第三十話 夜空の下で
## 第三十話 夜空の下で
「付き合ったってことで、
いいんだよね。」
ゆうきが少し照れたように言う。
かなは思わず笑った。
「今さら確認します?」
「ちゃんと言葉にしたかった。」
その言い方が、
ゆうきらしいと思った。
車は静かな海沿いを走っている。
窓の外。
夜の海が、
月明かりで小さく揺れていた。
かなは助手席で、
そっと窓に寄りかかる。
不思議だった。
少し前まで、
ただの知らない人だったのに。
今は、
隣にいることが自然に感じる。
「りゅう、
絶対うるさいですよね。」
かなが笑う。
「たぶん朝まで騒ぐ。」
「想像できる。」
二人で小さく笑った。
その時。
ゆうきが車をゆっくり止める。
「え?」
「ちょっとだけ。」
ドアを開ける。
夜風が、
静かに流れ込んできた。
目の前には、
広い夜空。
波の音だけが、
遠くで聞こえている。
かなは空を見上げる。
星が綺麗だった。
あの日みたいに。
「……ここ。」
かなが小さく呟く。
最初に出会った、
あの場所だった。
ゆうきは少し笑う。
「なんとなく、
来たくなって。」
かなは静かに夜空を見る。
あの日。
名前も知らなかった。
ただ、
少しだけ目が合っただけ。
なのに。
あの夜を、
ちゃんと覚えていた。
ゆうきが隣へ来る。
肩が少し触れる。
「かな。」
名前を呼ばれる。
かなは小さく顔を上げた。
「これからも、
夜コース付き合って。」
かなは思わず笑ってしまう。
「長そうですね。」
「たぶん。」
夜風が、
静かに二人の間を抜けていく。
かなはもう一度、
星空を見上げた。
あの日より。
少しだけ、
世界が綺麗に見えた。




