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神器の巫女  作者: あぼのん
第四章 道に外れし世迷人
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第7話 なんの坂殿っ!!貴殿に一番槍をくれてやるほどこの橋場筑前守!まだまだ衰えてはおりませぬぞっ!あいやあああああああああっ!!!

前回までのあらすじ


海水浴にやって来た健登達御一行、女子達の水着姿を拝むことができ夏休みを満喫する男子達であった。

遊んでいるとクローディアがナンパされるのだが何も言えない坂や橋場達、そこへ健登達が駆け付けてきてなにやら一騒動おこりそうなところで弥命がある提案をするのであった。

 どうしてこうなったのか……

 ビーチバレー用のネットが張ってある砂浜で睨み合うのは、ナンパ1号・2号ペアと弥命・クローディアペア、あのままだと暴力沙汰になりかねなかったのでここは健全にスポーツで白黒つけましょうと弥命が提案、海水浴場らしくビーチバレーで勝負をしようと言いだしたのだ。

 そんなふざけた提案になぜナンパ男達が乗ったのかと言うと、当然そのビーチバレーが得意だったからである。


 くっくっく、俺らがここらじゃちょっとした有名なビーチボーイズだってことを知らなかったのが運の尽きだぜ、それにしてもあの水色の水着の子まじでおっぱいでけえな


 ナンパ1号は緩む顔を引き締める。


 ちょっと生意気だけどあの強気な性格がそそるぜ、おっぱいは小さいけどああいう女をヒイヒイ言わせるのがまた興奮するんだよな


 ナンパ2号はなかなかの嗜好をお持ちのようである。



「じゃあはじめるぞー」


 醒めた声で言うのは審判を務める健登。


「ねえ守羽君?本当に大丈夫なの?誰か呼んできたほうがいいんじゃないの?」


 心配そうに言う萌夏に、「大丈夫大丈夫」と言いながら健登は思う。


 心配なのはあの男どもの方だ……



 まずはナンパチームのサービスからゲームスタート。

 ナンパ1号は宙にボールを上げると勢いよく跳躍、振り抜いた手に弾き出されたバレーボールはまるで弾丸のように飛び、高く角度のついた弾道はラインスレスレに弥命クローディアペアサイドの砂浜を抉った。


「どうしたお嬢さん?自分から言いだしといてその程度か!?」


 こりゃダメだ、こいつらたぶんここを根城にしているナンパ集団だ、こういうことには慣れているんだ、俺達みたいな童貞ボーイズとはまるで違う生き物なんだ。


 橋場達は悲鳴をあげるのだが、弥命とクローディアは随分と落ち着いた様子である。


「ミコット、どうだ?」

「全然大したことありませんね、ちょっと様子を見ようと思いましたけど、時間の無駄です。あっさり終わらせましょうクローディアさん」

「同感だっ!」


 そこからは一方的、ワンサイドゲーム、ナンパ男達はわけがわからなかった。


 なんなんだあの運動神経は?て言うかあれ何メートルジャンプしてんだよ?なんだよこのアタック、ボールがまるで岩の様に堅く感じる、重い、腕が折れそうだ……もう無理もうやだなにこのJK達……こわい


 弥命とクローディアの人間離れした動きを見て、10分もしない内に1号2号ペアは戦意喪失、気が付けば得点は最初の一点のみ、呆然自失のままコートを去って行くのであった。


「ちっ、情けねーなおめえら」

「あぁっ?じゃあおめえがやってみろよ」


 なんだか内輪揉めを起こしそうな感じになっているぞ、そんなナンパ男達を尻目にまずは一勝を収めた2年A組チームは盛り上がる。


「みこちゃんすごーいっ!やっぱりすっごい運動神経いいよね!それにクローディアもかっこよかったよ」


 萌夏が目をキラキラと輝かせながら二人に抱き付いて褒め称える、なにやら頬を紅く染めているけれどもそっちの気があるのだろうかこの子は?

 さて次はペアを変えての第2戦だ、ナンパ3号・4号ペアに対するは坂・橋場ペアだ。


「坂……」

「なんだ橋場?」

「おまえ……バレーボールは得意か?」

「愚問だな……DOAのエクストリームシリーズなら全部持っている」

「ふっ……頼もしい限りだな」


 瞬殺であった。


 坂はバレーボールのルールを知らないのであろうか?

 相手のスパイクを全て顔面で受け止めた結果、鼻血を出しながらコートサイドで倒れ込んでいるのだが皆無視している、まあわざとではないんだろうけどさ……

 そして橋場はと言うと、その長身をまったく活かす気もなく、コートの後方でずっと「ばっちこーい」と叫んでいるだけでなにもしなかったので無事生還できたようだが、女子達の冷たい視線を浴びて泣いていた。


「ちっ、グズどもが、ほんと役に立たないわね」


 芳乃の辛辣な言葉に男子達は、傷ついたぞ!と抗議の視線を送るも逆に睨み返されて縮こまってしまった。

 まったくもって情けないことこの上ない、その様子を見ていたナンパ3号4号ペアが笑いながら言う。


「はっはっは、ダセぇ男どもだな、もうそんな奴らとつるんでないで俺らと行こうよ?」


 それにしてもこんなにも嫌われているのに尚も誘ってくるとはどういう神経をしているのだろうか?ここからこの最悪な印象を逆転できるなんてマジで思っているのだろうか?と不思議に思ってしまう。


