84. 放課後の生徒会室
その時、常磐さんは初めて難しい顔をすると、その場で少し何か考え込んだ。
「……うん。まあ、それについては……残念だけど君達に話すことはできないな。なぜかというと……ほら、まあこれを見ての通りだよ。」
そう言うと、常磐さんはピコピコと警報のように光っている緑色のフィロソファストーン(PS)を再び手に取った。
「そういえば……そのプレシャスストーン(PS)どうして光ってるの?」
プルが不思議そうな顔をして常磐さんに聞いた。
「いや……フィロソファストーン(PS)……な……」
その時、メグが弱々しくプルにツッコミを入れた。
「うわっ!」
メグがまた突然しゃべりだしたのでプル達はびっくりした。
「やあご主人様。少し回復したみたいでよかった。……いやあ、実は僕もご主人様も、少し調子に乗りすぎちゃって、この世界の成り立ちや人類や惑星の行く末やら、なんやらかんやら深く聞きすぎてしまったみたいでね……それで……僕は人類、もしくは6色の魔法少女として、本来は絶対に知っちゃいけないことを、過剰に知りすぎてしまったようなんだ。それで、どうも僕にペナルティが掛けられてしまったようなんだ。」
「えっ? なんなの、そのペナルティって?」
ルーシーが常磐さんに質問した。
「いやいや、それが困ったことになってしまってね。どうもそのペナルティっていうのが、僕の場合だと、緑色の魔法少女グリーンパピーへの変身が無期限停止になってしまったそうなんだ。」
常磐さんは、本当に困っているのか困ってないのかわからないような顔で答えた。
「ちょちょちょちょっとメグ、ちょっとあんた一体何やってんだよ!」
ひばりは烈火のごとくメグに猛抗議を始めた。
「いや……つい……」
「ついってなんだよ!」
「つい……私の話を理解できる人間に会えたのがうれしくて……それで、つい……
調子に乗ってしゃべりすぎちゃって……」
メグは、申し訳なさそうにひばりに弁解した。
「でも……無期限っていっても、実際はどれくらいなの?」
「おーよ。無期限ってすげー厳しそうに聞こえるよな。」
「そうだね。でも、高校とか大学の運動部とかで、不祥事を起こして無期限に活動停止にしますって大々的に発表しといて、1,2ヶ月したら、普通に活動再開してるってパターンもよくあるしね。」
プル達は無期限について話し合った。
「その期限は、その受けたペナルティの程度いかんによる。だが、私は彼女に対し、どれだけ話してはいけないことを話してしまったのかよく覚えてないので、実際に彼女がどれくらいの期間のペナルティを受けることになるのかわからない。場合によっては……1年まるまるになってしまうかもしれない……」
メグは苦しそうに答えた。
「おい、本当に何やってんだよあんた!」
ひばりはメグに怒鳴った。
「いや……申し訳ない……つい……」
メグは創造主ながらにも、ひばりに謝るしかなかった。
「いや、支子君には大変申し訳ないんだけど、そういうわけで僕もペナルティが掛かってこの通り……というわけなんだけど……どこからどこまで知ってしまうとペナルティに該当してしまうのか、ご主人様でも判断がつかないということらしいから、実は僕もあまり話すことができないんだ。僕は6色の魔法少女だというので、魔法少女への変身の無期限停止という処分だけで済んでいるそうだけど……もしも人間にペナルティが掛かった場合、下手するとこの世界から存在そのものが消滅してしまうってことも十分にあるみたいだから……君達は色々聞いてみたいかもしれないけど……僕の方は決してオススメはしないよ。」
常磐さんは平然と怖いことを言った。
「え……えーっと……」
「お、おーよ……」
「で、でも……一応私達信じないっていうし、別に聞いてみるだけだったら特に問題ないんじゃ……」
プル達は、変わらず常磐さんの話を信じられなかったが、それでも少しビビってしまった。
「君達が信じないって? ……ふふふっ。君達の中でも、特に松山君はなかなか洞察力が高い人みだいだね。まあ基本的には、実際にその通りなんだけど……実は、ペナルティには二種類あるそうで……一つは、絶対に知ってはいけないことを知ってしまうこと。これはその人が信じようが信じまいが関係なくて、知ってしまった時点でペナルティが掛かってしまうらしい。もう一つは、先ほど僕が言ったこととは逆のこと……つまり、ポメラニアンの犬であるはずのメグが我々の創造主であるなどありえない……5色の魔法少女はアニメの中だけの話である……そういったことについて、少しでも核心的な疑問をもってしまうとペナルティが掛かってしまう恐れがあるそうなんだ。そういう意味で、支子君や薄珊瑚君に、現状なんのペナルティも掛かっていないのは、ある種奇跡だと思うよ。それで……最初はご主人様自ら、君達に説明してもらおうかと思っていたんだけど……でも、ご主人様直々に説明してもらうと……まあ、あの……うん……えっと……まあそういう訳で、僕が君達に説明することにしたんだ。」
「そうだったんだ。」
プル達はその時、なぜかわからないが、常磐さんが命の恩人のように見えた。
「まあ、そういう訳で命の恩人からのお願いって訳じゃないんだけど……君達に少しお願いがあるんだ。」
「えっ? 何そのお願いって?」
プルが常盤さんに聞き返した。
「お願いって……まあご主人様っていうか、メグのことなんだけど……。メグがしゃべれるってことは、当面僕達だけの秘密ってことにしてほしいんだ。」
「えっ? でも……」
「おーよ。秘密って言われてもな……」
「それに、私達の中でだったら守れるかもしれないけど、でもメグは……」
プル達は、困ったように一斉にメグの方を見た。
「いやいや、確かに君達がいくら秘密にしてくれたからといって、ご主人様が自滅して、各所でしゃべってしまう恐れがある……というか、もうそれは確実だろう。だから、ご主人様には申し訳ないけど、ご主人様はしばらくの間は支子君の家から外出禁止ってことにしてもらおう。まあご主人様には異存はないものとして……支子君の方はそれで問題ないだろうか?」
「うん、まあ別に私はそれでいいけど……でも、いつまで外出禁止にしたらいいの?」
「ありがとう。うん、実はその件について、先ほどまでご主人様と話していたところでね。」
「えっ? 話ってなんの話?」
ひばりは不思議そうな顔をして常盤さんに確認した。
「うん、それが先ほど話していたもう一人のご主人様のことなんだけど……この方が人類の記憶を改変することができるので、ご主人様がこの方の元に直接伺って、メグというポメラニアンの犬が人間の言葉がしゃべれるっていうことを限定的に世界の理の中につけ加えてもらおうと……つまり、そういうことなんだ。」
「もう一人のご主人様って……」
「なんだよ、そのもう一人って……猫とかになんのかよ。」
「でも……猫にお願いって……もしかして、その猫もしゃべるの?」
プル達は、信じないまでも、一応話にはつき合うことにした。
「いや、あやつは人間だ。」
その時、メグが常盤さん達の会話に加わった。
「えっ? 猫じゃないんだ。」
ひばりが意外そうな顔をしてメグの方を見た。
「うむ。名をサンクンという。」




