第三十七話 会えない夜
## 第三十七話 会えない夜
その週は、
お互い忙しかった。
かなは仕事が長引き、
ゆうきも残業続き。
《今日ごめん、
遅くなりそう》
そんなメッセージが、
少しずつ増えていく。
最初は、
仕方ないと思っていた。
実際、
責める理由なんてない。
でも。
夜になるたび、
かなはスマホを見る回数が増えていた。
通知は来ない。
なのに、
気づけば画面を開いてしまう。
部屋は静かだった。
テレビもつけていない。
窓の外では、
遠くを走る車の音だけが聞こえている。
かなはベッドへ寝転がりながら、
ゆうきとのトーク画面を見る。
少し前までは、
毎日のように会っていた。
夜コース。
海沿い。
コンビニ。
助手席。
それが急に遠くなった気がした。
《お疲れさま》
かなが送る。
数分後。
《かなも》
《最近全然会えてないね》
その文章を見て、
かなの胸が少し痛くなる。
会いたい。
でも。
その言葉を送るのが、
少し怖かった。
重いって思われたくない。
忙しいゆうきを困らせたくない。
そう考えるほど、
指が止まる。
その時。
《落ち着いたら、
夜コースしよう》
ゆうきから続けて送られてくる。
かなは小さく笑った。
嬉しい。
なのに。
その“落ち着いたら”が、
少しだけ遠く感じた。
スマホを胸の上へ置く。
天井を見る。
会えないだけなのに。
こんなに寂しくなるなんて、
思っていなかった。




