第十五話 眠れない夜
## 第十五話 眠れない夜
「送ります。」
かなの車の隣へ停まりながら、
ゆうきが言った。
「ありがとうございます。」
かなはシートベルトを外す。
時間は、
もう深夜二時を回っていた。
思ったより、
ずっと長く一緒にいた。
なのに。
時間が経つのは、
あっという間だった。
「今日はありがとねー。」
後ろから、
りゅうが窓を開けて手を振る。
「こちらこそ。」
かなも笑って手を振り返した。
その時。
「かなさん。」
ゆうきが小さく呼ぶ。
かなが振り向く。
「また、
夜コース行きましょう。」
かなは少し驚いて、
それから小さく笑った。
「……はい。」
それだけ。
たったそれだけなのに。
胸の奥が、
少しだけ熱くなる。
車を降りる。
夜風が、
静かに吹いていた。
「じゃあ、
おやすみなさい。」
「おやすみ。」
ドアが閉まる。
黒い車は、
ゆっくりと夜道へ消えていった。
かなはそのテールランプを、
なんとなく見送る。
完全に見えなくなってから、
小さく息を吐いた。
部屋へ戻る。
メイクを落として、
ベッドへ座る。
静かな部屋。
でも、
頭の中は妙に騒がしかった。
スマホを見る。
通知は来ていない。
なのに、
なんとなく画面を開いてしまう。
その時。
《今日はありがとうございました》
ゆうきからだった。
かなは思わず笑う。
《こちらこそ》
《楽しかったです》
送信する。
数秒後。
《よかった》
《また、
星綺麗な日に行きましょう》
かなはスマホを見つめる。
胸が、
少しだけ苦しい。
たぶん。
自分が思っているより、
この夜を気に入ってしまっていた。