「はあ?まだ最後の勝負が残ってるでしょっ!次はわたしがやるわ、ペアはあんたが組みなさい健登っ!!」

「えぇー……俺バレーボールなんて上手くねえぞぉ」


 なんだかすごくめんどくさそうな顔をして渋る健登。


「なによあんたっ!じゃあ負けてわたしや弥命があんな奴らにいいようにされてもいいって言うのっ!?」

「いやまあそうは言ってもよ、たぶんあんな奴らじゃ姫宮をどうこうすることはできないと思うぞ?」


 そう言うと背中をギュッと抓られる。


「どういう意味ですか守羽くん?」


 弥命がなんだか恨めし気な目で睨みながら背中の肉を捩じりあげていた。


「いててててっ!やめろ姫宮っ!悪かった!!いてえっ!」


 自分達の事は無視してイチャつく健登達の姿にナンパ男達のイライラは頂点に達する。


「おいっ!早く次のペア決めろよっ!!」


 その怒鳴り声に、芳乃がやれやれと前に出ようとすると後ろから声がする。


「なにやらおもしろいことをしているな?」


 皆が振り返るとそこには、焼きそばの上にたこ焼きを乗せたご馳走を手にした悠紗が立っていた。

 ファルコンに買ってもらったと、ニコニコしながら悠紗はそれをペロリと平らげると、口の周りに青のりを付けたまま芳乃の横に並び言う。


「芳乃、いよいよ日々の特訓の成果を見せる時が来たようだな」

「そうね悠紗、あの地獄の日々……思い返すだけでも涙がでてくるわ」


 言いながら二人コートに立つ、ナンパ3号・4号対芳乃・悠紗ペア。

 しかしながら弥命クローディアペアのように上手く行くのであろうか?坂や橋場のみならず健登も少しばかり心配になってしまう。


「おい芳乃、本当に大丈夫なのかよ?」

「いいから見てなさいっ!」


 ナンパ男達からすれば相手は何を血迷ったのか小学生をペアに選択、余裕の表情でこいつらもう諦めたんだなと思う。

 しかし子供が相手でも容赦はしない、きっちりと自分達を舐めてくれた落とし前をつけさせてから色々とお楽しみタイムだ。

 なんて思いながら力強いサーブを打ち込むのだが、芳乃がそれを素晴らしい反射神経でレシーブするとボールは高く跳ね上がる、そして悠紗が空高く跳躍、伸身後方三回転捻りを加えながら強力なスパイクをお見舞いすると雷光一閃、ボールはまるで稲妻のような軌跡を描き3号の顔面に直撃した。

そのまま後方へときりもみしながら吹き飛ばされ5メートルほど地面を転がるとピクピクと痙攣しながら3号は息絶えた……死んでないけどね。


「はーはっはっはーっ!どうだっ!妾の真空稲妻落としドライブアタックの味は?」


 大笑いしながらふんぞり返る悠紗。


 えげつねぇ……マジでえげつねぇ攻撃だ……


 健登がゾっとしながら芳乃の方を見やると、なにやら青褪めた表情でカタカタと震えながら言う。


「わたし達はあれを……あれを毎日昼休みに受けていたのよ……今さらあんな男達のヘナヘナボールなんて屁でもないわ……ハハハ」


 ちらっと横を見ると良子はなにかに怯える様に震えながらうずくまっている、相当なトラウマになっているのであろうことは容易に想像できた。


 さて、3号が意識を取り戻さないのでこのままナンパチームの不戦敗ということにしようとしたのだが、まあそんなんで納得してくれるわけがないよね。

 男達はもうナンパなんてどうでもいい様子、とんだ恥をかかせてくれたガキどもを痛い目に合わせてやろうとにじり寄ってくる。


「どけっ!ちんちくりん!!」


 男の一人がオロオロして動けないでいる萌夏を突き飛ばした。


「もえちゃんっ!」


 短い悲鳴を上げて尻もちをつく萌夏に駆け寄ると男達を睨み付ける弥命、そして身構える悠紗とクローディア、はっきり言ってこの三人を相手にそんじょそこらの男どもが喧嘩を挑んだところで返り討ちに合うのは目に見えている、いるのだが……


「待つでござるっ!」


 そう叫んだのは坂であった。


 坂を筆頭に、橋場、中村、林、坂田の五人が男達の前に立ちはだかる、そして坂は覚悟を決めた表情で静かに話し始めた。


「拙者達は……確かに拙者達は情けない男であるかもしれない、喧嘩も弱い、て言うかしたこともない、同行している婦女子が目の前でナンパされているのにもかかわらず、それをただ指を咥えて眺めているだけの小心者の集まりでござる……」


