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神器の巫女  作者: あぼのん
第四章 道に外れし世迷人
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第6話 金髪であれば皆フランス人に見えるのか?まったくもって貧相な発想力だな

前回までのあらすじ


人斬り外道、不和十郎太は自らの欲望を満たすべく、殺しても表沙汰にならないような獲物を求め裏の世界の住人から暗殺依頼を受けていた。今回は東京に現れた、顔なし(フェイスレス)と呼ばれる化け物を斬るべく追っていたのだが命を絶つ前に逃げられてしまう。

一方その頃、不和を追う佐ノ介は時を同じくして東京に現れた人の顔を奪う化け物に、ただならぬ因縁を感じ一番最初の顔なし遺体の見つかった港へ再び赴くのであったが、そこで不和の残して行った瘴気の気配を見つけるのであった。

「夏だっ!海だっ!!水着だあああああっ!!!」


 絶対にやると思った。


 両腕を高く掲げて悠紗がそう叫ぶと、皆が心の中で突っ込みを入れる。


 本日は快晴、絶好の海水浴日和、早朝から駅前に集合し男女12名からなる団体様を送迎する為に、なんとマイクロバスまで出してくれたのは、例のアキバのフィギュア屋の店員、ファルコン(もうこのあだなで定着したらしい)であった。

 なんでも悠紗がかなり贔屓にしてくれるお客様らしく、尚且つやたらと意気投合したみたいで「12名で海に行くから車を出せ」と悠紗に言われたところ二つ返事で承諾、保護者兼足係として同行しているのだ。


「それにしても、よくもまあこんなに集まったものね」


 呆れた調子で芳乃が呟く。


 男子は健登、坂、橋場、中村、林、坂田の六名。

 女子は弥命、芳乃、悠紗、クローディアに加えて、芳乃とよく教室で話している工藤良子(くどうよしこ)に、弥命と仲の良い朝倉萌夏(あさくらもえか)の六名。


「それもこれもみんな俺の人徳によるものだなっ!はっはっはー」


 芳乃の言葉に健登がふんぞり返りながら笑うのだが、はいはいと適当に流しながら浜辺に降りて行くのであった。

 適当な場所にレジャーシートを敷きパラソルを広げると、「荷物番は自分がするので皆は遊んで来なさい」とファルコンが言ってくれたので、駆け出す男子共を見ながら悠紗が言う。


「やれやれ、あんなにはしゃぎおって、まったく皆子供であるな」


 車中で芳乃に結ってもらったツーサイドアップの頭にシュノーケルゴーグルを、そして浮き輪と足ヒレを装着しているおまえが一番はしゃいでるじゃねえか、という突っ込みはさておき、ここで女子達の本日の装いについて触れておかなければこの回の意味がないじゃないかと怒られそうなので……誰に? さあっ!妄想しろっ!!


 まずは弥命、フリルの付いたワンピースの水着は、水色を基調とした弥命らしい清涼感のあるものでとても似合っている、やはり露出を控えめにしたかったのであろうが弥命の隠しきれないわがままバストは隠そうとすればするほどにその存在を強調し、胸元のフリルの下から覗く下地がかえって艶めかしく見えるのであった。


 次に芳乃、彼女もまたフリルの付いたかわいらしい水着を選択したらしいのだが、弥命よりもちょっと大胆にビキニタイプのものを着用していた。

 白を基調とした花柄模様、フレアトップが慎ましやかな芳乃の胸を少し強調させるデザイン、それよりも目を引くのがキュっと締まったお腹とおへそ、そしてしなやかに伸びた健康的な美脚である、凹凸の少ないのがかえってその美しいボディラインを際立たせていると言えよう。


 そして悠紗、青い女児用のフリルスカート付のワンピースです。


 非常にかわいらしい今時の女の子な感じの水着を選んできた女子達であったが、ここでとんでもない変化球を投じてきたのがクローディアである。

 なぜだか機能性がいいとハーフスパッツタイプの競泳水着を選んだのだが、その上に薄い紺色のラッシュガードを着ているのがマニア心をくすぐる、海に入りそれが濡れると身体にピッチリと貼り付き、クローディアの鍛え上げられた美しいボディラインが露わになる、見えているのに見えないその姿が余計に妄想を掻きたて、なんとも官能的な姿になっていることに本人は気付いていない、金髪碧眼の美少女がそんな姿態をさらけ出しているのだ、ビーチの視線を釘づけにするのも当然である。


『あああああ~、生きててよかったよぉぉぉっ~~』


 涙を流しながら男子達は万歳三唱するのであった。

 それにしても美少女達がこうも寄り集まっていると当然周りの男達も放っておかない、浅瀬でビーチボールで遊んでいると、日に焼けた色黒で金髪の男が近寄ってきてクローディアに声をかける。

 それにしても坂や橋場達男子も周りにいるのにお構いなしと言う様子だ。


「ねえきみ?どこから来たの?フランス?俺達ボート持ってるんだけどよかったら一緒に遊ばない?」


 そう言いながら親指で自分の背後を指差すナンパ男、他に数名の仲間達がいるようだ。


 やれやれ、ここ日本に来てからと言うもの街を歩いていても何度かこういう風に声をかけられたことがあるが、どうして日本人の男は皆外人に声をかけるときはフランス人か?と聞くのだろう?そんなにパリジェンヌが好きなのか?


