プロローグ
※注意※
今回の話は鬱展開を予定しています。プロット段階ではけっこう胸糞な話です。
残虐表現は控えめなつもりですが苦手な方はお気を付けください
それらを踏まえたうえでお読み頂けたら幸いです。
男にとってはそれは極々当たり前のことであった。
呼吸をするように人を斬り、瞬きをするように人を殺す。
否、それは人に限らない、この世に存在する生きとし生けるもの全てが男にとっては斬る為の対象にすぎず殺す為の存在にすぎない
考えることは常にどの様に斬るか、どの様に殺すかである
相手が抵抗すれば抵抗するほどに男の欲望は満たされる、相手の腕が立つ必要はない、ただ生命力が強ければいい
生きる為にもがき、どんなに無様であろうと死にたくない一心であがき続ける、そんな命を斬り落とすことこそがなによりの愉悦であった。
人斬り外道
そう呼ばれるようになって幾百年、不和十郎太、人として生まれながらはぐれ外道に身を落とし、いずれ人ではなくなった。
その手にするは無名の太刀、幾百幾千の人を斬り、幾万幾億の命を絶ってきた。
人を獣を物の怪をそして神でさえも斬り伏せて、いつしか妖刀と化したその太刀は人の理からも踏み外した怪道と共に、跳梁跋扈する闇を闊歩するようになった。
その身には血生臭い瘴気を纏い、生命力の弱い者であればその邪気にたちまち飲み込まれてしまうであろう
怪道が生きるは外道の世のみ……
不和は目の前で芋虫のように地面を這う男を見下ろし口元に笑みを浮かべた。
「た…助けてえええ、お願いだ、殺さないでくれえええ」
命乞いをしているのは麻薬密輸、銃器密売、人身売買、臓器売買、なんでもござれの悪党である
今日も商談、健康な女と子供を売る為にやってきたこの場所で、クライアントを待っている時に突如現れた不和に斬られたのだ
右手右足を斬り落とされ大量の出血をしながらも、その痛みに耐え意識を保ち目の前の人斬りに懇願する
実にいい、実に斬り甲斐のある命だ
「だ、誰だ?誰に雇われた?幾らで雇われたんだ?その倍、いや、三倍出すっ!!だからっ!!ぎゃあああああああっ!!!」
男の目に突き立てられる太刀、それは眼球だけを切り裂くように優しく、それ以上深く押し込んでは死んでしまう、まだこの肉体は壊れていないまだ動くまだ悲鳴をあげる、まだ生きようとしているのだ、簡単に壊してはいけないそんなもったいないことをしてはいけない
「そうだな…あと三倍生き長らえて見せろ」
不和はそう言うと男の耳を削ぎ落し、鼻を削ぎ落し、少しずつ少しずつ残っている肉を削ぎ落していく
腹を裂き臓物が飛び出してくる頃には悲鳴すらあげなくなった。
気が付けば虫の息、右胸に太刀を突き立てるが何も反応はない、ゴボゴボと音を立てて口から血の泡を吹き始める、これはもう生きているとは言えないだろう
今日は存外長持ちしたほうだなと、不和は男の喉に太刀を突き立てると横に刃を引き首を捥いだ
その頭を掴むと一部始終を見ていた、人買いに売られるはずだった女と子供の足元に投げつける
悲鳴をあげ泣き叫ぶ被害者達、目の前にいるのは自分達を助けに来てくれたヒーローなんかじゃない
悪魔だ、悪魔が戯れに悪党を嬲り殺して、その様を自分達に見せつけて喜んでいるのだ
自分達が恐怖に染まるのを、狂気に染まっていくのを楽しむかのように…
………………
その場を後にしようとすると黒いスーツに身を包んだ初老の男が不意に背後に現れる、不和は振り返らずにその男に告げた。
「目撃者も消しておいた、それで問題なかったな」
「はい、不和さん、それにしてもあなたのやり方は毎回良い趣味をしていらっしゃる、その男はちょっと悪目立ちが過ぎました。あまり派手にやられると我々も商売をやりづらくなりますので」
ニコニコとまるでお面のような笑顔を顔に貼り付けながら、上司に胡麻をするかのように手を揉む男
「興味ないな」
斬る対象の斬られる理由そんなものはどうでもいい、男の話は聞く気もないのか不和はそう言うと振り返りもせずに去って行くのであった。
残された初老の男は辺り一面に広がる血の海を眺めながら大きく溜息を吐き呟く
「掃除が大変ですねぇ」
七月の末、夏の暑さが厳しさを増す時期、人知れず繰り広げられた惨劇は誰にも知られることなく闇の中へと葬られるのであった…




