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特オタ、宇宙人と商売始めます ―どうも。宇宙人と仕事をすることになった引きこもりです―  作者: ねねこ


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第11話:会社を作ることになった

「叶くん」

「はい」

「売り上げに関してだけど、これを使えないだろうか」

 俺はテーブルの上のダイヤモンドの原石を持ち上げる。

「それはさっきできないって……!」

「普通の方法ならな。だから、こいつを宇宙から落ちてきた隕石から見つかったもの、として扱ったらどうかと思ったんだ」

「え?」

「コハル。隕石を一つ誘引して地球に落とすことは可能か?」

「できるわ」

「なら、いける。コハルが誘引して落とした隕石から、宇宙由来のダイヤモンドの原石が見つかる、それを政府のほうでオークションにかけてください。その売り上げを今後の運転資金に回します」

「ちょ、ちょっと待ってください、それをするなら、隕石から回収したという形の会社なり個人なりが必要になります」


 あ……。


 そうか、政府が見つけた、とするわけにはいかない。

 

 そんなもんが出てきたら、政府のやることに反対大好きな人たちの猛烈な反抗があるだろう。

「なら……個人よりは、会社のほうが良いですか?そうするなら、会社作るしかないですかね?で、そこから国に売る形をとる」

「ええ。その場合、代表になる気はありますか、勝利くん」

「俺!?」


 いや無理無理。

 俺、ただの棚ぼた財産家の引きこもりだよ?

 会社とかそんな難しいこと分からん。


「俺には無理です」

「でも絶対に必要ですよ?」

「叶くんは?」

「僕は公務員なので、副業禁止です」


 しまった、ここで躓くと思わなかった……。

 このダイヤを地球で合法的に金にする手段を思いついたと思ったんだけどなぁ……。


「……一つだけ、方法が」

 叶くんがぼそりと呟いた。

「何ですか?」

「引き受けてもらえるかは分かりませんが、宇宙対策課を去年退職した先輩がいます。ユーティ商団のことももちろん知ってます。そして今は無職で暇なはずです。

彼に新しく会社を作ってもらって、代表になっていただくというのはどうでしょう?」

「その方は、どんな人ですか?」

「僕たちと同類です」

「つまり……?」

「オタクです。特撮の」


 それは頼んでみるのもいいかもしれない……!

 だって、確実に俺たちの好きなジャンルのサブカルには明るいってことだし!


「それいいですね」

「じゃあ、早速連絡してみます」

 叶くんがスマホを出していきなり発信する。何度かのコールの後にスピーカーの向こうから声が聞こえた。

『藤島?』

「有川先輩、お久しぶりです」

『久しぶりだな、どうした?何か用か?』

「はい。ちょっと先輩に頼みがありまして……近々お暇ですか?」

『分かってんだろ?365日暇だよ』

「なら、先輩。ちょっと面白い真剣な遊びしませんか?」

『真剣な遊び……?』


 まって、それってあの作品のセリフじゃん。

 

「面白くて真剣な遊びこそ、俺たちの戦い方だ!」

 

 あのセリフもシーンもめちゃくちゃかっこよくて大好きなんだよ!

 叶君を見ると、ニヤニヤしてたので、あ、これ分かっててやったなってすぐ分かった。

 言い方は悪いけど、この「先輩」を釣るためのセリフだったんだなって。


『どこに行けばいい?』

「すぐ来れますか?」

『ああ』

「でしたら、埼玉県――」

 と淀みなく叶くんがうちの住所を言う。

『一時間で行く』

「はい」


 電話を切った叶くんが悪い笑みを浮かべている。

「勝利くん。この提案を絶対に先輩が断らないようにするための作戦を考えました」

「何?」

「それには、コハルさんの協力が必要です」

「私?」

「はい」

 叶くんが、スマホの画像を差し出す。

 それは先日のコスイベで叶くんが撮ったコハルの写真だった。

「コハルのコス写真が何か?」

「先輩、アガサが最推しなんですよ」

 ほほう。

「つまり、コハルにアガサのコスをしてもらうことで……」

「落としやすくなるはずです」

 俺はコハルを見た。

 何が起こっているのかまだよくわかっていないが、一時間で理解してもらわねば……!!