 辟易としながらもクローディアはその男に笑顔で返す。


「Ich bin ein Deutscher」

「は?」


 ドイツ語で返事をされたので男はなんと言われたのかわからない、間抜け面でぽかーんとしている。

 クローディアは意にも介さず冷たい視線で男に言い放つ。


「金髪であれば皆フランス人に見えるのか?まったくもって貧相な発想力だな、ワタシはドイツ人だと言ったのだ」

「あードイツから来たんだー日本語上手だねー、俺サッカーとか好きだからぁ、マジいいよねードイツー」


 サッカー「とか」ってなんだ「とか」って、だいたいサッカーが好きなのとドイツがいいことの関連性がよくわからない、一緒に居る良子と萌夏はちょっと怖そうな感じのナンパ男に声をかけられて少し怯えている様にも見える。

 それにしても情けないのは男子達だ、女の子達がよその男にナンパされているのに何もせずにそれをただ黙って見ているだけ、本当にどうしようもない童貞男子達だったのだが、流石にここでなにもしないのは男がすたる、男を見せるならここしかない、上手くナンパ男を追い払うことができればこの三人の中の誰かが惚れてくれるかもしれないと、意を決して前に出たのは橋場であった。


「あ、あのー…すいません、お兄さん達、僕達のクラスメイトになにかご用ですかぁ?」


 弱いっ!弱々しすぎるっ!身長180センチ近くある長身の橋場がへこへこと背を丸めながら、まるで媚びへつらうかのようにナンパ男に言っている。


「ああ君この子のクラスメイトなんだ?もしかしてJK?それにしては大人びて見えるね、JDかと思ったよ」


 橋場のことは適当にあしらうと笑顔でそう言いながらクローディアの肩に手を廻そうとするナンパ男、しかしクローディアはその手をするりと躱すとナンパ男に冷たく告げる。


「残念だったな、おまえらと遊ぶ気は一切ない、ワタシはクラスメイト達と遊ぶ為にこの場に来たのだ、とっとと立ち去れ」


 その言葉にちょっとムっとした顔になるも、男は尚も食い下がりクローディアの手首を掴むと強めの口調で言う。


「そう言うなよ、なんだったらそこのガキ達も一緒に来てもいいぜ?」

「気安く触るなこの無礼者っ!」


 そう言うとクローディアは男の手を捻り、隅落のような投げ技を決める。

 男はまるで後方宙返りをするかのように空を舞うと、海面に勢いよく音を立てて落ちた。

 その様子を見ていたナンパ男の仲間達が駆け寄ってきて投げ飛ばされた男を助け上げるのだが、なにやら怪しい雲行きになってきた。


「おいおい、ちょっと遊ばないって言っただけなのに暴力かよ?」

「先に手を出してきたのはその男だろう」

「軽く手を繋いだだけじゃん」


 数名の男に詰め寄られるが退こうとはしないクローディア、良子に萌夏それに男子達もハラハラしてしまうのだが、そこへ騒ぎに気が付いた健登が駆けつける、さらにその後ろの弥命に芳乃を見るとナンパ男達はニヤニヤしながら言う。


「へぇ、まだかわいい子がいんじゃん、暴力振るったお詫びにさ、今日一日でいいから俺達に付き合いなよ、な?それでチャラにしてやるって言ってんだからさぁ」


 どう考えたってそんなもんについて行ったらただで済むわけがない、だいたい遊ぶってなにして遊ぶんだよ、仲良く鬼ごっこでもするのか?


 それにイラっとしながら答えたのは芳乃であった。


「はあ?冗談!あんたらみたいな下心丸出しのスケベ野郎共についていく頭空っぽの女の子がこの世に存在するわけないでしょ」


 完全に喧嘩を売っている芳乃の言葉に男子達は戦慄する、ただでなくてもクローディアが相手の一人を投げ飛ばして怒りを買っているのに、さらにそんな挑発するようなことを言ったらどんな目に合うかわからない。

 戦々恐々としているとさらに健登が続く。


「いい加減にしろよあんたら、女の子が御免こうむるって言ってんだ、いつまでもみっともないぜ?」


 マジかよこの馬鹿っ!守羽てめえっ!!なんでそんな火に油を注ぐようなことを言うんだ、て言うかこの幼馴染コンビマジやべえ。


 火を点けたのが芳乃ならそこにドバドバと油をかけているのは健登、このファイヤーチャイルドフードフレンド略してFCF2達怖い、て言うか葭埜さんてなんか守羽の男版みたいだな、と思う坂達であった。


 ナンパ男達は明らかに苛々している様子、このままだと殴り合いの喧嘩になりそうな空気が流れだすのだが、睨み合う健登クローディア芳乃とナンパ男達の間にテクテクと歩いてきた弥命が胸の前で、ぽんっ!と手を合わせると笑顔で言った。


「だったらこうしましょうっ!」


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