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あの日、あの場所で見た星空  作者: ともり。


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第十九話 海の見える場所

## 第十九話 海の見える場所


「今日は、

ちょっと違うとこ行きます。」


海沿いの道を走りながら、

ゆうきが言った。


「違うところ?」


「前より、

もう少し静かな場所。」


かなは窓の外を見る。


道路の向こう。


暗い海が、

月明かりで少しだけ光っていた。


「ゆうきさん、

ほんと夜詳しいですね。」


かなが笑う。


「夜しか出歩かないので。」


「吸血鬼ですか。」


「近いかもしれない。」


二人で小さく笑った。


その空気が、

かなには心地よかった。


車は街灯の少ない道へ入っていく。


時々、

対向車のライトだけが横を通り過ぎた。


静かだった。


でも、

嫌な静けさじゃない。


むしろ。


この時間が、

終わってほしくないと思ってしまう。


数分後。


車がゆっくり止まる。


「着きました。」


ドアを開けると、

潮風が静かに流れ込んできた。


目の前には、

暗い海。


波の音だけが、

静かに響いている。


「……綺麗。」


かなが小さく呟く。


「ここ、

あんまり人来ないんです。」


ゆうきはガードレールへ軽くもたれた。


かなも隣へ立つ。


少しだけ距離が近い。


でも、

嫌じゃなかった。


「疲れてる時、

海来たくなるんですよね。」


ゆうきが静かに言う。


かなは夜の海を見つめたまま頷く。


「わかります。」


風が吹く。


かなの髪が揺れた。


その時。


「寒くないですか。」


ゆうきが小さく聞く。


「少しだけ。」


すると。


「これ使います?」


後部座席から、

黒いパーカーが差し出される。


かなは目を丸くした。


「え、

でも。」


「風邪ひくので。」


かなは少し迷ってから、

そっと受け取る。


柔らかい匂いがした。


それだけなのに。


胸の奥が、

少しだけ騒がしかった。


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