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あの日、あの場所で見た星空  作者: ともり。


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第三十五話 近すぎる距離

## 第三十五話 近すぎる距離


「ごめん。」


ゆうきが小さく言う。


かなは窓の外を見たまま、

小さく首を横に振った。


「謝ってほしいわけじゃないの。」


本当にそうだった。


仕事なのはわかってる。


忙しいのも知ってる。


だから。


困らせたいわけじゃない。


ただ。


少しだけ、

自分の気持ちをわかってほしかった。


静かな沈黙が落ちる。


赤信号。


海沿いの道路。


遠くで、

波の音が聞こえていた。


「……かな。」


ゆうきが前を向いたまま言う。


「最近、

かな優しいから。」


かなは少し眉を寄せる。


「え?」


「無理してるの、

気づけなかった。」


その言葉に、

かなは小さく息を止めた。


「かなって、

嫌なことあっても、

大丈夫って言うから。」


かなは何も言えなくなる。


たしかに。


昔からそうだった。


相手を困らせたくなくて、

先に飲み込んでしまう。


「でも。」


ゆうきが続ける。


「ちゃんと言ってほしい。」


かなはゆっくり視線を落とした。


胸の奥が、

少しだけ苦しい。


好きだから。


嫌われたくない。


重いって思われたくない。


そう考えるほど、

言葉が出なくなる。


「……難しいよ。」


かなが小さく呟く。


「好きな人には、

余計に。」


その瞬間。


車の中が、

静かになる。


かなは少しだけ後悔した。


重かったかもしれない。


でも。


ゆうきは困ったように笑って、

小さく言った。


「それ、

俺も同じ。」


かなは思わず顔を上げる。


ゆうきは少し照れたように、

ハンドルを握り直した。


「だから、

かなが何考えてるかわからないと、

普通に不安になる。」


その言葉に、

かなの胸が静かに熱くなる。


近づいたからこそ、

不安になる。


好きだからこそ、

怖くなる。


かなはようやく、

恋ってそういうものなのかもしれないと思った。


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