違うものだった。