「コハル。大事な話をするぞ」

「うん、今の話でしょ?私は何をしたらいいの?私が何かすれば、仕事がしやすくなるのは何となくわかったわ」

 

 理解が早い。

 さすが凄腕宇宙商人。


「コハル、この間、この服着ただろ?」

 叶くんのスマホをコハルに差し出してみた。

「あ、うん、覚えてるわ」

「この服をもう一度着てほしいんだ、今から来る人の前で」

「それがどう私の商売につながるの?」

「うん、簡単に説明する」


 それから叶くんと二人で、地球側にユーティ商団と直接取引できる窓口になる会社を作る。政府に骨折りをしてもらうので、そのための人材を確保する。

 その人はこのコハルがやったアガサと言うキャラの大ファンなので、口説き落とすために、コハルにアガサのコスプレをもう一度してほしい、と頼んだ。


「……話は分かったわ。それならやるのはいいけど、やるならもう少し凝りたいわね。このアガサってキャラの細かいところを教えてくれる?」

「アガサは、トレイックっていう特撮のヒロインなんだけど、正体は宇宙人で、地球に落ちて来たところをゲーセンで働く主人公のカズマに助けられるんだ。で、アガサを追ってきた悪者、宇宙マフィアなんだけど、そいつと主人公は戦うことになる。アガサを護るためにアガサからパワードスーツを借りてね」

「それ、私と勝利みたいね」

「俺も思った。俺、トレイックのカズマみてえって」


 カズマはポンコツだけど明るい笑顔の優しい男で、幼いころの俺はカズマみたいになりたいって思ってた。


「で、アガサを守って戦っているうちに仲間が増えて、ゲーセンが基地になって、最終的に5人で戦うことになる。後半になってからが熱いんだけど、アガサの記憶が戻って、実はアガサは宇宙マフィアの天才メカニックで、利用されるのが嫌になって逃げだしたところを追いかけてこられてたんだ。自分が戻れば、カズマたちをもう危険に晒さなくて良くなるって思って戻ろうとするんだけど、本当は戻りたくない。そんなアガサにカズマが言うんだよ。『ゲーセンは真剣に遊ぶ場所だって言っただろ?で、アガサから見たら、地球はゲーセンみたいなもんだ。なら地球で、面白くて真剣な勝負をするのがアガサや俺たちの戦い方だ!』って」

 

 幼いころの俺は、ゲーセンに行ったらカズマやアガサに会えるかもしれないと思って両親にゲーセンに行きたい!って何度も強請ったけど、一度も連れて行ってもらえなかった。

 

 アガサはそれでトレイックの仲間に改めてなってから、パワードスーツの改良をしてみんな大好き後半パワーアップの展開に繋がるんだ。

 アガサは最後まで戦うことはなかったけど、いつでもみんなを見送って迎えて、自分にできることを必死に取り組む可愛いメカニックだった。

 カズマにもらった黄色い花柄ワンピースがすごく似合っていて……。

 最後のお別れの時までずっと着ていた。


「これがオリジナルのアガサです」

 叶くんがスマホの画面をコハルに見せる。

「へえ、かわいい」

 

 だろ?

 アガサは可愛い、本当に可愛い。

 たぶん、俺たち世代の初恋泥棒の一人だ。


「じゃあ勝利、あの服貸して。あと、ちょっとメイクも変えるわ」

「メイク?うちに化粧品はないぞ?」

「自分の持ってるわよ」

 コハルが圧縮装置からメイクボックスらしきものをテーブルの上に出す。

「叶、ちょっとその画像出しておいてね」

「あ、はい」

 叶くんが、コハルが画像を見やすいように立てて持つ。

 「……ふんふん、唇の色はこれか……」


 メイクボックスの中身は俺にはさっぱり分からないが、コハルがアガサの画像を見ながら、鏡を覗き込みながら顔を作っていく。

 アガサの唇は黄色なんだよな。

 で、アイシャドウが金色で、それがまた似合うんだ……。


「ワンピース、あっちの部屋に用意してくるな」

「お願い」


 俺は乾いた洗濯物からワンピースを出してくると、コハルが使っている部屋にハンガーで用意してきた。

 リビングに戻ると、コハルのメイクはバッチリ完成していて、叶くんが感動でテーブルに突っ伏しているところだった。

 いや、でも分かる。

 メイクまで完成したコハルは完全にアガサだった。


「勝利、服の用意は?」

「部屋にしてあるよ」

「ありがとう、着替えてくる」


 そして着替えて戻ってきたコハルはメイクも相まって完全にアガサだった。


「コハルさん!写真撮らせて!」

「どうぞ」

「ああ、トレイックの基地をあとで背景に合成しよう……!!」


 さすがだ。

 と、二人でコハルの写真を撮っていると、インターフォンが鳴った。


「僕が迎えてきます。コハルさん、そこの縁側の椅子に座って、向こうを向いていてください。僕がコハルさんを呼んだタイミングで振り返ってください」

「分かったわ。演出が大事ってことね?」

「そうです!勝利くん、そこの演出任せていいですか?」

「了解」


 俺はすぐ、叶くんの意図を読み取った。

 アガサは椅子から立ち上がる時、ちょっとした癖があるんだ。

 その動画を急いでコハルに見せると、一回で理解してくれた。


 そしてすぐに、廊下の向こうから二つの足音が聞こえて来た。

 

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