第三十一話 当たり前みたいに
## 第三十一話 当たり前みたいに
付き合い始めてからも、
二人の時間はあまり変わらなかった。
海沿いを走って。
コンビニへ寄って。
星を見て帰る。
ただ。
隣にいる理由だけが、
少し変わった。
「かな、
今日仕事長かった?」
助手席へ乗り込んだ瞬間、
ゆうきが聞く。
かなはシートベルトを締めながら、
小さく息を吐いた。
「ちょっとだけ。」
「顔疲れてる。」
「そんなわかる?」
「わかる。」
かなは少し笑う。
その時。
「はい。」
ゆうきがコンビニ袋を差し出した。
「え?」
「今日、
絶対甘いやつ欲しいと思った。」
中を見る。
かながよく飲むカフェラテと、
小さなチョコが入っていた。
かなは思わず吹き出す。
「なにこれ。」
「疲れてる時セット。」
「勝手に作らないで。」
二人で笑う。
車は静かに走り出した。
窓の外。
夜景が流れていく。
かなはカフェラテを飲みながら、
ふと横を見る。
片手でハンドルを握るゆうき。
信号待ちで、
小さく欠伸をしている。
そんな何気ない姿を見ているだけで、
少し安心する。
「かな。」
「ん?」
「今週、
休み合う?」
かなは少し考える。
「日曜なら。」
「じゃあ、
少し遠く行く?」
その言葉に、
かなは少しだけ笑った。
「また夜コース?」
「たぶん。」
かなは窓の外を見る。
暗い海。
静かな夜。
その全部が、
少しずつ“当たり前”になっていく。
かなはそのことが、
少しだけ嬉しかった。




