第十八話 助手席の距離
## 第十八話 助手席の距離
待ち合わせ場所は、
前と同じ海沿いのコンビニだった。
かなが着くと、
黒い車はすでに停まっていた。
ヘッドライトが、
静かな駐車場を照らしている。
かなは少しだけ深呼吸をする。
今日は、
二人きり。
そう思うだけで、
妙に緊張した。
助手席の窓が開く。
「こんばんは。」
ゆうきが小さく笑った。
「こんばんは。」
かなも笑い返す。
「疲れてません?」
「ちょっとだけ。」
「じゃあ、
今日は軽めの夜コースで。」
かなは思わず笑った。
「軽めとかあるんですね。」
「あります。」
ゆうきが真面目な顔で頷く。
その空気が少しおかしくて、
かなの緊張が少しだけほどけた。
助手席へ乗り込む。
ドアを閉めると、
静かな音楽が耳に入ってくる。
前より、
少しだけこの空間に慣れていた。
「飲みます?」
ゆうきがコンビニ袋を差し出す。
「え。」
「疲れてる時、
甘いの飲むって言ってたので。」
中には、
カフェラテが入っていた。
かなは少し驚いて、
それから笑う。
「覚えてたんですか。」
「まあ。」
ゆうきは少し照れたように前を見る。
その横顔を見ながら、
かなの胸が少しだけ熱くなる。
車は静かに走り出す。
窓の外。
夜の海が、
暗く広がっていた。
「今日は星見えそうですね。」
かなが呟く。
「ですね。」
ゆうきはハンドルを握ったまま、
小さく笑う。
赤信号で車が止まる。
静かな沈黙。
でも、
気まずくない。
かなはふと、
窓に映る助手席を見る。
この場所が、
少しずつ特別になっている。
そんな気がした。