 なんで突然そんな武士言葉になってるんだよ?と誰もが心の中で突っ込みを入れるがお構いなしに続ける坂。


「しかあああああああしっ!!我々の姫に対して乱暴狼藉を働いたならず者達を前に、拙者達の堪忍袋の緒も切れたでござるっ!見ていてくだされ姫っ!!ここで拙者の命に代えてもあやつらの首を獲って御覧に入れまするぞっ!きえええええええええっ!!!」


 叫ぶとバタバタと腕を振り回しながら走り出す坂、それに続けとばかりに橋場も叫ぶ。


「なんの坂殿っ!!貴殿に一番槍をくれてやるほどこの橋場筑前守!まだまだ衰えてはおりませぬぞっ!あいやあああああああああっ!!!」


 おまえはいつからそんな太閤殿下みたいな名前になったんだよ


 遂に2年A組の問題児達が決起する、ここでなにもしなければ漢ではない!侍ではないっ!!防人ではなああああああい!!と叫びながらナンパ男達に襲い掛かる。

 変なテンションで突っ込む五人だがはっきり言ってボコボコである、喧嘩なんてしたこともない、不良に絡まれたら自発的にぴょんぴょん跳ねちゃうようなへたれであるけれど、どんなに殴られようとも男には退けない時というものがあるのだ。

それが今だ、今ここで曲げてしまっては逃げてしまっては一生後悔するに違いない、坂達は必死にナンパ男達にしがみ付く、絶対に女子達には指一本でも触れさせるものかともみくちゃになる。

 見ていられずクローディアが加勢しようとするのだがそれを健登が止めた。


「タケト!早く止めなければバン達が、あんな男どもワタシ達なら簡単に蹴散らせる」

「わかってるよクローディア」

「だったらなぜっ!」

「それはわかってるけど、あのままやらせてやってくれ」


 健登は遠い目をしながらクローディアに言う。


「喧嘩なんかしたこともないあいつらが、不良に絡まれただけでビビっちまうようなあいつらが、あんなに必死でおまえらのことを守ろうとしてるんだぜ?ここで逃げたら男がすたるって痛いのも我慢して戦ってるんだ、ちょっとくらいかっこうつけさせてやってくれよ」

「タケト……」


 馬鹿野郎ぉぉぉぉおおおっ、早く助けろよ守羽ええええええええっ!!本当はもう痛いからやめたいんだよぉぉぉぉおおおおっ!!


 なぜかこんな時だけ余計な気を使う健登であった。


 しばらくの間粘っていた坂達であったが遂に力尽きる、こいつらにしてはよくやった方ではあるがここらが限界であった。

 砂浜に倒れ込み自分達の不甲斐なさに歯噛みする、砂を握りしめて悔し涙を流す。

 こんなに悔しいのは初めてだった。いつもならしょうがないと諦めるであろう事でも今回だけは事情が違う、自分達のクラスメイトを女の子達を守れないなんて、なんて自分達は情けないんだと、そんな思いに胸を締め付けられる。

 そして地面に膝を突き手を突き再び立ち上がらんとしたその時、ナンパ男達の前に立ちはだかる巨大な影、あれは……


 腕組みをしたファルコンが怒りを露わにし仁王立ちしていた。


「おめえらぁ、うちのお嬢とそのご友人達に手ぇ出そうたぁいい度胸じゃのぉ?おぉん?スッゾコラアアアアアアアアアアアっ!!」


 ファルコンの怒声が響く、いつもの甲高い声とは違い凄味の聞いた低い声だ、その風体と気迫にナンパ男達は震えあがる。


 スキンヘッドにグラサン、黒々とした口髭を蓄えたガタイのいいおっさん。どうみてもあっちの筋のお方にしか見えない、お嬢ってどの娘だろう、あの巨乳の娘だろうか?そう言えばあの娘だけなんか他の娘とは違った貫禄があるな、ご友人ってことは金髪の娘は外国のマフィアの娘なのだろうか?どおりで肝が据わっているわけだ、やばい奴らに手を出してしまった。

 ナンパ男達は青褪め「すんませええええええええん」と叫びながら脱兎のごとく逃げ出すのであった。


「でかしたぞファルコン、ザッケンナコラーっ!はっはっはー」


 悠紗がわけのわからないことを叫び、笑いながらファルコンの背中をよじ登り肩車の状態になると、つるつるのスキンヘッドをペチペチと叩いている。

 その様子をポカーンと眺める男子達、自分達の苦労は一体なんだったのであろうか……

 がっくりと肩を落とし体育座りになりいじけていると、そこに萌夏が駆け寄ってきて言う。


「ありがとう、みんなが怒ってくれてわたし嬉しかった。かっこよかったよ」


 その様子を見ていた芳乃が付け加える


「まあ、あんた達にしてはよくやったほうね見直したわ」


 弥命やクローディア、良子も笑顔で男子達の苦労を労った。

 喧嘩に負けはしたけれどもその身を挺し女の子を守ろうとしたのだ、どんなに痛めつけられ殴られようとも退きはしなかったその勇気と根性は称えられるものであろう。


『痛かったけどがんばってよかったああああああっ!』


 男子達は感涙しながらガッツポーズをするのであった。


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