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あの日、あの場所で見た星空  作者: ともり。


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第二十二話 名前を呼ぶ

## 第二十二話 名前を呼ぶ


「着きました。」


ゆうきが車を停める。


かなは窓の外を見る。


見慣れた駐車場。


なのに。


今日は少しだけ、

帰るのが寂しかった。


「……早かったですね。」


かなが小さく呟く。


ゆうきはハンドルに手を置いたまま、

少し笑う。


「かなさん、

帰り道毎回それ言いそう。」


「言わないです。」


「たぶん言います。」


かなは思わず笑った。


静かな空気。


でも、

その空気が好きだった。


その時。


「かな。」


ゆうきが小さく呼ぶ。


かなは一瞬、

息を止める。


今までずっと、

“かなさん”だった。


名前だけで呼ばれたのは、

初めてだった。


「……はい?」


かなの声が少しだけ上ずる。


ゆうきは少し照れたように笑った。


「パーカー、

今度返してください。」


かなは思わず吹き出した。


「びっくりした。」


「なんで。」


「急に名前呼ぶから。」


ゆうきは少し黙る。


それから。


「嫌でした?」


かなは小さく首を横に振った。


嫌じゃない。


むしろ。


胸が少しだけ、

うるさかった。


「……じゃあ、

ゆうきさんも“さん”いらないですよ。」


かながそう言うと、

ゆうきは少し驚いた顔をする。


数秒。


静かな沈黙が落ちた。


それから。


「かな。」


もう一度、

名前を呼ばれる。


たったそれだけなのに。


かなの胸は、

少し苦しくなるくらい熱かった。


窓の外。


夜風が静かに吹いていた。


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